06_襲来
《俺に、孫の面倒を見ろってことか......。持ち主ができるだけ嬉しいんだけど、俺なんかでいいのか?》
「ああ、わしには分かる。お前さんから放たれる異様な魔力。ただの刀ではないのは、一目で分かった。お前さんほどの刀なら、孫の刀として申し分ないっと思ったんじゃ」
レイブは、元剣士ということもあり、孫を一流の剣士に育てあげたいという気持ちがありました。孫にふさしい剣を、探していたところ、偶然、東風谷を見つけてしまったわけです。
《じいさん、大袈裟だよ!!なんか、そこまで言われると、照れちゃうな。てか、俺にも、魔力みたいなのがあったんだ。知らなかったな。俺も、魔法が使えたりして》
「お前さんなら、きっと魔法も使えるじゃろう。よし、試しにわしが、お前さんを使ってみるかのう。またまた、騒がしいのが一匹、来ているようじゃし」
レイブが、言った直後、武器屋の屋根が、軽く吹き飛ぶほどの風が吹き付けます。いきなり、なんでしょうか。この地域には、台風警報は、出ていないようですが、暴風が吹き荒れます。
おっと、強烈な風に、東風谷は台から、どこかに飛ばされそうになりますが、レイブが素早く掴みます。
ふと、空を眺めると、今度は、赤ではなくて黒色のドラゴンが両翼を羽ばたかせながら、東風谷たちのところに君臨します。幻獣園から、逃げ出したのは、赤の奴だけでなく、黒の奴もいたとは、見事な不意打ちです。確かに、逃げ出したのは、村人の発言を振り返ってみると、一匹だけとは一言も言っていませんでした。
「すごい風じゃな。さすがに、このままだと、どこかに吹き飛ばされるかもしれぬな。早めに終わらそう」
レイブの足元を見ると、草履を脱ぎ捨てて、裸足の状態になっています。足の指で、地面を掴んで、風で身体が飛ばされないようにしているのは、常人の域を越えています。まるで、小説のなかの、嘘みたいな光景が広がっています。
東風谷は、レイブに握られ、彼の手から、不思議な力が流れ込んでくるのを感じます。
《なんだか知らないけど、力が流れ込んでくるな。それに、なんだろう。このじいさんと一つになっているような奇妙な感じだな》
黒色のドラゴンは、相変わらず、宙に浮いた状態で、東風谷たちに、強烈な彷徨を浴びせかけます。レイブは、冷静に、両耳に、指を突っ込んで、鼓膜が破れるのを防ぎます。東風谷は、というと、そもそも刀に生まれ変わったので、鼓膜を破れる心配は無しです。
レイブは、刀を構えると、東風谷に言います。
「いくぞ、ドラゴンの首を断つ!!」
レイブと一つになった東風谷は、彼の今からやろうとしていることが、頭の中に入ってきて、分かりました。
《分かった!!やるよ、じいさん》
次話は5月22日に投稿の予定です!次回は、東風谷の必殺技が見事に炸裂します。必殺技と聞けば、小学生低学年の頃、誰もいない教室で一人、アニメに出てくる登場人物の必殺技を叫んでいたら、いきなり、同級生が入ってきて、笑って誤魔化した黒歴史を思い出します。