08_憧れの友
私ではなく、レイブが選ばれた。どうして。
レイブは、いつも、私の先にいる。追い越そうと、努力しても、たどり着くこともできないのか。
やはり、努力しても無駄なのだ。この世界に生れてきた瞬間から、剣神になれるものはすでに決まっていたのだ。
フンヌは、悔しさと妬ましさの気持ちがわき出て、強く拳を握りしめます。同僚から、レイブが剣神になったことを聞き、夜、半ば放心状態で、村に、流れる川の近くを歩いていた時でした。
幾度も、剣を振る音が聞こえました。
誰だ。こんな時間に、剣を振っているのは......。
「レイブ」
ふと、剣の音がする方を見ると、フンヌは、思わず、一言言うと、立ち止まります。
レイブは、立ち止まったフンヌの気配に気付き、話しかけます。
「おお、フンヌか。久しぶりだな」
実は、フンヌは、レイブと一年くらい会えていませんでした。剣の道場に行くことをやめ、ギルドの訓練場で、一人で黙々と、練習していたのでした。
「ああ、いつも、この河川敷で、こんな時間まで剣の鍛練をしていたのか」
フンヌは、レイブよりも、剣の鍛練に時間を費やし、剣を極めてきた自信がありましたが、目の前のレイブの姿を見て、考えを改めます。
「皆の期待に答えなければないないし、村の人々を守り抜く責任が、俺にはある。そんなプレッシャーに押し潰されそうになり、不安に飲まれそうになるから、こうして、鍛練に打ち込むようにしている」
レイブは、レイブで、抱え込んでいるものがあり、責任感を背負って毎日を過ごしていました。
「そうだったのか。私の知らぬ間に、剣に磨きをかけていたとはな......。剣神に選ばれることはある」
フンヌは、レイブが剣神に選ばれた事実を受け入れられない気持ちがありましたが、剣の鍛練に打ち込む姿を見て、少しずつ受け入れられるようになっていました。
「剣神に選ばれた話は、フンヌにも伝わっていたのか。剣神に選ばれたからには、その名に恥じぬように、日々、精進しなければならない。特に、最近は、魔族たちの動きが活発になってきているようだ」
「レイブ、お前は、私と違って、コトナという女性が、そばにいる。魔物たちが、人々を襲い命を落とす事例も、いくつか報告を受けている。絶対に守り抜けよ。お前の大切な人たちを!」
「ああ、約束する。守り抜くよ。剣神の称号を与えられた者として」
フンヌは、レイブのまっすぐな目に、強い意志と覚悟を感じ、レイブなら、任せられると思うようになりました。
レイブ、お前は、すでに私の手の届かないと思わされるほど遠い存在になってしまった。
私にとって、お前は......。
親友であって、憧れだ。
お前ならば、任せられる。
村の人々を。そして、コトナを。
フンヌは、河川敷で剣の鍛練を続けるレイブと別れると、そんなことを考えながら、夜の暗闇を仄かに照らす村の中を歩くのでした。
次回は11月17日に投稿予定です!




