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そんな私はヴァンパイア  作者: 松栄
第11章 番外編 緑の星テラの奇蹟
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テラの奇蹟-29 暗躍の中の暗躍

 月明かりも無い深夜。

 モーゼルはルシファーによってイルムシャーへと転移した。

 その様子はもう驚かない、実際俺達はそうやって転移魔法というものでイルムシャーからデグナーに移動したからだ。


 と同時に、イーシャという者もウリエルによって転移する。

 そして、クローはディーナによってメイザスへと転移した。

 これが第一歩だ。


 「さて、あとはミナルディさんだな。レムリアには直接俺とサダコ、ルシファーさん、アズラさんが乗り込む。」

 「すまないな……」

 「まずはアンタが軍を掌握しない事には物事が進まないからね。」


 メイザスではクロー達王直轄の暗部が軍部の指揮権を奪取する。その中で敵に通ずる者もあぶりだせるだろうとの事だ。

 同時に政権内、軍部、民衆へと、とある噂を流し広めるのだそうだ。

 その噂は、レムリア、イルムシャー、ルーフ連邦へも広めるらしい。


 イルムシャーは軍部をレムリアとの国境付近に展開し固く守る態勢を取るらしい。

 軍部だけでは足りないとは思うが、実際戦闘に発展する可能性はないとタカヒロは言う。

 タカヒロがレムリアへと向かう事と流す噂はその為の布石なんだとか。


 ルーフ連邦ではデグナー自治区の防衛隊を中心にゲンバラまで進軍し、こちらも防衛線を張るとの事だ。

 要するにイルムシャーとルーフで大陸南部を守るという事なのだろう。

 しかし、二国の戦力を合わせた所で、メイザスとレムリアとの2面対峙は少し軍事力に差があるが、大丈夫なんだろうか。


 「じゃ、行くか。次の行動は3日後の日の出とともに、だ。みんな、頼んだよ。」

 「おおー!」


 そうしてタカヒロはミナルディを伴ないレムリアへと向かった。

 となると、俺達はここで待機、だな……




 ―メイザス王国


 「なるほど、そう言う話か。しかし。」

 「シクロ様……」

 「フィオ、心配するな。私とてこのまま座して死を待つつもりはない。でだ、オオトリよ。」

 「は。」

 「その者達は信頼できるのか?」

 「クローによれば信頼に足るどころか全てを預けても良いとの所見にございます。」

 「クローがそこまで言い切る程か。ならばオオトリ、その作戦とやらを直ぐにでも実行に移せ。私も直ぐに動こう。」

 「は!」


 きっかけ。

 シクロ王が現状を憂い国を正そうと決起するには、まさにそれが必要だったようだ。

 けっして王に決断力が無い訳では無い。曲がりなりにも一国の王なのだ。しかしそれ故にその決断は慎重すぎても足りない程大きなものだろう。

 まして現在は実権をはく奪されているのに等しいのだから。

 そんな状況で決断できたのは、強大な力が動く、という所ではなかった。

 もたらされた情報によって確たる道筋が見えたからだ。

 他でもない絶対的な信頼を置ける“影”からの情報だからだ。

 とはいえ。


 「あのクローがあれ程張り切っているというのが、少し気にはなるが……」

 「シクロ様、何となくですけれど、クロー様からは何やら桃色なオーラを感じます……」


 そこからの展開は驚く程早かった。

 クロー達“影”が放った噂話は瞬く間に国中に広まり、元々懐疑的だった軍の殆どの者は戦争に消極的になって行った。

 そこにきて影の一人、軍幹部に就いている者が軍を二つに分けたのだ。

 そもそも国に忠誠を誓っている者、つまりは愛国者達と、いつの間にか蔓延していた逆賊派、つまりは外部の者とを。

 その逆賊派を率いている者、それは存在を誰もが知ってはいるが、その素性は誰一人として知らない者だと、この時点で影の者は気付いたのだった。


 こうしてメイザス王国は完全に国家としての機能がマヒする状態となり、特に軍部の指揮系統は混乱の極みにまで発展した。




 ―レムリア王国



 「さて、まずは国王の救出からだね。」

 「国王の居所は不明なのだ。まずそこから探らねば……」

 「まぁ、城内に居るのは間違いないでしょ。なら、だよ。」

 「タカヒロ殿、まさか……」

 「その方が手っ取り早いし確実だろうからね、さ、行こうか。」


 ミナルディの仲間、つまりは反乱軍には既に話をして噂話を広めるように手配した。

 そこにダブルスパイのような者がいたとしても、その噂の根本的な目的には気付かないはずだ。

 

 俺達は反乱軍を警戒し厳重な警備体制を取っているレムリアの本丸、レムリア城へと入って行く。

 正門から堂々と。


 「止まれ!何用か!……あ、貴方は!」

 「すまぬなヴィル、所要だ。地下房へ行く。」

 「あ、いや、しかし、それは!」

 「お前はそのまま上官へ報告し、城から逃げろ。ここはもうすぐ戦場となる故な。」

 「将軍……」

 「訳の分からぬ者の為に命を粗末にするな。ではな。」


 そこにいたおよそ10名の兵士は、ミナルディのその言葉で動かなくなり、俺達はすんなりと城へと入れたのはラッキーと言えるな。

 というかこの将軍、よほど人望に厚い人物の様だな。

 そのままミナルディの案内で、隠し通路を経て城の奥深く、地下にある牢獄へと向かっているんだとか。


 「この地下牢はな、特に家臣の反逆を阻止する為に造られたものだ。光も届かず逃げ道もなく、ここを知る者は大臣クラスの権力者だけだ。」

 「なんでアンタは知ってたのさ。」

 「昔の話だが、一人の将軍が反乱を企てていた時に俺がそれを阻止したのだ。その時に此処へと連行するよう命令されたからだな。」

 「それって王様から?」

 「そうだ。直接な。」

 「……ふーん。」

 「どうした?」

 「あ、いや、何でもないよ。」


 しばらく進んだ先にあった牢屋、3つあるうちの一つに、その人物は居た。

 衰弱が激しいようで、みるからに気力が失せているように見える。

 が……


 「王!やはりここに!」

 「……お前は……ミナルディ、か……」

 「い、今救出致します!もうしばしの辛抱を!」

 「もう、よい……私をこのまま死なせてくれ……」

 「王!何を!?」

 「王妃も王子も殺されたらしい…国も乗っ取られ…もはや私には……」


 少し王様の様子というか、気持ちは絶望の淵にあるようだなぁ。

 けど、悪いけど今はそうも言っていられない。


 「ちょっと、ごめんよ。」

 「タカヒロ!」

 「ルシファーさん、アズラさん、王を頼めるかな?」

 「よかろう。」

 「任せてください。」


 俺は必要以上に頑丈な鉄の柵をフレームごとぶち抜いた。

 そのまま王の所まで行って、ルシファーさん達に回復魔法をかけてもらった。

 すると、王の精気は回復した様で、少しだけ顔色は良くなったような気はした。


 「お…お前は…?」

 「レムリア王ですね。とりあえず脱出します。ご足労願いますよ。」


 そう言ってミナルディが王を担ごうとしたその時。


 「貴様……何者だ……」


 変な奴が通路の先に現れた。

 何だコイツは……というか、コイツがそうか。


 「貴様は!マッシュ!!」

 「ミナルディか…やはりお前は消しておくべきだったな。」

 「貴様!」

 「待てミナルディさん!」


 マッシュとか呼ばれた者に斬りかかろうとしたミナルディさんを止めた。

 全力で動こうとした自分をピタリと止められた事に驚いている様だけど、今はそれに構っている場合じゃないな。


 「タカヒロ!」

 「ミナルディさん、コイツが裏で糸を引いている張本人だよ。」

 「な、何!?」


 「ほう、何かを知っているようだな……先般メイザスに居た者達の仲間…か……」

 「あー、お前がダルシア、だな。もっとも本体では無い様だけど。」

 「……お前、まさか……」


 そう呟いた刹那、マッシュの周囲に禍々しい異形の兵士が大量に出現したのだった。





 ―オールージュ、ココロの家


 「出たみたいです。」

 「よし、行ってくる。」

 「こっちは頼んだぜ。」

 「「 はい。 」」


 使い魔を通じてタカヒロ達の様子を観察していたディーナ達。

 ダルシアの出現を察知し、ルナとウリエルはタカヒロの元へと転移する。


 「さて。」

 「暴れるか。」


 そう言って、二人はその場から消えたのだった。


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