06_ハレの日
今は、この戦いを楽しもう。
竹刀の音が、力強く響きます。その瞬間、勝負が決まりました。レイブは、フンヌの強烈な一撃を受け流し、彼の胴体に、軽やかに竹刀をぶつけます。
今回も、負けてしまった。だが、もう、彼女のことを諦められる。レイブほどの男なら、コトナのことを任せてもいい。
勝負が決した直後、フンヌは、急に力が抜けて、倒れ込みます。呼吸が荒くなり、汗が止めどなく出てきます。とても苦しそうですが、フンヌは、やりきったという表情を浮かべています。
「大丈夫ですか。フンヌさん。傷だらけ。急いで手当てしないと」
倒れこんだフンヌは、レイブとの戦いで、いつの間にか、傷だらけになっていました。そんなフンヌの姿を見て、コトナは心配して話しかけてくれたのでした。
「傷だって、ほんとだ!?」
コトナに言われて、フンヌは、初めて、自分が傷だらけになっていることに気付き、全身に激痛が走ります。レイブとの戦っている最中は、集中するあまり、傷の存在に、気づいていませんでした。
「大変......治療しますので、動かないでください」
コトナの優しい声とともに、フンヌは、彼女の手の温もりを感じます。
「ああ.......」
俺は、この彼女のあたたかな雰囲気が好きだった。彼女の存在があったからこそ、つらい剣の修行も、乗り越えられることができた。
ほんとは、彼女には俺のそばにいてほしかった。だが、レイブに全力で挑んで敗れた。彼女の気持ちにも気づいていた。今となっては、俺のできることは、二人が幸せになることを祈り、応援することだけだろう。
◇◇◇
その一年後ーー。
季節が巡り行き、村に鐘の音が鳴り響きます。
小鳥が青空に向かって、音をたてて飛び立った後、教会から、ウェディングドレスを着たレイブとコトナが、幸せそうな表情を浮かべながら出てきました。
今日は、二人の記念する日。二人が結婚した日でした。
手を繋ぎ、歩く二人を、多くの人々が集まって祝っています。その中には、フンヌの姿もあります。フンヌは、人々が拍手をするなか、幸せそうな二人の様子を見ながら、心から拍手ができず、ただ佇んでいました。
二人を応援すると決めたのに......。
なんだ、この胸に広がる引き裂かれるような気持ちは。
三人の距離はこんなにも近いのに、自分を置いてどこか遠くに行ってしまったような悲しみが、フンヌを襲っていました。三人でいる時間が長かった分、悲しみは、彼にずっしりとのし掛かります。
駄目だ。ここで、二人の幸せを祝わなければ、後悔するだろう。
二人の友として今は、二人を全力で祝おう。
おめでとう。
フンヌは、笑顔を浮かべながら、太陽の光に包まれた二人に向かって拍手をすると、拳を強く握ります。
次回は11月11日に投稿予定です!




