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7:初期限定特典


「凄い人の量で驚いたでしょ?私もこれにはちょっと困ったよ」

「そうですね。テーマパークに来たみたいな気がします」

「そーだねぇ。まだ朝なのにねー」 

 

「それがアメリカの方で大きなトラブルがあったみたいでね、海外サーバーからの人の流れが一時的に活発化してるみたいなんだよね。詳しい話はよく知らないけど、アメリカサーバーの方で『アサイラム』って奴らが暴れたらしくて」

「アサイラム?ってなぁに?」


 移動中、テルちゃんが話を振ってくれます。アサイラム、聞き覚えのある言葉ですね。


「日本を拠点にしてるはずPKプレイヤーの一団、らしいね。リーダー格がおそらく男って事だけは分かってるけど、構成人数や活動拠点などは一切分かってない。それがアメリカに出没したからって今一部じゃ昨日からお大騒ぎ」


「PK、は分かるかも。プレイヤーの人をー、襲う人?だよね?」


「そう。性根の曲がったクソ野郎。ゲーム内で同じプレイヤー攻撃して何が楽しいんだか。対人ゲーいけっての」


 なんだかテルちゃんの機嫌が悪そうです。これは恐らく被害にあったことがあるのかもしれない。PK………プレイヤー、キラー。確かにこの世界はゲームだけど、同じ人に武器を向けるなんて。少し、怖い。

 ん?けれど、テルちゃんの表情的に何か単純な事じゃないような?


「まぁ、ただ、このアサイラムは知名度に反して実際に表舞台に出てきた数は片手の指の数で足りるんだよね。他のPKプレイヤーみたいに、野盗みたいにいきなり襲撃かけてくるって感じとはまた違うっていうか」


「へ~?」


 トマちゃんは返事こそしているますけど、この顔は絶対によくわかってない時の顔です。


「いきなり現れては普通のプレイヤーじゃあり得ない被害を毎回出すんだよ。こっちが剣と魔法の世界で戦ってるのに、あっちは普通に銃とか使ってくるし、攻撃の規模も核弾頭みたいな感じで、イマイチ本当に同じプレイヤーなのかって疑わしいくらい。たった10人にもみたいない人数で15万人のプレイヤーを皆殺しにしたんだよ?リーダーを名乗る人物がプレイヤーであると名乗ったりスレでスクショを上げなかったらいまだにNPC説の方が根強かったんじゃないかな」


 銃。銃?ALLFOに?

 義兄さんはアサイラムは悪い奴らの集まりと言っていたのでプレイヤーの集まりだとは思っていましたけど、何かスケールが違いました。


「なんか、チートアイテムって悪名高い初期限定特典って絡繰りがあるらしいけどね」


「あ、それはわたしも知ってるかもー」


 聞くところによると、ALLFOはサービス開始当初、初期ロットの内1万人のプレイヤーだけに『初期限定特典』なる物をばら撒いたそうです。それを聞いて私は、私が義兄さんの紹介特典で貰ったアイテムのセットみたいなものかと思ったのですが、どうやら全然違うみたいです。


「それがね、なんかPKを推奨するような性能をしていて、物によっては雷を連射したり、種から大きな斧を取り出したりとか、光る戦車?みたいな物を操作できたりとか、なんかもう完全に別のゲームみたいな感じになるみたいでね。その代わりに最初のスポーン地点が『街』の外で、しかも『街』の中に基本的に入れないんだって。だからギルドの設備とか基本的な機能も一切使えないくて、スーパーハードモードなんて言っている人もいたかな」


「それは…………ゲームとして成り立つのですか?」


 特典、なのでしょうか?もはやゲームとして破綻しているような?私もゲームは全く詳しくないですけど、食べ物を買うにも装備を買うにも『街』の中に入る必要があるはずでして………リアルに置き換えるなら、未開地では暮らしていいけど人里には一切いく事が許されない状態という事ですよね。それでは幾ら強くても限界があるような?


「当然当選した人も殆どスルーしたりリタイアしたっぽいよ。と言っても、スルーしたりリタイアした代わりに相応の代替特典は貰えたみたいだけどね。なんでそんな初期限定特典なんてよくわからないチートを用意したのかって今ではALLFOの黒歴史扱いだよ。問題は、今有名なPKプレイヤーな一団、アサイラムだったり、アメリカの『DD』ってとことか、中国の一団もそうだけど、有名どころの中核にいるのがその普通は扱い切れない初期限定特典を使いこなしているプレイヤー達らしいんだよね」


 なんだか、少し不思議な話です。

 ALLFOをするにあたり、私も一応前評判などには目を通しました。 

 曰く、王道ファンタジー。良いいい意味でリアルな所も多く、やりがいがある。思いついたことは大体チャレンジできる。そんな書き込みが多く寄せられていました。初の第7世代対応のゲームと言う事も有って、発売元のGoldenPear社もかなり気を使ったともありました。

 けれどその初期限定特典はまるでPKを推進しているようです。PKと言えば、テルちゃんの反応からも分かるように不和の元です。どうしてそんな序盤の特典に不和の種をALLFOはばら撒くような真似をしたのでしょう。


「ま、結局真相はよくわかんないんだけどね。一番有名なのはさっき言ったDDってアメリカのPKプレイヤーの一団に居るGingerって人かな。Ginger・A・Armstrong、聞いた事ない?」


「えっと、確か、VRスポーツの、チャンバラの選手だったような?次期金メダリスト候補なんて記事を読んだことがある気がします」


「そう、それ。その人が初期限定特典を持ってて、『DD』ってとこに所属しているのは本人が公言しているのもあってかなり有名な話だよ」  

  

 とある事情で、私もVRチャンバラについては少し関心があるので記事を読んだ事がありました。

 VRスポーツは広い市民権を得ていてオリンピックも開催されるほどですが、チャンバラは見栄えが良い事もあって花形競技の1つですね。今年オリンピック開催という事、それと女子の中でも圧倒的な強さを誇る事から、Gingerという選手は色々注目されている選手の一人と言えるでしょう。


 そんな人が、初期限定特典の持ち主。鬼に金棒、でしょう。スポーツの強さがどれほどゲームに反映されるかはわかりませんが、VRスポーツと言っても殆どのスポーツ形式型はリアルのフィジカルが参照される為に運動神経も抜群と聞きます。というより、私のそこそこに身近に実例がいましたのでどれほど優れた運動神経をしているかは知っています。 

 モーション補正もあるのでリアルの運動神経だけが強さに直結するわけではないとは聞きます。ちょっと運動が得意な程度は殆ど差が付かないそうですね。けれど、それはある意味、極端に得意ならハッキリと差が出るという事を暗に示しているとも言えます。


 ランダムに配布された1万のチートアイテム。そのうちの一つが偶然にそんな有名人に配られる。一体どんな確率なのでしょうか?

 …………深く考える必要がない事を考えても仕方ないですね。


「でも、わたしたちには関係ない話だよねー?アサイラムって人たちはこわいけど、近寄んなきゃだいじょぶだよ、きっと」


「そうですね、トマちゃんの言う通りです」


 言われてみればそうです。君子危うき近寄らず。そんな有名な人たちなら、きっと初心者である私達と縁遠い人たちです。考えても仕方ない事ですね。


「そうだね、ほぼ関わる事は無いと思うよ。あるとしても、リタイア勢の噂を聞くぐらいじゃないかな?『生産組組合』って日本のトップ組織の中でもアクセサリー関係で有名なDevilMaskってプレイヤーは初期特の当選者だったって知っている人の中では有名な話かな?けど、アクセサリー作りの腕前と追加特典は全然関係ないらしいけどね」   

   

 でびる、ますく。デビルマスク?あれ?何故かとても聞き覚えが。というより本当に先ほど聞いたような。けど、日本人のプレイヤーネームはひらがな、カタカナ、ローマ字、アルファベットと同じ音と意味でも4つのパターンを作れます。デビルマスクと言ってもでびるますく、デビルマスク、DEBIRUMASUKU………いえ、私みたいに全部カタカナみたいなこだわりを持たずに混合させればデビルマスクという単語だけでも膨大なパターンを作る事が出来るはずです。それに生産組組合にも多くのプレイヤーが所属しているらしいです。だから―――――――


「まあ本人からしたら初期特を参考に最初付けた名前で今は後悔してるらしいね。生産組組合ってあのデッカイ組織の中でも幹部の1人としても有名かな?」


 あ……これは、恐らく…………。そう言えばあの人もアクセサリー作りが得意と言っていたような。まさか、元とは言え、身近に初期限定特典持ちがいるなんて………。なんだか今日は不思議な事ばかりが起きる様な気がします。


 私はなんだかあの3人の方に迷惑をかける様な気がして、ついぞ2人に先ほどの話をすることができないまま目的地に辿り着いてしまいました。

  


 


 

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