機会
「いやいやいや、今チャンスなんすよ。出会いアプリやってます?私自粛になってから、三つくらいのアプリやって、出会いまくりっすよ。オンラインデートしまくりっす。いい感じの案件男子が今三件いてー。いや、先輩、やってください。今すぐ。自粛中はチャンスなんすよ」
「えー。アプリー?昔やったことあるけど・・」
「今がチャンスなんすよ!ほら、高スペック男子は日々の業務とかで忙しく、アプリとか婚活とかする時間が無いすよね。でも、今、今なんすよ。この在宅ワークを強いられてたり、海外駐在組は日本に一時帰国してて、自粛。普段時間が無い人に、時間が与えられる訳ですよ」
そう言いながら、ユキナは飲みほした空っぽのグラスを置いた。
「なるほど・・」
「でっ、普段仕事が忙しく充実していて、パートナーがいない。
というか、仕事が忙しくてパートナーのことを考える暇がない。
でも、今、ふと日本に帰って見ると、気がついたら俺も良い歳だし、周りは結婚してる奴が多いし、俺もそろそろ・・。ってなる訳っすよ。あ、ちょっと冷蔵庫にビール取ってきます」
そう言うとユキナは画面からフレームアウトし、ユキナの部屋の白いソファの上に置いてあるピンクのハート型のクッションが取り残されたように映った。
ガチャっと音がし、ユキナがまた画面に現れ、空のグラスにビールを注ぐ。
「で、なんの話ししてましたっけ?」
とぼけた顔でユキナが言う。
「アプリの男子がチャンスって話し」
「あっ、はは。そうっす。それそれ。そうなんすよ。いや、だからチャンスっす。今っすよ。自粛で飲みに行けない分、みんな出会いのチャンスが減るんで、アプリにいくんだと思います」
「アプリか・・」
「先輩、チャンスっす。今っすよ!」
五杯目のビールを飲みながら、画面越しに、ちょっと据わった目で
ユキナは私に言った。
***
ユキナとのリモート飲みを終え、スマホに出会いアプリ『マッチング』
をダウンロードする。
去年も、ユキナに勧められ一瞬、使用したことがあるが、あまり使用せず、すぐに退会したのだ。
久しぶりに新しくダウンロードされた『マッチング』のアプリを開く。
自身のプロフィールを入力し、【スタート】を押す。
男性の写真が画面にずらりと並んだ。
あぁ、そうだ。こんな感じだった。




