16:ギルド
時間にして5分程度でしょうか。
いよいよ実感できるレベルで身体が少し重く感じてきたところでギルド前広場に到着し、バスを降りることになりました。
「わー…………凄い大きいねぇ」
「とっても、立派です………」
私はゲームは詳しいとは口が裂けても言えませんが、このような大きな施設だとは。もっと大きめの公民館程度を想像していたのですが、実際に私達が見た建物はもはや西洋ファンタジーの空気にはそぐわない大きな建物。
サイズにして、大学くらいの規模はあるような?建物も幾つかありますし、案内看板を見ないと何が何だか。と思いましたが、木造の大きな建物が何棟も建てられていても大きなイラスト付きの看板があるのでそれを見ればそれがどんな施設なのかも予想しやすいです。
「チュートリアルガイドに従ってみて回ってみようか?」
「そうですね。そうしましょう。えっと、生産組組合製作のガイドですよね?」
「それそれ」
『ギルド』とは言いますが、そもそもギルドとは。
簡単に言えば、職業組合の建物ですね。職業ごとに大まかな建物があり、そこに依頼が寄せられて、その依頼をこなせそうなプレイヤーがクエストを受注。無事、クエストをクリアする事が出来れば、クエスト受注時に事前に提示されていた報酬をプレイヤーは受け取ることができます。
これは一番の基本的な機能で、他にもアイテムの鑑定をしてくれたり、関連商品を購入する事が出来たり、講習を受ける事なども出来るようです。
戦闘をするプレイヤーでも、生産をするプレイヤーでもまず訪れるのが『総合ギルド』。これが一般的なギルドの全てが詰まっているギルドですね。困ったことがあればまずここに行きなさい、とも言われるほどのなんでも施設です。リアルで言えば役所の様な物のようです。
他の『街』にもこの『総合ギルド』は『教会』とセットで必ず存在するようになっているらしいですね。
それ以外のギルドですと、鑑定を専門にしている『鑑定ギルド』、錬金術を専門とする『錬金術ギルド』、鍛冶を専門とする『鍛冶ギルド』など生産に纏わる部門は細分化されているみたいですね。逆に戦闘系は特に大きく別れることはないようで、魔法を学問的に研究する『魔法ギルド』と調教師の使い魔の登録、管理をする『調教師ギルド』があるくらいみたいです。
今のところ、生産をメインにするつもりのない私達からすると『総合ギルド』くらいでしょうか、お世話になるのは。
一番最初に向かうのは『総合ギルド』。他の建物の中でも明らかに大きく、体育館くらいのサイズの建物は一目でわかります。中に入れば天井も高く、多くの人が居ました。
「クエストを受注したかったら、カウンターで職員さんから聞くのが正しいんだけど、今はこのホールの中に入ればクエストを確認できるらしいね。というか、出入り口の床のモノリスみたいなものを踏めばいいんだって。だから走り幅跳びして意図的に飛び越えない限りは大丈夫なんだって」
「妙に、近代的ですね………」
確かに今この場にいる人数を人力で捌こうとしたら相当の時間がかかる事になります。このホールに到着したらUIの中にクエスト確認の画面が出るのでそれをタップしてクエストを閲覧し、そして…………って、クエストが増えたり減ったりしてますね。他の人が受注すると消えるのでしょう。クエストの傾向別にもリストができるみたいでかなり便利です。
「ただ、このホールの中にあるいくつかの『クエストボード』にはメニュー画面にはない特別なクエストが貼られている事もあるんだってー」
「なるほど。そういうこともあるんですね」
ここからは人が多くて見えないですけど、奥にいるとされているNPC職員さん達のいる場所は基本的にインフォメーションカウンターなのでしょう。受けたクエストの取り消し、あるいは問い合わせなど。これはギルドの職員さんに聞かないとダメだそうです。
受注が簡単でも取り消しが難しいのは、他の人に取られないようにとのべつ幕無し受注するのを控えさせる為でしょうね。
「ついでだし、なにか受注してみる~?」
「うーん、クエストによりけりだと思います」
「初心者用のヤツみてみよ。今ならうけやすいと思うし」
トマちゃんに誘われて私達はクエスト一覧を見てみます。
えっと、ソートで……推奨難度を低い順にして…………これですね。このクエストは発行者が『ギルド』である事が多く、クエストの納期もかなり長く初心者向けに作られている様に見えます。これなら受けてみてもいいかもしれませんね。
「『飛び足ネズミ』3体の討伐、とかどうでしょう?」
「飛び足?ジャンプするのかな?」
「恐らく………。難易度もかなり低いですよ。納期もかなり長いですし」
「じゃあやってみよっかー。共同受注?ってやればいいんだよね」
「そうだと思います」
まだトマちゃんとはパーティーを組んでいませんが、一つのクエストを一緒にチャレンジすることはできるみたいですね。
「そういえばね、クエストって達成率とか評価の良し悪しでギルドランクみたいなのが付けられてて、ちゃんと真面目にクエストをこなしてるといいクエストが表示されやすくなるみたいだよー。逆にクエストを沢山失敗すると簡単なものしか受注できなくなっちゃうんだって」
「それは、説明でも少し聞いた気がします。あと、『性質』によっても受注できるクエストが変わるとも聞いたことがありますね」
ALLFOには命を表すHPや、筋力を表すパラメータがあります。ステータスの中で閲覧できるのですが、その中の項目に『性質』というものがあります。これは極善・善人・中立(白/青/無/橙/赤)・悪人・極悪の9つの段階に分かれていて、スタートの時点では中立の無色になっています。ここから良い事をすれば『善』により、悪いことをすれば『悪』に寄っていくようです。そしてこの性質によって表示されるクエストとされなくなるクエストがあるようです。基本的に善よりの人が受注できるクエストは利率が良いようですね。
なお、極悪まで到達してしまうと『街』から追放されてしまうそうです。なかなかなる事はないと聞きますけどね。
そういえば、ここではマッチングも出来ると聞いた事があります。一人でこなしたり、私達の様に二人だけでやるには難しいクエストの場合は受注後にヘルプを出すと他の人たちも受注が出来るようになるみたいですね。
UIを軽く触ってみた感じ、なかなか機能が多そうなので家に帰ってから改めて調べた方が良さそうです。
私達は人の流れに沿ってもう少し中を見てみます。
「これが納品ボックスだねぇ」
納品ボックスは、依頼内容が物の納品の際に使用される物のようですね。例えば『ネズミの尻尾3つを納品』みたいな依頼だったら、このボックスに尻尾を入れて回収口に投入すればクエストクリアになるそうです。納品ボックスはこのホールの外へ持ち出すことはできない事が赤い大きな字で書かれています。盗難防止の為でしょうか?
「他にも色々ありそうだけど、混んでるねー」
「用事がある時でいいのではないでしょうか?」
「それもそうだねー」
総合ギルドを後にした後は、有名どころの生産系ギルドを回ってみました。大抵のギルドにはお店が併設されていて色々な物が買えるそうです。特に並んでいたのは鑑定ギルドですね。あそこはショップというよりは鑑定カウンターなので時間がかかるのでしょう。見ていると個人単位での鑑定ではなく代表者が纏めて依頼しているみたいですね。
これはたしかに時間がかかりそうです。
さて次はどの建物を。そうトマちゃんと考えているとメールが届きました。これはリアル経由ですね。
先輩からのメールです。




