許嫁の訪問
ステータスを見てから3年がたちアルフェリスは4歳になった。ワトリスは6歳となっていた。この日のアルフェリスの予定は朝からワトリスと一緒に母アリシアから契約魔法についての実践と昼からはアルフェリスの許嫁が来る日だった。
中庭にいき、アルフェリスがアリシアに言った。
「母様今日は何を教えてくれるのですか?」
「今日はアルフェリスは実際に契約しましょう。ワトリスは魔力拡大のために、瞑想しましょうね」
アリシアからそう言われた2人は元気よく返事をした。
「はい!」「はい!」
アルフェリスとワトリスは各々 間隔を開けた。ワトリスは胡座をかき、体内の魔力を循環させ、魔力袋の領域を広げる練習をした。
魔力袋はこの世界の人族に備えられている物であり、大きさによって魔力量が違ってくる。大きくするには日々どれだけ魔力を使うか、どれだけ循環させるかで大きさは変わってくる。後者の場合は毎日行わないと効果は現れない物だ。
ワトリスは深い集中に入った。
そしてアルフェリスはアリシアが鳥籠に入れて持ってきていた。"ピースバード"と契約をする所だった。
「アルフェリス、この鳥さんと契約するのよ。もう印はあるけど、小さな時だったし、分からないと思うわ。だから昨日私が言ったように手順を声に出してやってみて」
「はい!」
ピースバード自体は街や平和な森にもいる小さな鳥で集団で生活している。危害は森に食べ物が無くなると作物を食べに来るが滅多にはなく、気性も荒くないため、よく契約魔法の最初に使われている魔物だ。
アルフェリスは昨日アリシアから習った事を声に出して行った。
「右手を出して..右手に魔力を溜めて..相手に極力近ずける..そして呪文を言う」
アリシアはアルフェリスがいつ失敗してもいいように構えていたが。しっかりと出来ているようなので安心して見守っている。
"我は汝と契約を結ぶ者なり、我と7分の契約を結び、仕える事を望むならば印に魔力を与えよ"
契約魔法は両方が了承しないと成功しない。しかし、この世界は強者に従うのが世の常であり、ピースバードは弱い魔物だ。アルフェリスの魔力量を見て絶対に勝てないと確信しているため、従った。
7分の契約には絶対的な命令ができる権限がもたらされる。が、基本的には言う事を聞くので命令権は余り使われない。
しかし、主を認め主の命が危なくなり助けようとした際に主が命令権を出し逃がすという事ができるのだ。
言い終わるとアルフェリスの印が光り輝き数秒で納まった。
「母様これで成功ですか?」
そう首を傾げてアリシアに言った。
「ええ。完璧よ。ピースバードはどうする?外に放つ?印にしまう?」
7分以上契約を結んだ場合印にしまうことができ、召喚する時の魔力が大幅に削減される。しかし、魔物も生命維持のため主の魔力を定期的に食べる。逆に外にはなった場合、魔力は消費しないが召喚時に必要な魔力量が増えてくるのだ。
アルフェリスはどちらがいいか分からないので母に聞いた。
「どちらの方がいいですか?」
「うーん、アルフェリスは魔力多いし、ピースバード位なら余裕で印に入れてても魔力の回復が早いから。入れて置いた方がいいかな」
魔力の回復はワトリスがやっている瞑想の循環と少し変わり吸収の瞑想と自然に回復する自然回復だ。
吸収は大気に必ず含まれている魔素を吸収して魔力に変換して回復、貯留する。
自然回復は人により異なるが、契約魔法の場合は契約している魔物の格と数で大きく変わり、大きければ大きいほど、多ければ多いほど自然回復する量は増えてくる。アルフェリスの場合、大精霊という格が大きい者と契約しているので自然回復はとても早く回復する。
アルフェリスは鳥籠を開けて右手を出して言った。
「わかりました!おいで」
そうするとピースバードは印に入って消えた。その後アルフェリスは印に向かって目を閉じて言った。念話だ
「お前の名前決めてあげないとな。。ピースでどう?」
ピースバード元いピースは肯定の感情を示した。話せない魔物は話しかけた際極端な話YESかNOで帰ってくる。
「よし、じゃあ今日からピースね。よろしく」
言い終わった後にアリシアが言った。
「アルフェリスよく出来ました!じゃあもうお昼前だし中へ入っておいで、私はワトリスに声をかけて一緒に行くからね」
「はーい」
アルフェリスは家の中へと入っていった。数分がたってアリシアとワトリスが一緒に入ってきた。
「よし!じゃあ今日のお勉強はこれでおしまいね。お昼ご飯の前に着替えてらっしゃい」
あまり体を動かしてはないとはいえ、汗は多少なりとも2人とも書いているのでアリシアは昼食前に着替えるように言ったのだ。
そして2人も返事を返した。
「はーい」「はい」
2人は部屋へ戻り、メイドに服をきがえさせてもらい、いつもご飯を食べる食堂へと向かったのだった。その道中にアルフェリスがワトリスに聞いた。
「ねぇ、兄様。兄様はどんな魔物と契約しているの?」
「んー、アルと一緒のピースバードとポグだな」
ポグとはイノシシ型の草食獣で、危害を加えると突進してくる気性の荒い魔物で子供には難しい魔物だ。契約も力と魔力量がなければできない。
「ポグもいるんだ!すごいなぁ僕も早く契約したいよ」
「はは、アルにはすこし早い気がするから、もう少し大きくなったら母様もさせてくれるだろう」
ワトリスは7歳だが貴族の教育を受けているため口も達者で、知識も広く、礼節も覚え始めてきており、貴族としては育ってきているのだ。
そんなことを言っていると食堂につき、長いテーブルの数十はある椅子に2人はいつもの場所へと座った。
そして数分が経ちアーベルトとアリシアが話しながら入ってきて2人も同じ場所に座った。アーベルトが上座であとの3人は右側にアリシア、左にワトリス、アルフェリスという順番で座っていた。そして後ろには専属のメイドが一人一人に付いている。
料理が運ばれ全て出切った後にアーベルトがいつもの聖句を言った。
「"今日食べる物に関わる人々に感謝し、豊穣の神 シクルト様に祈りを捧げ、食します"
これをアーベルト一人がいい全員が復唱した。そして全員が食べ始めるのだ。
そしてアーベルトがアルフェリスに言った。
「アルよ、今日は許嫁が来る日だぞ」
アルフェリスは口の中の物を飲み込んでから話した。
「はい、父様。存じております」
「相手は、、、えーと」
アーベルトはど忘れをしてしまい、言葉に詰まった。そしてアリシアはアーベルトに「なに、息子の結婚相手を忘れてるんだ?あなたが決めたんでしょ?」と言わんばかりの表情と、言葉の強さで言った。
「ビジグッド領の隣のピリス領 ピリス伯爵のご令嬢のイリアス・ド・ピリスさんでしたよね?」
その剣幕にアーベルトは引きながらも言った。
「お、おぉ、そうだったそうだった。イリアス嬢だ。かなりの可愛い子だぞ?緊張するなよアル」
アルフェリスは笑顔で言った。
「はい!頑張ります!」
アルフェリスはまだ結婚や許嫁の意味などあまり深くとらえておらず、将来一緒に暮らすんだな位で考えており、そして今日は会うだけと聞いているので、アルフェリスは全然緊張してい無かった。
「うむ、がんばれよ。それで今日の練習はどうだった?」
アリシアが答えた。
「ええ、2人とも頑張っていましたよ」
「そうかそうか、それは何よりだ」
そんな日常会話をして、食事の時間が終わり、アリシアがアルフェリスに言った。
「アル、さっき着替えたけど、今度は礼服に着替えましょうね」
アルフェリスは人が来るのでそういったいつもと違う服を着ることは知っているので肯定の意を返した。
「はい母様。では着替えてまいります」
そう言うと後ろに控えていたメイドと共に部屋から出ていった。
そしてアーベルトは書斎へ、ワトリスは勉強へ、アリシアはイリアスが来るまで中庭で食後のお茶をして待っていた。
そして1時間後時が来た。門番からセバスチャンへと伝わり、メイドを通しアーベルトやアルフェリス、アリシアの元へと到着の知らせが届いた。そして3人は応接室に向こうが付き、座った5分後辺りに向かった。時間を開けたのは、こちらの方が貴族位が上だからだ。しかし、5分は短い方である。
応接室ではピリス伯爵とその横にちょこんとイリアスが座っている。
そして扉が開かれると中にいたふたりは立ち上がり3人を迎えた。
そしてピリス伯爵が言った。
「ビジグッド侯爵様、奥様、本日はお忙しい中嫁入りの話を決めて下さりありがとうございます」
そう言うとぺこりと頭を下げた。そして横にいるイリアスも頭を下げた。アリシアは笑顔でそんなイリアスを観察していた。アルフェリスはイリアスの事を見て、素直に可愛いと思っていた。姿形は女神には敵わないが美人に育つことは確定していた。
「よいよい、そんな畏まるなそなたと私の仲ではないか。昔の初めて会った時のように話してくれても構わんよ?」
昔アーベルトは冒険者をしており、その時にピリス領を訪れピリスの依頼を受けあったことがあるのだ。
「滅相もないです。あの時は冒険をなさって降りましたからな。言葉使いも荒いものでした」
「ははは!そうであるな」
そう言っていると横からアリシアが肘でアーベルトをつついた。
「ん?っとそうだったな。立ち話もなんだ、座ってくれ」
「はい、ありがとうございます」
両者が座った直後にセバスチャンがお茶を入れたティーカップを置いた。そしてピリスは飲み感想を言った。ここまでは貴族の恒例事項だった。
「美味しいお茶ですね」
そう言われると笑顔でアリシアが言った。
「ふふ、ありがとうございます。私のお気に入りなんですよ?少し持って帰りますか?」
「おぉ、それはありがたい。是非頂きたい」
そう言うとアリシアはセバスチャンに目線をやりセバスチャンは頭を下げて部屋から出ていった。
そしてアルフェリスは2人の真ん中に座っており入ってからイリアス同様1度も言葉を発していない。そしてアーベルトがまた言い出した。
「いかんいかん、話に花を咲かすのはいいが、今回は息子の紹介だったな」
そう言われるとアルフェリスは立って言った。
「お初にお目にかかります。ピリス伯爵様、イリアスお嬢様。私がアルフェリス・ド・ビジグッド 4歳でございます。以後お見知りおきを」
お辞儀をして座った。
そしてピリス伯爵は驚いたように口を開いた。
「なんと、これは丁寧に。驚きました、4歳でスラスラと言えるとは、流石はビジグッド侯爵様の息子様ですな。感心致しました」
この世界では魔物の危険があるためか、成長が早いが、ここまで言えるのは珍しかった。
「ふふ、そうなんです。何故か言葉を覚えるのが早くて私達も驚いたほどなんですよ?」
「奥様そうなのですか、しかしうちの娘は6歳なのですがこの通り恥ずかしがっていましてなぁ。お恥ずかしい限りです」
イリアスはアルフェリスが話し始めるとピリス伯爵の腕を掴み恥ずかしそうにこちらを見ていた。
そんなイリアスを見てか、アルフェリスは事前に空間魔法に用意していた花かんむりを取り出してイリアスに言った。
「イリアスお嬢様、これをどうぞ。今はお花をご覧になってください」
そう言いながらイリアスに渡した。
イリアスは嬉しそうに受け取り初めて言葉を発した。
「ありがとう..ございます」
そう言うと手にしている花をじっと見ている。
そしてピリス伯爵が言った。
「いやはや、ここまでとは。私は感動しました。アルフェリス坊っちゃまありがとうございます」
アルフェリスがピリス伯爵に正直に返した。
「いえいえ、私は母上からお聞きした通りにしただけですので」
そう言うと大人3人は笑いあった。
「ははは!アルよ!そこは正直にはいいのだぞ?」
「ふふ、アルったら」
「いやいや!子供さがあって安心も致しましたぞ!ははは!」
アルフェリスは笑われていることに気づき赤面したが、笑いあったおかげか、空気が変わり、イリアスの態度も少し変わりピリス伯爵の腕を掴むことはしなかった。しかし時間が迫っておりアーベルトが言い出した。
「おっともうこんな時間だな。ピリス伯爵もお忙しいだろう。今日はこの辺りにしようではなか?」
「ええ、そうですね。本日はありがとうございました。」
そう言うとまた頭を下げた。
「うむ」
そう挨拶すると、全員が玄関に待たせてある馬車へと向かうのだった。そして、乗る際にアリシアがピリス伯爵に言った。
「ピリス伯爵様、これをどうぞ、少しですが茶葉でございます」
「おぉ!ありがとうございます。大事に飲まさせていただきます。では今日はありがとうございました」
と言って馬車に自分の領へと帰って行った。そして残ったアリシアがアルフェリスに言った。
「アル、大変よくできました!」
「はい!」
全てアリシアがこの日のためにずっとアルフェリスに教えていたのだった。
そして予定は終わりまた日常へと戻ったのだった。
ありがとうございました