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そんな私はヴァンパイア  作者: 松栄
第11章 番外編 緑の星テラの奇蹟
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テラの奇蹟-35 兵どもが夢のあと

 一難去ってまた一難だ。

 タカヒロ達が言っていた、この世の全てを破壊する、存在してはいけない存在。

 あのアネティモラが欲していた破壊の力、それを阻止する為にここまで奮闘してきたはずなのに。

 ハジュン、それがこの少女だというのだろうか……

 確かに、だ。

 この少女から放たれる圧や気、恐怖感や絶望感はそれだけで身を固着させてしまうほどだ。

 アネティモラが可愛く見える、いや、そんな比較すら出来ないくらいだ。

 実際、俺もココロも、タカヒロ達も動けず固まってしまっている。


 「解放……されちまったって事か……」

 「タカヒロ、こいつは……」

 「や、やべぇ、アタイがすくむなんてよ……」


 と、そんな中であっても、ディーナ達4人だけは何故か違っている。

 なんと言うか、目をキラキラと輝かせて波旬と名乗る少女を見ている……


 「カ…カワイイ!」

 「なにこの可愛さ?」

 「すげーな、カワイイのに強そうだぜ?」

 「もしかしてオレ達より全然強いのかな?」


 緊張感の欠片もない。

 何だろう、恐怖感がマヒしてしまったのだろうか?


 「お前達面白い存在だな。まぁいい。お前達には感謝すべきだな。」


 絶望的なまでの存在感を放ちながら、その少女は言う。


 「私は解放された。これで元の世界へと帰る事ができる。サンキュな。」

 「あ、いや、それって……」

 「お前は…この世界を破壊するのが目的、なんじゃなかったのかよ?」

 

 「ん?何でそんな事をする必要があるんだ?」

 「「「「 は!? 」」」」

 「私は確かに、人間からすれば悪の権化だのなんだの言われている様だが、別に私は望んで悪戯をしていた訳じゃないぞ?」

 「……波旬とは、あの悟りを開いた者の邪魔をしていたと言うが、それがイタズラじゃと?」

 「ってかだ。お前はいわゆる悪魔って存在だな。私と同じく悪戯が好きなんだろう?」

 「「「「 …… 」」」」


 全員がルシファーを見る。

 ウリエルとアズライールは何故か納得した顔をしているな……


 その少女は語る。


 自身は自らの意思でこの世界に顕現したわけでは無かったらしい。

 数千年前の事だそうだ。

 自身が何者なのかは理解していたが、それがこの世界にとってどのような影響を及ぼすのかまでは解らなかったそうだ。

 興味はそのまま自分の意のままに遊びの対象となったらしく、人間からすればあらゆる悪の権化とも取れる結果を招いたのも事実だと。


 あらゆる価値観や観点、思想が違うと理解したのは、何者かによって封印された後だと知った、と。

 もっとも、それでも自身が行ってきた事を後悔する訳でもなく、善し悪しの判断すらする事はなかったらしい。

 そここそが、この少女の特性、いわゆる人々が恐れる存在である理由なのだろう。

 もっとも、それを知る人間などそうそういる訳もないのだろうが。

 ただ、だ。

 この世界を俯瞰できる者、つまりココロやアネティモラのような存在、ルナやウリエル、ルシファーやアズライールといった存在からすれば、それはまた違った存在として認識されているのだとか。


 「結局は、私はなぜ此処に居て、何をすべきかは全く理解できていない。」

 「それって……」

 「で、此度なにやらこの世界を揺るがす出来事が、私を封印から解き放った。その時、私は帰るべき場所を理解したんだよ。」

 「か…帰るべき場所、だと?」

 「お前達が考えているのは、私がこの世界にちょっかいを出すのではないか、と言う事だろう?」

 「あ、ああ……」

 「今の私にはそんなものに興味も無ければ暇もない。早急に帰らねばならないのでな。」


 その少女が帰るべき場所、それはこの世界とは全くの別世界、時空の果てにあると言う。

 とはいえ、と言葉を続ける。


 「それが可能になるまでにはこの世界でいう数年という時間を要する。」

 「じゃ、じゃあアンタはこのまま……」

 「私は特に何もせずその時を待つだけだ。しかし……」

 「しかし?」

 「それまではこの時を手繰り寄せてくれたお前達の望むように手を貸そう。これでも私は感謝、というものくらい知っている。」

 「は?」

 「とはいえ、私ができる事は限られている。せいぜいこの世界にはない力の欠片を少しだけ分け与える事くらいだ。」


 よくよく話を聞くと、その力とはタカヒロやルナ、ウリエル、そしてディーナ達が持っているモノだと言う。

 それが解った時には波旬とやらも驚いたようだが、何だろう、この者達の素性を理解したのか妙に納得はしていた。


 「お前達はこの世界の存在ではないようだな、必要ないだろう。であれば、だ。そこの男にそれを与えよう。なに、あって困るモノでもない。」

 「お、俺?」

 「ただな、この力は人間が使うには余る。無理して使えば身の破滅を招くぞ。」

 「な、なんだその力とは……」

 「まぁ、そこの女がいればそれも心配はないと思うが、それにしても妙な、というか面白い組み合わせではあるな。お前らはつがいか?」

 「は!?」

 「え!?」


 「まぁ、詳しくはまた後で話をしよう。私は帰る段取りをしなくてはな。ではまた後程な。」

 「……」

 「あ、お前らは元の世界に帰るのだろう?」

 「あ、ああ、そうだ。」

 「それも解るんだな……」

 「お前らの世界にも私は顕現するかもしれない。その時は宜しくな。」

 「宜しくと言われても……」

 「ま、まぁ悪さしなけりゃどうでもいいけどな……」

 「ではな。また会おう。」


 それだけ言って波旬とやらは消えた。

 その存在の気配が消えた瞬間、全員が脱力しその場にへたり込んだ。

 ディーナ達4人を除いて。


 「な……何というか、な。」

 「正直に言おう。あれほどの恐怖を感じたのは初めてだ。」

 「アタイもだぜ……」

 

 ハンパない脱力感に苛まれながらも、タカヒロ達は立ち上がってこう言った。


 「さて、そんな事より、だ!」

 「ああ、そうだな。」

 「こっからがケーニヒ、お前らの出番だぜ。」


 タカヒロ達は言う。

 これから俺とココロは、ティレル王、メイザス国王、レムリア国王代理、ルーフ連邦宗主国国王との会談に出席してもらうと。

 それから少しの後、その代表者たちは俺とココロが立っているこの場所へと歩いてきた。


 コンコルドのど真ん中、何もない所に、各国の軍によって急ごしらえではあるが天幕が張られ、会議の場が設けられたのだ。

 その様子を見ている各国の代表者達の表情は、どこか明るい感じがした。

 そして

 ティレルは言う。


 「ケーニヒよ。こうしてお前と気軽に話せるのは、これが最後やも知れぬな。」

 「ティレル王?」

 「さぁ、準備はできたようだ。入ろうか。」


 俺達は天幕の中へと入って行ったんだ。

 タカヒロ達は外を警護すると言って、同席はしなかったが、天幕に入る時、タカヒロは俺に向かってウィンクをした。

 どういう意味なんだろうか……



 ―――――


 

 「上手くいくといいけどなぁ。」

 「何をシレっと。そうなる様に根回ししたのだろう?」

 「あはは、まぁね。でもさ、それでも決めるのは彼らだ。先は判んないさ。」

 「何つーか、やっぱそういうトコお前らしいな。」


 「お父様。」

 「ディーナ、何だい?」

 「結局ケーニヒさんとココロさんって、どうなるんでしょうね?」

 「それ、私も気になります。」

 「俺もだな。」

 「オレも気になる!」

 「あー、あの二人はたぶんな、永遠に結ばれるんじゃないかな?」

 「永遠に?」

 「ココロさんはもとより、ケーニヒさんな、人間やめちゃったみたいだよ。」

 「「「「 は? 」」」」

 「あー、言い方は適切じゃないが、お前達のような存在になったと言う事だ。」

 「ルナ様、それって?」

 「どういう事ですか?」

 「あの者は英雄ではない、勇者になったと言う事だ。この世界のな。」

 「「 はー…… 」」

 「「 へー…… 」」


 長い長い首脳会談は、結局翌朝まで続いた。

 私たちはその間、ずっと外でお父様たちと尽きない話をしながら警護を続けていたんだ。


 首脳会談が終わり、各国の代表はそれぞれの陣へと戻り、そのまま自国へと引き上げていった。

 その表情は、誰もが晴れ晴れとした感じを受けたと同時に、何というか厳しい表情も見えた。

 お父様曰く、それは今後取り組み進めるべき事に対して真剣に考えているからだろう、だって。


 各国が今後すべき事、それはこれまでのこの大陸の歴史を考えればかなりの難題でもある。

 きっかけとしては最低ではあったけど、タイミングとしては最高だ、ともお父様は言っていたなぁ。

 ともあれ、みんな出て行った天幕の中で、茫然と立ち尽くしているケーニヒさんの元へと、私達は向かったんだ。 


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