実在証明
「うーんと・・。仕事の資料作成とかがあるから、五日後くらいは?」
「おけ。五日後ね。時間は・・?」
「仕事が・・・かたずいたら・・って感じだから、かなり遅くなるかも・・。今日くらいになっちゃうかも・遅いよね?」
「いや、俺はちょうど眠れなくて、どうせ起きてるから。むしろ、ありがたい」
「良かった」
そう言ってヒカリは微笑んだ。画面越しから伝わる、白く透き通るような肌。多分、すっぴっんだ。すっぴんでこのクオリティはやばい。
「じゃ、おやすみ」
「おやすみ」
そう言って画面が一瞬真っ暗になり、いつものディスプレイの画面に戻った。
「いや、最高かよ」
一人呟く。
俺は死ぬほど嬉しかった。一昨日、ヒカリに会ってから一日に何度もヒカリの姿を思い出していた。二度と会えないと諦めていたけど、まさかまた会えるとか、最高すぎる。
「なんか、神様ありがとう」
俺は幸せな気分でベッドに横たわり、眠りの世界に入っていった。
この一ヶ月はこんな感じでヒカリと話すようになっていた。
ヒカリは俺の家から電車で一時間くらいの場所に住んでて、仕事はメーカーの事務職だそうだ。
五日に一回のペースで画面上で会っていたのが、気がつけば三日に一回会うようになっていた。
ヒカリは決まって、AM0:30くらいに画面で来て大体二、三時間くらい俺らは話しこむ。
気がついたらいつも寝るのはAM3:00くらいになっていた。
俺のパソコンのディスプレイに
【ヒカリから招待が来ました】という表示がされ、俺は
【入室をする】をクリックする。
するとヒカリに会える。
その瞬間いつも照れたような笑顔をするヒカリがとてつもなく、可愛くて愛しい。
誰にも会えない日々の中、夜は闇にのめり込みそうな時がある。
そんな時に画面上でヒカリに会うようになって、俺はその闇から抜けれそうな気がした。
「早くヒカリに会いてー」
ベッドの上にうつ伏せになり目を瞑る。
実物のヒカルは一体、どんな雰囲気なんだろう。
テレビで観ていて、実際会った事のない芸能人って感じ。
俺の推しの人気アイドル黒石えみりにも似てるし。
気がつけばいつも、ヒカリについて頭の中で考えを巡らせてしまってる。
早く会って触れたい。
そしてたまに、こうも思う。
ヒカリは本当に実在しているのか?って。