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そんな私はヴァンパイア  作者: 松栄
第11章 番外編 緑の星テラの奇蹟
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テラの奇蹟-32 Built To Destroy

 大陸のほぼ中央部に位置する土地、コンコルド。

 比較的高い平地であり、肥沃な土と綺麗な水源をもつ場所、そしてこの大陸の4つの大国へ続く道が交差する要衝、3つの大河がここで行先が分かれるあらゆる意味での分水嶺でもある。

 そんな魅力的な土地ではあるが、今はどの国もこの土地には手が出せないでいる。

 なぜなら

 ここはいわゆる聖地と言われる不可侵の場所であり、古来より各国はここを支配することは国を亡ぼす事と同義である、と認識しているからだった。

 事実、300年前にはここに侵略し都市を築いた国があった。

 しかし、街が形になり城が完成したのを待っていたかのように、その都市は一夜にして滅び廃墟と化したのだった。

 その後、3つの国が同じように侵略したが、何れも全く同じように滅んだ。

 

 理由も判らず、各国はこの地に手を出すことは禁忌だと畏れ、結局はこの地は不可侵の聖域だと定めた。

 以来、残る街道を行き交う人こそいるが、定住する者はいない。

 いつしかこの地は、コンコルドと呼ばれるようになったのだ。


 そんなコンコルドに今、この大陸を支配せしめんとの野望を抱く、隣接する大国の軍が集い始めていた。

 しかしその目的はこの地の侵略ではなく、どの国も決戦の為。ただそれだけの為に。

 そして。

 コンコルドの中心、円形に広がる何もない草原には、ケーニヒとココロ、そして二人を守るようにディーナ達が居た。

 

 「集まってきましたねー。」

 「お父様、本当にこれで上手く行くんですか?」 

 「うーん、たぶん大丈夫だと思うよ。」

 「お前の『たぶん』はほぼ確定っぽいんだろうな。どの世界でもお前はお前だしな。」

 「もっとも、アタイらもそんな気はするけどなぁ。」

 「んでもさ、あの軍の中にも居るんだろ?」

 「オレもそう思うな。変な気を感じるもんな。」

 「まぁ、問題なかろう。それも作戦の内じゃろう。」

 「そうですね。むしろその方が後々を考えれば、ですね。」

 「ふむ、やはりあの力は感じるのぅ。さて、少し気張るか。」


 緊張感は欠片も感じられない、そんなディーナ達を見てケーニヒは思う。

 過去、これだけの規模で各国の軍が、兵が、一か所に集う事などなかった。

 戦線での戦いでも、これほど大規模な展開は未だかつてない。

 それ程、俺達が戦うべき敵というのは強大なんだろう、と。


 俺達を取り囲むように、四方八方に各国の軍勢が配置されている。

 その全ての軍の矛先はここ、俺達が居る草原だ。

 タカヒロの作戦、それは要するに俺達を囮としてあの軍勢に紛れ込んでいる本当の敵を炙り出す事だ。

 そして、それだけの騒ぎとココロが居る事で、必ずやアネティモラなる敵の大将が来るだろうと。

 ここが、決戦の地、そして未来を拓く地となるのだそうだ。


 「ケーニヒ様……」

 「ココロ…すまない、こんな事に巻き込んでしまって……」

 「いいえ、ケーニヒ様、これは逆に私が貴方を巻き込んでしまった事なのです。」

 「ココロ……」

 「許されることでは無いのは承知しています。ですがせめて、私の身と引き換えに人類の敵を殲滅する事で、許してください……」

 

 先日、ココロからは自身の本当の事を聞かされた。

 俺だけに、本当の事を教えてくれたんだ。

 しかし、だ。

 俺にはココロが何だろうが関係ないんだ。


 「許すも何もない。ココロがそう言うなら、尚更許す事なんてできない。」

 「ケーニヒ様……」

 「だから……だから、俺がそれを許すと言うまで、一緒に、共に居てくれ、ココロ。」

 「ケーニヒ様……はい!」


 そんなやり取りをしているうちに、各国の軍勢は布陣を完了させたようだ。

 どの国の軍勢も、前線を固く守っている。

 突撃する部隊の姿は今の所見られない、と言う事は今は様子見を、と言う事だろう。

 が、タカヒロは言う。


 「よし、ここまでくれば作戦は完了したも同然だな。あとはひたすら待つだけだ。」


 この、一触即発、そんな極度に緊張した状態で待つ、と言うのだ。

 何を待つのか、何時まで待つのかはタカヒロは明かさなかった。

 ただ、その時は俺とココロがその中心になる、とは言っていたのだが、それが何を意味するかも解らない。

 

 「いいかいケーニヒさん。」

 「何だ?」

 「メイザス、それからレムリアの軍勢から兵が飛び出してくると思う。」

 「俺達を目標にして、か?」

 「ああ。ただそいつらはあっち側の作戦とは別の思惑で動く奴ら、俺達の本当の敵だ。」

 「本当の敵……」

 「だけど、それにつられて前進してくる兵も居ると思う。その見極めをしないといけないんだよ。」

 「し、しかし、そんなのどうやって……」

 「てことでココロさん。」

 「はい。承知しております。」


 何のことだろう?

 いや、とにかく俺はその突撃してくる兵を迎え撃てばよい、と言う事らしい。

 というか、それを俺一人でか?

 

 「私とシャルルが付きます。ケーニヒさんは必ず守りますので安心してください。」

 「何も気にせず、本当の敵だけを撃破してくださいね。」

 「二人とも……すまない。」


 「ココロさんは俺達が守るからさ。心配ないよ。」

 「ああ、オレ達がケーニヒさんの代わりに守るからな。」

 「あ、ああ…頼んだよ。」


 「され、そろそろだろうな。みんな、来るぞ。」


 タカヒロが言った通りだった。

 レムリアの陣から、50騎程が吶喊してきた。

 遠目で良く見えないが、自軍の静止も無視し、あまつさえ止めようとした兵を蹴散らしてまで。

 レムリアの陣には動揺が走っていて少し混乱しているようでもあった。


 と、同時にメイザスの陣でも動きがあった。

 レムリアと同じように50騎程がこちらへと吶喊してきた。

 レムリア、そしてメイザスの陣は混乱し、抜け駆けした騎馬以外は出てこずに陣を固く守ろうとしている。

 どうやらこの騎馬どもが、タカヒロの言う本当の敵、なんだろう。

 ならば。


 「ケーニヒ様!」

 「ココロ!?」


 ココロは俺に向かって何か不思議な力を浴びせたようだ。

 何だろう、心なしか力が増え、体も頑丈になった気分になる。

 これは……何かの魔法なのか?


 「ケーニヒさん!」

 「行きますよ!」

 「あ…ああ!」


 ディーナとシャルルの掛け声で、俺は意識をあの騎馬隊に向けた。

 まずはレムリア側の兵だ。

 何というか、あの騎馬隊からは何か嫌悪感に似たような厭らしさを感じる。

 接敵するまであと50フィート程まで近づいた時に、初めて気づいた。

 コイツら……


 拘泥し逡巡している場合じゃない。

 俺はその50騎に向かって剣を薙いだ。

 まだそいつらとは30フィート近く離れている。

 剣が届くはずはないのは理解しているが、体が自然とそう動いたんだ。

 結果。

 半数がその場で斬られ倒れた。

 そのままの勢いで残りの騎馬にも向かい、馬を捨てた5人を斬り倒した。


 「ケーニヒさん、あっちです!」


 ディーナが叫ぶ。

 今度はメイザスの兵だ。

 奴らまでは100フィート近く距離がある、が。

 脚が軽い、というよりも思う以上に体が動く。

 恐らく今俺は馬よりも早く走っているような気がする。

 というか、ディーナもシャルルも速いな……


 と、メイザスの兵も同じように迎え撃つ。

 レムリアもそうだが、メイザスの兵もこれまで戦ってきた兵とは比べ物にならない程の強さだと思う。

 俺に迫る程の強さを持つ聖騎士をも上回る程の強さに思えた。

 が。

 そんなメイザスの兵も、全て斬り倒した。

 ディーナとシャルルが、俺の背後を守ってくれていたお陰でもあるな。

 というか、ディーナもシャルルも強いな……


 「ケーニヒさん。」

 「ん?」

 「まだ、終わりじゃないです。来ます!」


 ディーナ達が言うや否や、レムリアとメイザスの双方の陣からさらに兵が向かってくる。

 各々20騎程だろうか、真っ直ぐにこちらへと向かってきた。

 と、それとは別の兵30人程が俺ではなくココロに向かって突進している。

 

 「ココロ!」

 「ケーニヒさん!あっちは大丈夫です!」

 「貴方はこちらに集中を!」

 「あ、ああ!」


 こっちに向かってくる兵は……

 何だ、これは!?

 襲い来る兵、その姿はもはや人間とは思えない容姿だった。

 とはいえ、向かってくる兵は排除するだけだ。

 そう気持ちを切り替えて構える。


 接敵し剣を交えると、その異常さは際立っていた。

 さっきの兵よりもはるかに強い。というよりももはや人間とは思えない。

 俺の両脇、そして背後はディーナとシャルルが守ってくれている、なら、だ。

 俺は前に集中して進めばいい。


 と。

 メイザス、そしてレムリアの陣からは再び多数の兵が吶喊してくる。

 くそ、総力戦になるのか……

 そう思ったのだが。


 出てきた兵たちは、俺達に襲い掛かっている異形の兵へと攻撃し始めた。

 同士討ち、いや仲間割れ、か?

 どういう……事なんだ?



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