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初めてのスキル取得

「そうだ。スキルについて教わる前にもう一つ。俺が転生する世界っていうのは剣と魔法が主役の世界って考えていいですか?」


 俺はファンタジーの世界への転生をイメージしていた。


「そうね……あなたが過ごしていた第三界の、中世に魔法を足したような世界ね。科学の進歩は遅れてるわ。たまに……最近は少し増えてきたけど、第三界からあなたと違って『転移』でやってくる人には相当なスキルを与えないと生きていけない……そのまま放り出したら三日も生きられない……って言う神たちもいるわね。クス」

 

 女神の説明だと、ごく稀に界を超える人の移動、即ち転移が行われることがあるという。それらは何かの目的で神々が行うこともあるし偶発的な事故による場合もあるという。


「転移者も転生者と同じようにスキルがもらえるんですか?」


「転移者には、少しオーバーなスキルを与えることになってるわ。何しろ突然知らない世界に飛ばされちゃう訳だからね。せめてこっちの世界で大分有利に過ごせるようにしないと可哀想じゃない。転生と違って記憶も残るしね。状況にもよるけど500ポイント分くらいは与えることになるわ。ただ、それを見越して強い戦力を得るため人や魔族たちがわざと転移者を召喚するっていう……ね。まあ、転生者であるあなたには関係のないことよ」


 女神が、少し遠くを見て黙った。何か思うところがあるらしい。女神はちょいちょい話が脱線する癖があった。話好きなんだろうな。急ぐわけでもないからなるべく話を聞いてやろう。それで役立つ話が聞けるかもしれなと思った。


 今の話で俺が気になった情報はスキルがないと転移者が生きていくのは厳しい世界という部分だった。転生者の場合も同じなのだろうか?


「転生者も、自分のスキルを一切活かせないままだと生き残れない世界ですか?」


「大丈夫よ。たまに有効なスキルを全く取れない転生者もいるし、一つだけ大きなスキルを取ったのに、それに気付かず一生を過ごす転生者もいるわ。転生者の場合、生まれたときからその世界で鍛えられるわけだから大丈夫よ。自然にスキルの一つや二つ身に付くわ」


「なるほど。その世界に慣れないまま突然放り出されると生きていけないってことですね」


「あたしは生きていけると思うんだけどね。せめて転移先で充実した人生を過ごさせようっていう配慮の方が大きいいんじゃないかしら」


 再び、何を思ったか少し遠くを見ながら女神が言った。


「転生の意味は大体分かりました。前世でイメージしていた異世界転生そのものですね」


 これなら前世のファンタジーゲームや物語を参考にスキル構成を考えることもできそうだと思った。


「で、やっぱり俺の場合は100ポイントしか貰えなくて大したスキルは取れないってことですよね? 上手く活かせれば一生困らないスキルを一つか、ちょっと便利なスキルをいくつか……それのどっちかって事ですよね?」


「えーと、だから……普通だってば。別に他の人より悪いわけじゃないのよ? それにスキルを選べるってかなり有利だと思うのよ」


 俺はただ現状を確認しただけなのだが、女神は自分が責められているように感じ言い訳をするように答えた。確かに一方的にスキルを与えられるよりも来世に降り立った自分がどのような振る舞いをして、どのようなスキルならその存在に気付くか、それを見通してスキルを選ぶだけでも相当有利である。


 でも、もっとじっくりとスキルのことを調べたら劇的に有利になる組み合わせが見つかるかもしれないし、もしかしたら前世のゲームみたいにチートじみた組み合わせを見つけて付け込めるかも知れない。


「……俺、ゆっくりスキルのことを教わってから選ぶことにします。さっきの話だと相当長くいても構わないとか?」


「ええ。そうよ。スキルを選ぶ、その目的である限りどれだけいても構わないわ。それにここは精神だけが活動する世界。空腹も餓死も存在しない。睡眠さえ必要ないわ……まあ、時々何か口にして休憩はしたほうがいいけどね。クス」


「え? 結局疲れるんですか? 疲れないんですか?」


「さあ。あたしなら疲れるだろうけど、あなたは大丈夫かも。試してみたら? この空間では死ぬことはないから……クス」


 相変わらず人を喰ったような女神の態度にも、俺はすっかり慣れつつあった。


「……一つ、欲しいスキルがあるんですが、記憶力が良くなるスキルってありますか? 一度見たり聞いたり思いついたりしたことを絶対に忘れないようなスキル」


「ふふん。もちろんあるわよ」


 女神がやっと神らしいことをできると満面の笑みで答える。


「【物覚え】スキルなら5ポイントで取れるわよ。取る?」


「そのスキルの効果を、正確に教えてもらえますか?」


「え!? えーと、ちょっと待ってね……」


 女神の威厳は直ちに無くなり、手元に『事典』を取り出した。


「えーと……」


―――――――――――――――

――【物覚え】任意の情報または出来事を覚えやすくなる。このスキルにより覚えた事柄は忘却率が十分の一となる。このスキルで他のスキルの影響による忘却を妨げることはできない。

―――――――――――――――


「……こう書いてあるわね」


「なるほど。いいスキルですね。それ、欲しいです」


 俺はスキルの説明が前世でのゲームで良く聞くスキルの説明と似ていることも嬉しく思った。これなら理解をするのはそれほど難しくないかもしれない。


「よろしい。あなたにスキル、【物覚え】を与えます……【スキル付与】!」


 女神が手を俺に向け、スキルを発動すると何かが額のあたりから入ってきた感覚を覚えた。そして、頭に巨大なスペースができ、今なら何でも覚えられると感じた。


「これは、すごい効果ですね。では、スキルについて色々と聞きたいので教えてください」










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