スキルポイント
「そんな訳だからしばらくはルール変更なし。あなたの見つけたチート? って言うの、使って大丈夫よ。ただし、一つのネガティブスキルと組み合せられるのは一つのポジティブスキルだけだって。クス……残念だったわね。これはルール変更じゃなくて元々そうだったみたいよ」
上級神の所から帰ってきた女神が嬉しそうに言った。俺の疑問に答えられたのが嬉しいのか、それとも俺の思い通りにならなかったのが面白いのか、満足げな顔で腕を組み胸を張っている。
「まあ、そんな気はしました。それでも同一系統の複数のネガティブスキルを一つのポジティブスキルで打ち消せれば2,3倍多くのスキルを取れますよね……で、しばらくって、どれ位です?」
「定期更新で見直しを検討って言ってたから……あと200年くらいかしら。そんなに大きな問題じゃないみたい」
「200年!? じゃあ、転生先で一生を終えるまで余裕で持ちますね」
――スキルの仕様は時々調整されている。どれくらいの頻度で調整されているか不明。近々女神が帰ってくれば分かりそう。
→次の更新予定は200年後。
俺はそうメモに追加した。
「そうだ。追加で欲しいスキルがあるんですけど……そもそもスキルの付与に必要なスキルポイントってどうやって決めてるんですか?」
「うーん、まあ、人気と時価……? かしら……」
「へ?」
女神が腕を組んだまま少し上を向いて答えた。女神によると、原初の神々によってスキルシステムが構築され、生を受ける全てのものにスキルが与えられると共に、転生者には前世での生き方によってスキルポイントによりスキルを与え転生させるという手法が始まったとのこと。
しかし、各スキルの取得に必要なスキルポイントを決めたのは実際に世界を生きたわけではない神々であったため、スキルの有用性とスキルポイントに均衡が取れておらず、言わば「コスパが良い」一部のスキルばかりが取得されていた。
そこで神々は多様なスキルによる多様な生き方を広めるために、人気のないスキルは必要ポイントを落とし、人気のあるスキルは必要ポイントを上げることによって幅広いスキルが取得されるようにバランスを変更する手法が取り入れられたのだという。もっとも、そのタイミングはスキルの定期更新に併せて行われるらしく、次回の更新は約200年後だという。
「なるほど……有用かどうかはあまり関係がないんですね。人気のある、分かりやすく強そうなスキルはランクが高いと」
俺は気付くと口元に手をあてて考え込んでいた。他人と違うスキル運用を考えれば、ポイントが低いスキルでも相当有用なスキル構成を組めるのではないかと思ったのだ。
「クスクス。時々いるわね。不人気で必要ポイントが低いスキルをいくつも取れば上手く組み合わせられるんじゃないかって考える人が。でも、転生時に記憶を失うってことだけは忘れないでね。いくら頑張ってすごいスキルを組んでもそれを思い出すことはできないの。皆それで失敗するのよ!」
俺は女神が何か言っているのを聞き流しながら色々考えていると、ふと気付き顔を上げた。
「女神サマ、確か俺は前世で【算術】スキルを持ってたんですよね? 【算術】ってスキルの組み合わせを考える時にも影響しますか?」
「え? うん。理屈で答えが出せる問題には有効よ。20ポイントだからすぐ取れるわ。でも今言ったように、いくらすごい組み合わせを思いついたって……」
「【算術】だと20ポイントか……、じゃあそれのスキルの下位スキル、【計算】なら5ポイントで取れますか? それ下さい」
俺は、女神の話を遮ってスキルの取得を求めた。
「もちろん良いけど雑貨屋の買い物じゃないのよ? もっとこう……神格者に対する崇敬の気持ちというか、まあ、別にいいんだけどさ。あなたにスキル【計算】を与えます……【スキル付与】! 」
俺の中にスキルが入りこむ感覚があり、スキルポイントの計算やスキルの組み合わせが頭の中ですっきりと行えるようになった。まるでずっと頭の中で暗算をしていたものを紙に書いて計算できるようになったような、あるいは筆算から電子計算機の計算に変わったような、それほど劇的な変化であった。
「うん。なるほど。これなら資料を読みながら要点をまとめて、同時にスキルの組み合わせを考えることもできるな」
俺は、頭の中の資料を読み、必要な事項を頭の中で書き出しながらどんなスキルの組み合わせが有用か計算を始める。まだまだ覚えている資料が少ないながらも、スキルのランクアップまで計算に入れると相当なチートの余地があることは掴み始めていた。
「じゃあ、ちょっと書庫に篭ってきます。何か掴んだ気がするので邪魔しないで下さい。大丈夫。一週間ぐらい部屋に篭って誰とも会わずに仕事してたことあるんで、狂わない自信があります」
「ちょっとそれ、どんな修行なのよ!?」
驚く女神を置いたまま俺は書庫に向かう。
「神に向かって邪魔するなって……まあ、スキルの勉強をしてない私が悪いんだけどさ……」
女神が何かつぶやく声を聞き流しながら俺は書庫に入っていった。




