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そんな私はヴァンパイア  作者: 松栄
第11章 番外編 緑の星テラの奇蹟
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テラの奇蹟-28 英雄ケーニヒ

 この男、なんて事を言い出すのだ。

 我がイルムシャーが戦争を止めるための犠牲、だと?

 そんな話、聞き入れられるか!


 「お前!どういう事だ!まさか最初からそれが目的で!」

 「あー、ごめん、言い方が悪かったな。犠牲ってのはイルムシャーが今戦争をしている国々の共通の敵となるってことだよ。」

 「言い方を変えたとて!同じではないか!!」

 

 「待ってくれモーゼル!」

 「ケーニヒ!お前ま……な、なんだ、ケーニヒ…なのか?」


 ケーニヒ、であることは間違いない、が、だ。

 何だ、表情が何と言うか、迷いのない、しかし恐怖と安堵を同時に受けるような面構えになってやがる。

 それに体も、だ。

 俺よりも低かった身長が、伸びてる、のか?

 俺よりも数インチ高くなっている。その上、体躯もかなり引き締まっているし、何より……


 「何だお前、その気配は……」

 「へ?」

 「お前…自分で気づいていないのか……」


 「へぇー!ケーニヒさん、変身できるんだ。」

 「変身だって?」

 「ケーニヒさん、カッコいい……」

 「うん、ヒロ達みたい……」

 「ホントだなー、俺達みたいな感じか?」

 「なんか勇者さんよりカッコよくね?」

 「……ヒロくん、それは言っちゃイケナイよ……」


 「い、いや、そんな事はどうでもいいんだ!モーゼル。」

 「あ、ああ、なんだ?」

 「タカヒロが言っているのは、何もイルムシャーの民を戦禍に巻き込むって事じゃないんだ。」

 「何を言うか!隣国全てと事を構えるなら同じ事だろう!」

 「あー、二人とも、落ち着いて。」

 「「 お前が言うか!? 」」


 何とか落ち着いてタカヒロから細かく説明を受けた。

 要するに、これは国家間の争いとは様相が違うという事らしい。


 言っている意味が最初は判らなかったが、説明を聞くうちに納得はできた。

 つまり、戦うべきはその国に寄生している、さっきのような訳の分からない敵だというのだ。

 国対国という構図ではあるが、その実は国同士が連携し内外からその敵を砕く、という事らしい。

 イルムシャーはその為の橋頭保に、そして俺たちはその試金石として、という事か。


 確かに、レムリアとメイザスに関しては、真実は判らないが国を乗っ取られているようだ。

 ミナルディはその反勢力として決起したし、クローとやらは幽閉された王の直轄の暗部部隊として暗躍中だという。

 この者達の協力を得て、その敵を国家から剥離させるという話だ。

 しかし……


 「そんな事、できるとは思えんが……」

 「だろうね。普通じゃできない事だよ。でも、だ。普通じゃない俺達が居る。」

 「お前達が普通じゃない、異常者というのはわかるが……」

 「異常者って……まぁ、いいや。んで、アンタ達には民に被害が及ばないよう、国を、民を固く守ってほしいんだよ。」


 タカヒロが言うには、戦場へと出ている兵全てがあの敵と同調しているとは思えない、という事らしい。

 要するに、ミナルディのように国が行っている事に疑問を持つ者も多くいるはずだ、と。

 であれば、だ。

 その者達は何の大義も無くただただ消費されるだけの何の意味も無い消耗品、駒でしかない。

 それに蹂躙される民も、その生きる意味そのものを否定されることになる。

 そんな事は、断じて阻止しなければならない。

 

 「なぁ、モーゼルさん、ミナルディさんも聞いて欲しいんだけど、戦争なんてさ、全く意味がない愚かな行為なんだよ。」

 「そ!そんな事は!」

 「……」

 「よく考えて欲しいんだ。この大陸の国々は、いったい何のために戦争をしているんだ?」

 「そ、それは……」

 「それは、祖国の為に……」

 「その祖国は、なぜ他国を尊重し共に歩む、という選択肢を選ばないんだろうね?」

 「「 …… 」」

 「まぁ、話が少し逸れたけど、少なくとも今の戦争はそうした人間の思惑で行われているものじゃない。なら、それは一刻も早く終わらせなくちゃいけないんだよ。」


 この男の言う事は、いちいち尤もだ。

 もとより、我がイルムシャーは近隣諸国と敵対はしているものの、国として侵略戦争をする意思はない。

 それはこの男が言った事そのまま、だからだ。

 まして、日々を一生懸命生活している民を悲劇惨劇から守る為に、わが軍は存在しているのだから。

 それはティレル、いや、王の目指すところでもあり、敵対していたとはいえゲンバラの王とて同じだったのだ。


 「という訳で、意味不明な敵と表立って戦うのは俺達だけでいいんだ。アンタ達にはその余波を最小限に喰い留める努力をしてもらいたい。」

 「だからタカヒロ様は、私とイルムシャーの暗部とを連帯させたのですね?」

 「そうだよ。利用したようで悪いけど、現実を知る者同士が国を繋ぐ、それが必須だと思ったからなんだよ。ごめんね。」

 「い、いいえ!そんな!ごめんだなんて……」


 と、そんなタカヒロの頭をルナとウリエルとサダコだったか、がひっぱたいた。


 「だから! 何で貴様はそうやって手を握るのだ!」

 「タカヒロ!!」

 「主様!!」

 「あ!ごめん、つい!」

 

 この男、あらゆる面で油断ならない者であるな。

 ともあれ、今後の方向性は理解した。

 ティレル、いや、王がどこまでこれに納得してくれるかは未知数だが、やらねば戦火は拡大するだけ、いや、それ以上の惨劇となるのだろうし。


 「俺もタカヒロ達と共に行動する!」

 「ケーニヒ!?」

 「タカヒロ、俺をお前に帯同させてくれ。邪魔はせん、これでも俺は騎士としては!」

 「あー、ケーニヒさん、それは俺からもお願いしようと思ってたんだよ。」

 「は?」

 「アンタだけじゃなく、ココロさんも、ね。」

 「ココロも?」


 その時だった。

 ココロと思われる者が家から出てきたのだ。

 その姿を見た瞬間、全員が絶句した。

 

 聞いていた容姿とは全く違っている、驚くほど美しい女性だ。

 その姿もさることながら、威圧されるほどの、何とも言えない感じを浴びせてくるのだ。

 中でも一番驚いているのはクローだった。


 「そ……そのお姿は……」

 「私は、このままケーニヒ様の守護として付いて行きます。」

 「こ、これが……ココロ……」


 「ココロさん、申し訳ないが頼むよ。ケーニヒさんには俺達と一緒に最前線に出てもらうから、その補助をさ。」

 「はい。」


 どういう事なんだ?

 ケーニヒがあの敵と、だと?


 「タカヒロ、それはどういう事なんだ!まさかケーニヒを捨て石にするつもりか!?」

 「モーゼルさん、アンタも判るだろ?今のケーニヒさんとココロさん、もう普通じゃないよ?」

 「は?」


 言われて再度ケーニヒを見ると、姿以上に何と言うか、気配が変わっている事に気づいた。

 タカヒロに近い、何か言いようのない力を持っているような……

 それに、ココロからは姫様の面影も見えるし、何よりケーニヒと同じような力を感じる……


 「ま、少なくとも俺達と行動を共にできる位には異常な存在になってしまったって事だよ。でも、だ。」

 「うむ、心配はないだろう。ケーニヒに限っては人間である事に変わりはないからな。」


 ケーニヒに限っては?

 という事はココロは……


 「という事で、だ。俺達は戦場に居る兵士ではなく、それらを操っている黒幕に対して直接襲撃をかける。」

 「それは!」

 「戦場に出ている兵については、だ。アンタ達でその動きを止めておいて欲しいんだ。特にミナルディさんとクローさんだね。」

 「とはいえ、そんな事が……」

 「可能、なのでしょうか……」

 「できるかどうか、じゃないんだ、やるしかないんだよ。というか、それが出来る人物だと俺は見立てたから、ここに集ってもらったんだ。

 で、だ。ケーニヒさん。」

 「うん?」

 「ケーニヒさんは俺達と共に黒幕の関係者すべてを叩く、その為に俺達と帯同してもらいたい。ココロさんと一緒に。」

 「いや、しかし、ココロは……」

 「大丈夫、ココロさんは敵の黒幕に飲み込まれない限り、身の危険は無いと思う、そうでしょ?」

 「はい。」

 「ココロ……」

 「ケーニヒ様、その方の言う通りです。私はもはや、先ほどまでの存在とは違います。それに……」

 「?」

 「これはフィーの想い、願いでもあります。」

 「……」


 こうして、タカヒロが中心となって作戦が練られて決まってゆく。

 それは、もはや戦略戦術の定石など無視した、しかし理に適った作戦だと納得できるものだった。


 ここまでの作戦を、たった今考えたというのは信じられない事だ。

 どの国の軍師、参謀であっても、これだけ多角的な、広大な視野で隙の無い、かつ複雑で簡素な、それでいてフォローも万全と思われる戦略戦術など立てられる者は皆無だと言えるだろう。

 もちろんルナやウリエル、ルシファーやアズライールといった者達の助言や提案もあったが、それにしても、だ。

 この男、本当に別世界の皇帝、なんだなと納得してしまう。


 「さて、じゃあ作戦は日付が変わった瞬間に実行だ。それまではここで体と気持ちを休ませようか。」

 「じゃあ、私とシャルルが食事を作りますね!」

 「俺とヒロも手伝うよ。ココロさん、厨房借りるよ!」

 「うむ、私達も英気を養うか。お前達も今は休め。中は広いので全員入っても余裕があるだろう。」

 「周囲の警戒はアタイとルシファーに任せてくれ。」

 「そうじゃな。ところで、酒は?」

 「ない!」

 

 こうして、俺達は日付が変わるのを寛ぎながら、それでいて緊張しながら待ったのだった。


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