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そんな私はヴァンパイア  作者: 松栄
第11章 番外編 緑の星テラの奇蹟
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テラの奇蹟-34 奇蹟

 コンコルドという、何もない広大な土地のほぼ中央部分に、禍々しい謎の大軍が集結している。

 その軍を率いているのは、これまた意味不明な異形の大きな物体、いや、存在だ。

 その軍勢は、有り得ない事にいつの間にかレムリアとメイザスの軍全てを合わせた数を大きく上回っていた。

 その全ての兵が、およそ人間とはかけ離れた容姿の兵だ。


 ここにきてこの敵とやらは、隠す事もせずに一気にこちらを殲滅することにしたのだろう。

 というか、だ。

 この大陸全土の、と言って良い軍勢が集結しているのだ。見方を変えれば、それぞれの国を一つずつ潰す手間が省けると考えているのだろう。

 そして最終的な目的が、俺の傍にいるココロだという。


 ただ、今のこの状況を作り上げたのはタカヒロ達だ。

 あの連中、どれだけの先見の明があるのか、あるいはどれほどの戦略眼をもっているのか、強さも合わせ底が知れない。

 違う世界から来て、この世界を救うなどと言っていたが、あながち虚言とも言えないのは理解した。

 だが、そんな別世界の者に全てを委ねるってのも、何だか悔しいし申し訳ない。

 それなら、だ。

 俺がすべき事はここなんだ、ここでココロを、この世界を守るしかないんだな。


 「タイミングはココロさんが教えてくれるぞ!」

 「ケーニヒ、焦るなよ!」

 「アタイらの事は気にすんな!」

 「ココロさんは私達が!」

 「守り抜きます!」


 雲霞の如く増殖を続けこちらに突進しようとしている敵。

 辛くもタカヒロ達が押さえつけているが、もはやその圧倒的数はそれすら突き抜けるほどの勢いに思う。

 しかし。

 あの者達の術なのだろうか、何かに囲まれているようでその囲いからは出られないらしい。

 

 ならばあの雑兵は気にする事じゃない。

 俺が狙うは、あの異形の大きな物体、それだけだろう。


 「そろそろ頃合いだなタカヒロ。」

 「ああ、外の軍勢も落ち着いたようだし、みんな見てるだろう。なら、だ。」

 「んじゃあ、ココロに合図するか。」


 ウリエル、そしてルナが片手を天にかざし、手から光の玉を打ち上げる。

 何のことは無い、ただの光の魔法なのだが、それはココロに「今この時」と告げるサインだった。


 「ケーニヒ様!今です!!」


 そう言ってココロは再び俺へと不思議な力を放つ。

 と同時に、サダコ、ルシファー、アズライール、そしてツクヨミが同じように何かを俺へと浴びせる。

 瞬間、俺ははっきりと自覚した。

 恐らくは魔法なのだろう、それが俺の力を、何倍にも増幅した。

 力が漲る。

 敵の隙が、急所が解る。

 どこを狙い何をすればいいのか、それすら頭に浮かぶ。


 失敗する事なんて考えていない、いや、考えられない。

 全てはあの敵、アネティモラとかいう存在を消す、ただそれだけが思考を支配していたんだ。


 「うりゃあああああ!!!!!」


 全ての力を剣に込めて、自分でも驚くくらいの速度であの存在へと吶喊した。


 「「「「 行けッ! 」」」」

 「「「「 やっちまえ!! 」」」」


 タカヒロ達の声が聞こえる。


 「ケーニヒ様……」


 ココロの祈りの声が聞こえる。

 その時、俺は。

 もはや何も考えられず、記憶すらなかった。



 ―――――



 コンコルドの地に静寂が訪れた。

 ほんの少し前の、あの戦場特有の喧騒と雰囲気は一変していた。


 この地のほぼ中央に、一人佇む男、そして寄り添うように同じく佇む女。

 誰もが信じられない光景を突きつけられ、誰もがその瞬間を目撃し、誰もが恐怖と歓喜、安堵、悲しみを同時に抱いた。


 一人、いや、二人で佇むケーニヒとココロは何を思うのだろう。

 遠巻きに二人を見守る者達は何を考えているのだろう。

 そして、それを眺める事しかできない軍勢は……



 ◇◇◇


 「まさに英雄…か。」

 「シクロ様。」

 「オオトリ、あの者はもはや英雄、などという称号は相応しくないな。」

 「御意。英雄という称号ではあまりにも過少評価かと。」

 「まぁ、それよりも、だ。我々はもはや争っている場合ではなかったのだな。」

 「それは……」

 「まぁ良い。しかし……信じられないモノを見てしまったな。」

 「はい。」

 「では、行くか。」

 「王、どちらへ?」

 「決まっておろう、ミナルディ将軍の所へ、だ。我が軍は武装解除の後ここで待機させておけ。」

 「御意!」



 ◇◇◇


 「あ奴、もはや人間ではない…な。」

 「ミナルディ将軍!」

 「どうした。」

 「メイザス軍から数名、こちらへと向かってきますが!」

 「メイザスから……あ、いや、わかった。失礼の無いよう、丁重にここへと案内差し上げろ。恐らくはメイガス王だろう。」

 「は……はい!」

 「我が軍は即座に武装解除!ここで待機だ!各々小休止とせよ!」

 「ははッ!!」

 (さて、俺もメイガス王とともに、あっちへと向かわなくてはな。)

 


 ◇◇◇


 「あのような闘い、もはや人間同士の争いなど児戯に等しいな……」

 「陛下、如何いたしましょう?」

 「ヒル卿、そなたは私と共にイルムシャーの陣へと向かうぞ。イーシャと言ったな、その者も同行させよ。」

 「わかりました。お供致します。」

 「うむ。それにしても、だ……」

 「陛下?」

 「あのケーニヒとやら、もはやあの者は……」



 ◇◇◇


 「何ともまぁ……」

 「ティレル王、私はもはや何が何だか……」

 「やはりあの者達は普通じゃないのであるな。いや、それよりも、じゃ。」

 「はい。あのケーニヒが、この大陸を、この世界を救った、という事実だけが残ったようです。」

 「もはやケーニヒを我がイルムシャーに留めておくことは出来ないかもしれぬな。」

 「王?」

 「まぁ、それはこれからみんなで話をするとしよう。さてモーゼル、アルピナよ。」

 「はい。」

 「はい。」

 「話し合いの準備だ。軍は武装解除、場の設置を早急に実行せよ。もうすぐここに集まるであろう。」

 「集まる?誰が?」

 「ほら、向かってきたようじゃぞ。」



 ―――――



 終わったんだな、これで。

 振り返ればあっけない戦いだったと思う。

 というよりも、無我夢中だったからなんだろうか、他の事を考える余裕もなかったからなんだろうな。


 ただ、俺があの最大の敵とタカヒロ達が言っていた異形の、人類最大の脅威アネティモラとやらを駆逐したのは事実のようだ。

 実感はまだ無いが、それは実行され結果が残った。

 なんというか、それもこれもタカヒロやルナ達のお陰なのだろうな。

 いかんな、思考が霧に包まれたように、感情が湧いてこない。


 「さてと、ケーニヒさん、ココロさん、お疲れ様だね。」

 「タカヒロ……」

 「タカヒロ様……」

 「これで一先ずはこの大陸の諍いの元凶を潰す事は出来たって事だよ。二人のお陰だね。」

 「い、いや、それを言うならお前達が……」

 「あはは、違うよケーニヒさん。」

 「そうだな。私達は徹底してサポートに回っていたんだ。この結果はケーニヒ、お前が導き手にしたものだ。」

 「ルナの言う通りだぜ。アタイらは少し御膳立てしただけだ。それに、お前とココロじゃなけりゃこの結果は無いんだぜ?」

 「ケーニヒさん、ココロさん、カッコいいです。」

 「というか、素敵です!」

 「もうあれだよな、アンタらはさ。」

 「ああ、勇者、だよ。」


 い、いや、もはや勇者そのものであろうタカヒロ達にそう言われるのは少し面はゆい。

 とはいえ、それも事実、なのだろうか。

 でも、それも俺一人の力じゃない。

 ココロが支えてくれたから、フィラフォサ姫の想いがあったから、だ。

 感情を整理するには、まだ少し時間がかかりそうだが、しかし。


 「ケーニヒ様……」

 「ココロ、ありがとう、そして済まなかった。」

 「いいえ、それは言わないで下さい。私は…私は……」

 「ココロ、もう、俺から離れないでくれ。」

 「……はい!」


 俺はもう、騎士は廃業だな。

 行く当てもなく、これからはティレルに頼んで実家でのんびりと暮らすべきなのだろう。ココロと共に。


 と、そう思いイルムシャーの陣を見れば、何やら各国の特使、いや、あれは諸王たちか。

 一か所に集い、何やら話を始めたようだが、気のせいかこちらをちらちらと見ているな。

 まぁ、そうなんだろうけど。


 そう思った瞬間、タカヒロ達に緊張が走ったのか、ルナやウリエル、ディーナ達も気を放ち臨戦態勢を取った。

 そして俺とココロを守る様に円形に陣形を取ったのだ。


 「ちッ!ルシファー、アズラ、二人は頼んだ。」

 「うむ、とはいえ、な。」

 「これは少し厄介ですね。」


 「なんだ、この気配は?」

 「ルナ、ウリエル、これって?」

 「わからん、しかし……」

 「気を抜くんじゃねぇぞ、コイツぁヤバい!」


 全員がその気配を察知し、一か所に視線を集中した。

 そこには、いつの間にか何かが居た。

 な、なんだアレは!?


 ……少女?


 「ほほう、なるほどお前ら、なかなかに面白い存在だな……」


 あのタカヒロ達が、その少女が発した言葉に慄く。

 戦慄し、身動きすら取れない様な圧を、俺もココロも感じている。

 なんなんだ、これは?


 「お…お前は……まさか?」

 「私の名は波旬。」


 「「「「 !!!! 」」」」


 全員が。

 絶句した。


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