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スキル構築

初めての投稿です。読んでいただけると嬉しいです。

「ちょっとー! お暇でしょー? スキルポイントが全然足りない人が来ちゃったのよー!」


 女神サマが書庫のドアをガンガンと叩きながら叫ぶので、俺のスキルチート研究はまた中断された。


「何です? 『足りる足りない』じゃなくて、持ってるスキルポイントで組むしかないでしょうに」


 俺がドアを開けるといつもの通り表情豊かな女神サマが白い服のまま立っていた。


「違うの。前世で何もスキルを持たずに生まれたみたい。それで生きる術がないまま若くして死んだから転生時のスキルポイントが無いのよ!」


 別に違わない思う。今持っているスキルポイントで組むしかない。けど……


「それなら【転生神の慈悲】でスキルかポイントを与えれば良いんじゃないすか?」


「ダメなのよー! 私、これ以上使ったら神様に本気で怒られちゃう……」


―――――――――――――――

【転生神の慈悲】任意の対象者に任意のスキル又はスキルポイントを付与する。このスキルによってスキルを与えられた対象者のスキルポイントは変化しない。このスキルは神格者以外の者は所有できない。

―――――――――――――――


 自分も神様じゃないのかなといつも思うけど、女神サマの立場はあまり高くないらしいから仕方がない。それにしても、何か違和感のある話だな……いくら若くて死んだといっても何もスキルを得ずに一生を過ごすなんて……村人として過ごすだけでも何かしら……あ!


「女神サマ! その人の前世を確認する時に、スキル【転生神の詮索】を使いましたよね? それで、何もスキルが無かったからスキルの清算手続きはしていない。そうですね?」


―――――――――――――――

――【転生神の詮索】任意の対象者の前世のスキル及び前世の評価ランク並びに前世で得られたスキルポイントを知ることができる。このスキルは神格者以外の者は所有できない。

―――――――――――――――


 俺には一つの解答が思い浮かんでいた。そのために問い詰めるような口調で女神サマに詰め寄ってしまい、女神サマは怯みながら言い訳じみた口調になる。


「そ、そうよ。スキルが無いんだから清算もできないでしょ?」


「ちょっと試しに【スキル無効化】を使ってみてください」


「……? スキルが無いのに!?」


 女神サマが混乱した顔になる。


―――――――――――――――

――【スキル無効化】任意の対象者の任意のスキルを一つ無効化する。無効化されたスキルは効果を失い、発動させることができず、スキルを有効化する操作を除き他のスキルの対象にもならない。神格者が神格者以外の者を対象とする場合を除きこのスキルの発動には対象者の同意を必要とする。このスキルによって第一界における神格者のスキルを無効化することはできない。

―――――――――――――――


「その人、スキル【隠遁】を発動している可能性があります。【転生神の詮索】に抗えるスキルって結構レアなんですよ。ランクAまでのスキルだと【隠遁】だけのはずです。」


―――――――――――――――

――【隠遁】発動してからその場を動くまでの間、まだ認知されていない他者から認知されず、神格者がこのスキルを無効化し、またはキャンセルする操作を除いて他のスキルの標的にもならない。

―――――――――――――――


「え!? 神格者である私のスキルを妨害したってこと?」


「無意識だと思いますよ? 死んで、気付いたら知らない場所で知らない人からスキルをかけられようとしたら、自然に防御しようとするでしょ。いきなり手を振り上げられたら無意識に両手で身体を庇うみたいに。……ただ、普通はそんなことで女神サマのスキルを防ぐことはできないってだけの話です」


「それと、たぶん仕様か実装のミスだと思うんですけど……【隠遁】の後段の効果、『……他のスキルの標的にもならない』っていう部分が、既に認知されてる相手にも効いちゃうんですよ。確かに文章からはどちらとも読みとれるので明らかな間違いではないんですけど……」


 やや不満そうな女神サマだったけど、意味が分かると納得した様子だった。


「うーん、もしあなたの言うとおり【隠遁】を持ってるとしたら、スキルを清算した後に返してあげたほうがいいのかしら? 前世もそのスキルで生き抜いたってことでしょ?」


「どうでしょう? 本人があまり意識しないで取得した可能性もありますよ?」


「ランクAのスキルを!?」


「ひっそりと息を潜めてやり過ごすタイプの生き方をした結果、取得した可能性もあります。ランクCの【昼行灯】からランクBの【陽炎】を経てランクアップで取得できますしね」


―――――――――――――――

――【昼行灯】このスキルの所有者は、複数の者と同一空間にいる場合に他の者よりも存在感が弱くなる。


――【陽炎】発動時、他者から認知されにくくなり、【スキル鑑定】等の詮索系スキルの標的にならない。神格者が発動するスキルに対しては効果を生じない。

―――――――――――――――


 俺はいつものように女神サマにアドバイスをする。本人が望むなら【隠遁】を付与して転生させるのもよし。本人がスキルを意識していなければ、【隠遁】を清算して得られるスキルポイントで生活スキルや生存系スキルをいくつか付与するのもよし。一般の村人として生きるならばそのほうが無理がないのではないかと。


「じゃあそうさせてもらうわ。……クスクス、転生中に神格者の発動スキルに抗うなんて面白いこともあるものね。ありがとう」


 女神サマはそういうと自分の部屋に戻っていった。


 さて……スキルチートの研究を再開するか。


 それにしてもこんな毎日を過ごすなんて前世では想像もしなかったな……


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