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そんな私はヴァンパイア  作者: 松栄
第1章 勇者の航跡
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第1話 そんな私は

第1章は、前作からの引継ぎ要素が多めになってます。

若干説明が多いですが、あしからずご了承ください。

一応、前作を知らなくても大丈夫なように書いていますが、前作を読んでいただくとなお奥深さを感じられると思いますので、よろしければそちらも是非。

 街角の静かなカフェで、私は一人佇んでいる。

 妹との待ち合わせだ。


 私はあまりこういう賑やかな街には出たくないし、実際滅多に出ない。

 普段生活している場所がとにかく静かで安らぐから、余計に街の喧騒が神経に触る。

 こういう時でもなければ、こんなに人が多くてざわついた場所へは来ない。

 なぜなら。

 さっきも一人、窓の外を眺めながらお茶を飲んでいると


 「あの、すみません、お一人ですか?」


 と二人組の年若い男に声をかけられた。

 容姿はいわゆる好青年でカッコいいと言われる男の子なんだろうな。

 少し緊張気味で、しかし優しそうな表情をしているような気もするけど、そんなものは私には関係ないし、そんな出来事は直ぐに記憶から消す。

 覚えておく必要が無いから。


 とにかく人が多い場所に来ると、必ずと言って良いほどそうやって声をかけられる。

 それには理由があるんだけど、それも私には関係ないこと。

 お父様が言っていた、“ナンパ”というものだろう。

 良くも悪くも出会いのきっかけだと言っていたな。


 その男の人達には待ち合わせだと言って丁重にお引き取り頂いた。

 何故なら、私は男に興味などないから。


 いえ、興味が無い訳じゃない。

 理想的な男が存在しない、故に興味が無い、と言ったところかな。

 待ち合わせしている妹も、同じだと言っていた。


 「ディーナ、ごめん、待たせちゃった?」

 「シャルル、ちょーっと遅いんじゃない?」

 「あはは、ごめん。ここは人が多くってさ……」


 待ち合わせていた妹のシャルルが、申し訳なさそうにそう言ってやってきた。

 シャルルも同じように、道で男の人に何度か声をかけられていたようだ。


 「もうさ、鬱陶しいから顔を隠してきたよ。」

 「……んーとね、隠れてないからね?」

 「え?そう?」


 シャルルと合流したので、お店を出て駅まで歩く。

 私もシャルルに倣ってストールで顔を隠したのだった。



 ―――――



 ここラディアンス王国の王都は、この100年で劇的に大きくなり近代化が著しい。

 現国王のワブレア王は私の甥にあたる。王が小さい頃はよく遊んであげたなぁ。


 東方にあるジパングという国が推奨し手がけた鉄道というものが、大陸のあちこちに張り巡らされて、都市間の移動は飛躍的に便利になった。

 私が小さい頃はまだ馬車が主流だったから、その差は実感できる。

 その鉄道に乗って、私とシャルルはここラディアンスの首都から、生まれ故郷のイワセ温泉郷へと向かうのだ。


 イワセ温泉郷は200年前の建立から今もなお賑わいを見せている一大観光地。

 お父様が心血を注いで、私達が安心して暮らせる都市を作り上げてくれた、とお母様達は言う。

 実際にあの温泉郷は住みやすいし、心が安らぐ。


 でも、私やシャルル、その他の兄弟姉妹は歳を重ねるうちに勉学やお仕事で温泉郷から離れていく者も多い。

 そうして、離れてみて改めて実感する。

 やはり故郷は良いものなんだ、と。


 列車に揺られ故郷へ戻る理由、それは明後日が、お父様の命日だから。


 大好きだった、最愛のお父様。

 6年前に亡くなった。

 とても悲しかった。

 今も、その気持ちは引きずっている、というか、その悲しみは忘れる事は無いと思う。


 イワセ温泉郷を作り上げた人。

 いいえ、それよりも。


 200年前、この星の危機を、星に暮らす者全てを救った、本物の勇者。

 この事実を知る人は、今はもうそんなに居ない。


 純粋な人間でありながら、200年以上生きたお父様。

 でも、同じ人間のサクラお母様とローズお母様も200年以上生きていて、まだ存命というのは凄いと思う。

 ただ、話ではお父様はもっと長寿のはずだったけど、とある理由で寿命が縮んだんだって。


 12人いるお母様たちの中で純粋な人間は、サクラお母様とローズお母様、フランお母様の三人だけ。

 その三人はお父様の影響とかで長寿になっているらしい。

 200歳を超えてなお、容姿は若く、人間でいう30代後半の姿だ。


 ただ、私のお母様はそもそも寿命はもっと長いらしい。

 シャルルのお母様も同じだ。

 何故なら、私のお母様もシャルルのお母様も人間じゃない。


 私とシャルルは今160歳だ。

 でも私達の容姿は20歳で止まっている。

 それはお母様の血もあるけど、お父様の力でもあるんだとか。


 街角で必ず声をかけられる理由。

 私達の血筋は、見る者を魅了する能力があるからだ。

 その血筋は、かつて魔族、龍族と区別され人間からは恐れられていた。

 シャルルのお母様は龍族の姫だった。

 私のお母様は、魔族の吸血鬼一族なんだ。


 そして、そのお母様と勇者であるお父様の娘。

 そんな私は、ヴァンパイアだ。

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