09_喪失
数日後、平和が保たれていた村に、大惨事がもたらされます。
当時は、村には、数年ほど前に魔法の存在が認知され始め、まだ十分にその技術が確立してなかったこともあり、村の周囲には外部の脅威から守る魔法壁が張られてはいませんでした。石の壁をつくってなんとか、侵入を防ぐなども対策が講じられていましたが、完全に魔物たちの防げた訳ではなかったのです。
いつなんどき、強力な魔物たちが襲ってきてもおかしくなかった危うい状況でした。そんな状況下で、恐れていた悲劇が、村に起こってしまったのです。
魔物の群れが、村を襲い、甚大な被害をもたらしたのです。剣士たちは、果敢に人々を守ろうとしましたが、魔物の数が多く、全ての人々を守ることはできませんでした。なすすべもなく凶悪な魔物たちに襲われ、命を失ってしまう人々も多くいました。
フンヌは、村の人々を守る剣士として、自分の気力と体力があるかぎり、全力で、侵入してきた魔物たちを倒していきます。
ですが。
目の前で見せつけられた残酷な光景に、立ち尽くし、握っていた剣を地面に落としてしまいます。
信じていたのに、お前なら、守ってくれると......。
なのに、なぜ。
目の前に広がっていた光景は、レイブが、コトナの身体を剣で貫いているところでした。涙が込み上げて来ると同時に、底知れない怒りの感情が沸き上がり、叫び声をあげます。
「うぉああああああ!!!!!」
フンヌは、信用していたレイブに、裏切られたと感じました。
レイブなら、コトナを守り抜いてくれる。幸せにしてくれる。
そう信じていたのに......。もうなにも信じられない。
私は、なにもかも失ってしまった。私に残されたのは、激しく燃え上がる憤怒の念だけだ。
失ってしまうなら、裏切られてしまうなら、出会わなかったらよかったのだ。
どうして、私は、出会ってしまったのだろうか。
「素晴らしい。途方もない怒りの感情を感じる。人間のことが嫌いか?」
フンヌは、沸き上がる憤怒の気持ちに、支配されていたところに、カオスに、話しかけられます。
「ああ。人間を許せない。嘘をつき、私から、大切なものを奪う醜き生き物だ」
怒りの満ちた鋭い目付きで、カオスに向かって言います。
「そうか、なら、魔族になるといい。お前に、聖剣の力をやろう。この理不尽な世界を、お前の憤怒の炎で焼き付くすがいい」
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次回は11月20日に投稿予定です!




