これからのこと
「それで・・・・・・お前は一体誰なんだよ?」
俺は部屋に備え付けられた簡易風呂で体を洗っているそれに聞いた。ちなみに俺は未だに全裸で体を吐しゃ物で汚して正座している。
「私?私はスライムっ。ごしゅじんさまが召喚したスライムです」
扉を隔てた洗い場からエリザベスのものとは思えないくらい素直で能天気な声が返ってきた。誰だよコイツは・・・・・・
「エリザベスはどうなったんだよ?」
「あら、ごしゅじんさまはこっちの口調で話した方がしっくりくるのかしら?」
今までのお気楽さが消えエリザベス本人の口調を真似してスライムが答えた。
「ひえっ・・・・・・」
俺はその声音に心底ビビってしまう。
「あははっ。大丈夫だよ、ごしゅじんさま。あいつ(エリザベス)もう死んだから」
「それは本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ。エリザベスは私が脳を溶かして消滅させましたっ」
「だからそれ本当に大丈夫なのかよォォォ」
「うんっ。さっきの聞いたでしょう。私エリザベスの脳を食べてそれに擬態してるからエリザベス本人の知ってることは全部知ってるんだ~。だからなりすましも楽勝だよ」
「つまりエリザベスが生きてるみたいに振る舞えるってことか」
「そういうこと」
ちょっと安心してきた。脱いだ洋服着ようかな。
「はい上がったよ~。次はごしゅじんさまの番」
「・・・・・・ああ」
いきなり扉が開いてエリザベスの裸体が俺の目の前に飛び込んできた。最初はエリザベスを殺してしまった後悔でそれどころではなかったから意識しなかったがこの女、体は百点満点である。ビンビンになった。
「あ、ごしゅじんさまコーフンしてる~」
「それはそう」
「でもえっちなことはダメだよ。もし子供ができたら私アードラースヘルム家から勘当されちゃうかもだから」
入学早々男爵の子を孕まされる娘、しかも相手は生活魔法の使い手。公爵家のプライドが傷つかないはずがなく・・・・・・
ビンビンが一瞬にしてシオシオになる。
「あははっ。小さくなっちゃった。おもしろ~い」
おもしろくないわい!思い通りにできる美少女がいるのにおあずけなんて拷問じゃい!
「ほらごしゅじんさま、こっち来て。体洗ってあげるから」
俺はエリザベスに手を握られて風呂場に入らされた。浴槽にはお湯の代わりにスライムがいる。今の時代このような『スライム風呂』は広く普及している。お湯や石鹸を用意するコストよりもスライムを巻物で呼び出した方が安く済むからだ。この風呂場にもスライム召喚の魔法が封じられた巻物が棚に積まれている。
「は~い。まずはこのスライムで体をきれいにしてから浴槽に入りましょうね~」
エリザベスは手のひらサイズのスライムをいつの間にか召喚して俺の体をこすって洗ってくれた。豊満な裸体にまたしてもビンビンになる。
「も~ダメだってば、ごしゅじんさま。私だってごしゅじんさまとの子供いっぱい作りたいんだけど・・・・・・」
「え!!!いいの!」
「うん。私はごしゅじんさまの子供ほしいな。でもね・・・・・・適切な時期、適切な手順を踏まないと生まれた子供ごとごしゅじんさまがパパに殺されちゃうから。それにね今後のことも決めないと」
「どうやってお前と結婚するかって話か?」
「気が早いな~まあそれもあるけど一番はここでの生活のことよ。エリザベスはセントアーレスにおいて女王的な存在よ。なんてたってアードラースヘルム家はここに毎年多額の寄付をしてるからね」
だからベッカー先生もエリザベスに強く出られなかったのか。
「そんな彼女を今ごしゅじんさまは思い通りに操れるの」
「つまり今の“召使い”状態から主従を逆転させることもできるってことか」
「そういうこと」
どうするべきか俺は考えた。エリザベスを従える。悪くない。しかしこの女は異常なくらい人を痛めつけるのが好きな女。いきなり俺をご主人様呼ばわりしたら絶対に怪しまれる。最悪エリザベスが頭スライムなのがばれるかも。
「結局派手な事はできない。今までの通り過ごすのが一番ってことなのかな」
「それがいいかも」
「魔力供給はどうなる。今はまだいいが俺の魔力が切れたらお前は消えちゃうのか?」
「それについては大丈夫。エリザベス自身の魔力を使えばいいから。でも念のため魔力経路は維持しておいて。その方が私がエリザベスの氷魔法バンバン使えるから」
「分かった。最小限の魔力をお前にできる限り注ぐよ」
「うん、ありがと。じゃあ体きれいになったからスライムに入ろうか」
「ああ」
そう言って俺はスライムに体を浸した。スライムは熱すぎず寒すぎずで心地がいい。最初に調整しておけば温度が変化しないのも『スライム風呂』が普及した一つの要因だ。
「それじゃあ確認するけどエリザベスとごしゅじんさまは今まで通りの主従関係でいいわけね」
「それでいいぞ。だがくれぐれも加減してくれよ」
「わかってる、わかってる」
元のエリザベスとは比べ物にならない能天気っぷりに少し心配になった。
「なんかエリザベスっぽいこと言ってくれよ」
「ふんっ!あんたが風呂場に入る前も脅かしてあげたじゃない。まったく三流貴族
は!一回の説明で理解しなさいよ」
「ひえっ・・・・・・」
その声音はやはりエリザベスそのものでさっきの能天気さは微塵も存在しなかった。
ビンビンはシナシナになる。
「どんだけあたしのこと怖いのよ。なんだかへこむわ~」
シナシナを見ながらエリザベスは肩を落とした。
「ごしゅじんさまこそあたしを嫌いにならないでね」
「わ、分かってる」
「本当~?じゃあキスして」
「え?」
いきなりの要求に俺は驚いた。
「ファーストキスはごしゅじんさまにあげちゃう。もらって、もらって~」
美少女にキスを迫られる。うむ悪くない。
「いいぞ・・・ンむっ」
「ぷはっ・・・ごめんね、ごしゅじんさま。我慢できなかった」
エリザベスはわざとらしく微笑んだ。そうとう俺のことが好きなようだ。幼いころから一緒に過ごしていただけのことはある。俺がぼんやりしているとエリザベスは言った。
「ではごしゅじんさま。これからよろしくお願いします」