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15:バス


 お茶を頂いた後、私達はおじさんに礼を言い探検を再開しました。

 

 おじさんに言われた手前、もう細い道を一生懸命探すこともないので気楽な探検ですが、細い道を探さなくとも色々な道があって目移りします。

  

「アレもおいしそうだね~」

「そうですよね。味の気になる物が色々とあります」


 先ほど食べたおやつもリアルにはないものでしたが、他にもリアルにはなさそうなものが色々と売られています。と思いきや、リアルでも普通にありそうなポップコーンやチュロスなども売られています。

 ALLFOは生産要素がかなり難しい分、やろうと思ったことは大体できる、と義兄さんは言っていましたが、作ろうと思えば本当に何でも作れるみたいですね。


「生産組組合運営、乗合バス出まーす!乗合バス出まーす!そろそろ出発ですよーー!まだ掴まり乗りならできまーす!ギルド行きバス、出発しますよー!」


 はぐれないように私がトマちゃんの服の袖を掴んであてどなく歩いていると、カランカランとベルの音と共に男の人がメガホンの様な物で周囲に叫んでいます。既に大分人が乗っている車に人が次々と乗り込んで、一部は車の上に乗ろうとしています。

 なんだか、こう、昔の写真で見たインドの満員電車ほどではないですけど、中は満杯で車体の上にも人が乗り、更にバスの外に取り付けられたバーに掴まって人が乗っています。アレは動くのでしょうか?車体に繋がれているのは大きな猪が2匹。どう見ても無理なような…………。


「乗ってみる?」

「え?乗りますか?」

「面白そうじゃない?」


 立ち乗り……厳密にはバーと下の僅かな“へり”を使った掴まり立ちですね。

 落ちたら危ないですし現実だったら絶対に許されない乗り方です。


「ゲームなんだから落ちても痛くないしさー、疲れないし、やってみない?」 

「そう、ですね」


 VR空間では『疲労』を感じることはありません。

 ただ、スタミナの概念はあります。動けば動くほど、空腹値が減れば減るほど、身体に鉛の塊を巻き付けられていく様に重く感じるそうです。最初は僅かな差ですが、放置すれば加速度的に身体が重くなっていき身体が思う様に動かなっていく。重度の疲労なら触覚などにも影響が出始めて上手く物が掴めなくなったりする。そうして擬似的に身体の制御に制限をかける事で疲労感を錯覚させるそうです。


「すみませーん2人乗れそうですかー?」

「乗れますよー、って初心者さんですか?」


「は、はい」 

「そーですけど?」


 あれ?これはちょっとダメなのでしょうか?


「生産組組合って色々と初心者支援してまして、ランク5までなら定価の8割引きで乗れるんですよ。一応ランクとか最低限の情報を事前に提示して頂きますけどね。ここからだとギルドまで1000MONですけど、初心者なら200MONで行けますよ」


「8,8割?」

「おー、すごーい」


 良かったです。初心者はダメとか何かしら暗黙のルールがあるのかと思いましたが、そうではなかったようです。


「提示方法わかります?名前とランクだけ外部に表示する方法がありまして。まぁAIに頼めば自動でやってくれるんですけどね」 


 そう言われてAIに頼んでみると、本当に表示されました。


「はい、確認OKです。では支払いお願いしますねー」


 画面がポップし、支払い画面でYESを押すと卵売りの女の子に支払った時のようにジャラララという金属音と共にMONが減りました。


「では定員超えてますし出発しますねー。ちゃんと掴まっててくださーいよーー。はいどいてどいてー、出発しますよー」   

  

 男の人は持っていたベルをインベントリにしまい、別の大きなベルを取り出しました。

 私達は慌てながらバーに掴まります。窓際に座っていた人と目が合って少し気まずい…………高校生くらいでしょうか。

 

 私達がバーに掴まったのを確認すると、男の人は運転席の助手席に乗りベルを大きく鳴らし、運転席に座っていたお爺さんが鞭を鳴らします。するとゆっくりと猪が歩き出しました。猪にもベルが沢山ついておりとても目立ちます。けどこの人ごみの中、事故を防ぐために周囲に知らせるにはこれぐらいしないとダメなのでしょう。

 運転席のおじいさんは制服のようなものを着ており、NPCのアイコンが出ています。

  

「おー、歩くより断然速いねー」

「結構パワフルに進んでいきますね」


 人ごみの中、スクールバスより一回りくらい小さくても十分サイズのあるこの車が通れるのか、むしろ徒歩より時間がかかるように思えましたが、助手席のプレイヤーさんは「どかないと轢きますよー」とトンでもない事を言いながらベルを鳴らし続けているせいか、皆なんだかんだ避けていきます。ここでは結構珍しくない光景なのかもしれませんね。

 朝見なかったのは、早朝過ぎて運行してなかったのかもしれません。


 あとは、NPCのおじいさんもバシンバシン鞭を叩くから皆も避けるのかもしれません。

 プレイヤーだけでなく、NPCも関わっているからみんなも素直に退くのでしょうか?

 義兄さんは「MMOのプレイヤーの大抵は自分を主人公と思い込んでいるMOBでろくなことはしないしゲームの世界だと気が大きくなってリアルじゃ滅多に見ない様な言い争いや殴り合いの様なトラブルが日常の風景になるぞ」と言っていましたが………これは、義兄さんのMMO観なのか、それとも…………少なくとも、義兄さんの言うよりかは平和な気がします。


「これどれくらいのスピードなんだろうねー」

「時速15㎞は出てないと思いますよ」


 リアルなら、数分掴まっているだけでも手が疲れてきそうなのに、今の所疲れはありません。ほんの少し、言われてみれば肩が少し重くなってきたような?まだ戦闘も一度もしてないのでパラメータも全く成長してないのですが、御者のプレイヤーさんもなにも言いませんでしたし、大丈夫だと思いたいですね。




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