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そんな私はヴァンパイア  作者: 松栄
第11章 番外編 緑の星テラの奇蹟
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テラの奇蹟-33 光

 戦闘が始まってから30分程は経っただろうか。

 既に戦場は乱戦の様相を呈している。

 いるんだが……


 襲い来る敵は確実に俺とココロを標的にして突撃をしているのだが、どうも後ろの方ではレムリアとメイザス双方の軍が2派に別れて同士討ちをしている様だ。

 が、それに気を取られている場合ではない。

 やはりと言うか、こちらに迫る普通じゃない兵は人間とは思えない力と戦術を使ってきている。

 ディーナとシャルルが大半を殲滅してくれているが、俺は徐々に防戦一方になりつつある。

 しかし、俺はココロを守らなければならない。

 下手に攻撃に集中して防御を手薄にするのは悪手だし、意味がない。

 ならば、だ。このまま防御に徹するしかない、のだろう。


 ディーナとシャルルの攻撃はもはやこの世のモノとは思えないほど凄まじい。

 それに加え、俺が漏らした兵を迎え撃つタカとヒロもまた、尋常ではない。

 そんな中の俺はと言えば、この4人にとってはかえって邪魔でしかないんじゃないか?


 「ケーニヒさん、あんまり離れんなよ!」

 「ココロさんから距離を開けないようにな!」

 「あ、ああ!すまん!」


 そう言われても、だ。

 こんな兵、いや、敵相手だとポジショニングを気にしている暇なんてないんだが。

 いや、確かにそうだな。

 ディーナもシャルルも、タカもヒロも、その為に今奮闘しているんだし、な。

 そう気持ちを切り替えると、周囲の状況にも目を向けられるくらいには余裕も持てた。


 レムリアの軍勢では、あのミナルディ将軍が先頭に立って同士討ちをしている。

 と言うよりも、タカヒロの言っていた紛れ込んでいる本当の敵と戦っている、のだろう。

 同じようにメイザスも、クローと、同じような恰好をした者が指揮をとりつつ陣頭に立って同じように自軍の兵と交戦している。


 それぞれに対して、今度はイルムシャーの軍がそこに突っ込んで行った。

 客観的に見れば、同士討ちをしている軍勢の隙を突いて突撃した構図だ。

 要するに、イルムシャーが両国に対して宣戦布告、開戦したって事になる。

 タカヒロが言っていたのはこの事だと、今理解した。


 これではイルムシャーが一方的にレムリアとメイザスに攻め込んだと見えるだろう。

 そうなると二つの大国からすればイルムシャーこそが両国にとっての敵とみなされる事になる。

 今後の事も考えれば、イルムシャーはこの時点で先が無くなったようなものだ。

 とはいえ、実情は違うのだが……


 どちらも攻防は一進一退の様相だ。

 そこから漏れ出ている、というよりもそもそもこちらに向かってきている兵、いや、敵の数は驚く程多い。

 いや、違う。

 敵は……増えている!?

 斬られ、死んだはずの異形の兵たちは再び動き出しているし、何故かそもそもの数が増えている。

 ディーナ達が殲滅した敵は文字通り消滅しているものの、それ以外の敵は増殖しているかのようだ。

 何なんだ、この敵は?


 そんな状態が続く中、さらなる違和感に襲われた。

 突然背筋に氷を突きつけられたような、悪寒が走った。

 タカヒロ達もそれを感じたようで


 「来た!」

 「よし、ブレイクだ!」


 それまで各国の兵の補助に回っていたタカヒロやルナは、そう言うとこちらへと向かってくる。

 ココロを中心に据えた陣形を整え防御の体制になるようだ。

 ウリエル、ルシファー、アズライールはそれぞれの国の軍勢の前に出て何かをした。

 どうやら異形の敵と元の軍勢とを分離させたようだ。

 イルムシャーの軍勢が、レムリア、それにメイザスの軍を二つに分けるように突進し、両軍の正規?の兵を守るように陣形を敷いた。

 守られる形となったレムリアとメイザスの軍は、イルムシャーの兵に向かうことなく、その勢いを止めたんだ。


 しかし。

 両軍から飛び出ていた異形の兵はその数を維持しながら、やはりこちらに向かってきている。


 「さて、ここからがアンタ達の出番かもしれないよ。」

 「ど、どういう事だ?」

 「この混乱の元凶、それが来るって事さ。」

 「混乱の元凶だって?」


 迫りくるレムリアとメイザスの異形の兵は、相変わらずディーナ達によって殲滅させられている。

 が、その勢いは衰える事は無い。

 後方ではわらわらと湧き出ているらしいからだ。

 キリがない。

 元を叩くにも元がわからない。

 それでも、ディーナ達はそれを理解した上で殲滅させ続けている。

 そこに焦りや疲労の色はない。

 とんでもない連中だと、今更ながらに思う。


 そして、一同は北東へとその視線を向けた。

 

 「な……なん、だ…アレは……」


 絶句する。

 俺だけじゃない、この場、コンコルドに集結した全ての国の兵は、俺と同じように絶句し固まってしまった。


 その大きさは30フィートを軽く超えていて、体なのか、その長さは100フィートにも届くのか。

 上半身だけの人型のようだが、頭が肩に埋まっている様な異様な姿。

 何よりそれは黒一色に染まり、肩に埋まっているような顔には2対の赤い目のようなものがある。

 肩から伸びる腕も異様に長く、関節など関係なく自在に動いているかのようだ。

 そんなモノが空中に浮かびながらこちらに迫ってきているんだ。


 どんな凶悪な獣よりも、どんな理不尽な自然現象よりも、果てしなく感じる恐怖と嫌悪感。

 俺はたった今確信した。

 これが、元凶だと。倒すべき敵だと。


 しかし、戦いは止まらない。

 異形の兵どもはそれすら関係なく攻撃を続けているからだ。

 それを阻止、そして殲滅しているのは、あんなモノを見ても動じる事すらしないタカヒロ達だけだった。


 「ケーニヒさん!ボケっとすんなよ!」

 「ケーニヒさんはココロさんの前に!」

 「兵たちへの危害は私達が食い止めますから!」


 タカヒロ、そしてディーナとシャルルの言葉で、ようやく俺は動く事ができた。

 そうだ、固まっている場合じゃない。

 俺はココロの前で構える。

 あの変な訳の分からない相手に対して攻撃する為じゃない、ココロを守る、ただその為だけに自身を鼓舞し奮い立たせ、隙無く構える。

 そんな中、ココロは怯えるでもなく、俺の後ろであの変なモノをしっかりと見据えていた。


 「ケーニヒ様。」

 「ココロ?」

 「あの敵、アネティモラは何としても消滅させなければなりません。それができるのは、ケーニヒ様、貴方だけです。」

 「お、俺がか!?」

 「はい。その為の段取りをタカヒロ様達がしてくれます。」

 「こ、こんな乱戦の中でアイツらが…何を?」

 「私が合図をします。そのタイミングで、アネティモラを切り裂いて下さい。」

 「い、いや、どういう事だ?というか、どうすれば!」

 「落ち着いて下さい、そして、何時でも動けるよう、あの異形をしっかりと捕捉しておいてください。」

 「ココロ……わかった。」


 イマイチ何がどういう事なのか理解できないが、すべき事は解った。

 俺が、あの異形の、アネティモラとココロは言ったが、アレを斬り倒すんだ。

 とはいえあんなの、俺に斬る事ができるのか?

 そんな事を考えていたら、いつの間にか軍同士の小競り合いが止んだ。

 気が付くと、異常な状態にあると思われる兵、そしてあのアネティモラというモノは完全に孤立状態にあった。

 その上、だ。

 何か黒と虹色に淡く光る幕のようなもので覆われている。

 何なんだ、これは?


 「さあ!ケーニヒさん出番だ!」


 タカヒロが俺にそう叫ぶ。

 そして

 

 「ふむ、これで良いじゃろう。」

 「充分でありんすな、たいしたものよのケーニヒとやら。」


 「こ…これは!?」


 「ケーニヒ様私からも……」

 「ココロ、これって……」


 力が漲る。

 いや、これは単純な力じゃない、ように思う。

 何とも不思議な感覚、あのアネティモラに対しても、恐怖をそれほど感じなくなっている。


 「ケーニヒさん、補助は任せてください。」

 「一気に、あの敵を切り刻んでください。」

 「ディーナ?シャルル?」


 「あなたが。」

 「アレを消すんです。」

 「……そうか、わかった!」


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