紅色真珠
夜明けの浜に、紅色の真珠が落ちていたら
それは沖で人魚が嘆いた証だと
添い寝の祖母が言いました
白い真珠は人魚の涙
紅色真珠は絶望した人魚が流した、慟哭の証
波に洗われ、
悲しみの紅は珊瑚の砂浜で溶けていく
だから触れてはいけないよ
人に触れられた紅の真珠は
人の世界のものとなる
溶けない色に、人魚は絶望を忘れられず
沖でいつまでも泣き続ける
だから
夜明けの浜で紅色真珠を見つけたら
波と一緒に扇の貝ですくいあげ
洞窟の奥に隠しなさい
そして引き潮の夜に取り出して
そっと波に返しなさい
花を撒いて送りなさい
真珠の紅は夜の海に引き込まれ
夜光虫の光で色褪せる
真珠は海の底で宝となる
惜しむでないよ
惜しむでない
それはいつか別の形で返ってくる
幸せな人魚の住む海は、喜びの多い海となる
お前のために
いつかお前の愛する者のために
夜明けの浜で、紅色真珠を見つけたら
触れずに海へ還しておやり……