サラバ
「招待はされていないの。なんかビデオアプリを触ってたら、勝手にあなたが表示された
の」
「えっ?じゃあ君は何かの誤作動でここに来ちゃったって感じ?」
「うん。多分。驚かせてごめんね。私もびっくりして・・」
「・・・」
そんなことがあるのか・・?聞いたことないぞ。でも何かしらシステムのエラーや誤作動はありえないことはないかもしれない。
「じゃぁ、退出するね。すみません・・でした」
「ちょ、ま、待って」
気がつくと俺はそのヒカリが退出しようとするのを、全力で止めていた。
「あの、えっと、ヒカリちゃん?だっけ?その、もうちょっと話さね?」
「うっ、うん、いいよ。えーと名前は・・佐田シュン君?」
「えっ?なんで俺の名前知ってんの?」
「あっ、名前、画面に表示されてるから」
「あっ。そうだよね。びっくりしたー」
ふふっと微笑んだ画面の中のヒカリは本当に俺の推しているアイドルの黒石えみりに激似だ。可愛すぎる・・。
「えっえと、ヒカリちゃん、これからもよかったら話したいんだけど・・」
「うん。喜んでっ」
ヒカリがそう言った瞬間、俺のパソコンのデイスプレイは一瞬真っ黒になり、すぐにいつものデスクトップ画面になっていた。
「えっ?」
消えた。突然消えてしまった。
えっ?これってまたカメラアプリの誤作動で消えた感じ?
俺も退出になったってこと?
大丈夫か?俺のパソコンは・・。まだ買って一年もたってねえし。
つか、俺のパソコンは関係ねえか。
でも、なんか久しぶりに初めましてって感じ、体感できたな。
自粛でガチ誰にも会ってねーし。
しかもガチタイプ。
マジで夢みたいな話だ。
ネットの誤作動で出会ったとか。
交通事故で出会った感じ?
ま、よくわかんねーけど可愛かったよな。
「あっ!!」
俺は部屋着にしてるグレーのスエットパーカーを脱ぎながら大声を出した。
「連絡先、聞くの忘れてた!くそっ。すぐ消えんだもんな。
あーっ。くそっ。俺はバカだ。すぐに聞いときゃよかった」
三年前に元カノに貰った、どっかのブランドのグレーのボクサーパンツ
を脱ぎながら風呂場に入った。
それにしても・・。
温かいシャワーを浴びながら、五分前のことを俺は思い出だす。
ヒカリちゃん、胸もでかかったよな。