07_トラウマ
「お前は......フンヌ」
レイブの視線の先には、細身の男の姿がありました。彼の名前は、フンヌ。かつて、レイブと、同じギルドに所属し、活躍していた剣士でした。
「私は、レイブ、お前を許さない。お前だけが、剣神の称号を得た。お前だけが、コトハと結ばれた。お前は、私の得たかったものをすべてを奪ったのだ!!!」
フンヌの額にある、三つ目の不気味な瞳が開きます。その異形の姿から、完全に、瘴気に侵され、魔物になってしまっています。
表情には、あまり出しませんが、フンヌの言葉一つ一つから、とげとげしい怒りの感情が、伝わってきます。
「だから、私も、お前から奪ってやろう。お前の大切なものを」
フンヌは、瞬時に、腰の剣を取り出し、横に一振りすると、剣から、斬撃が放たれ、レイブたちを襲います。たった一振りですが、フンヌの目の前のものを一瞬で断ちきるほどの、鮮やかで強烈な一撃です。
「わしの大切なものを傷つけやさせない!!!フンヌ、お前であっても」
フンヌの瞬時の攻撃を、レイブは見切って、剣を構え、防いでいました。レイブの後ろにいたナズナや子供、子供の両親も、レイブが防いだおかげで、無事です。ですが、少し、視線をはずすと、彼らがいるところ以外は、先ほどのフンヌの一撃で、吹き飛んでいます。斬撃の凄まじさを、物語っています。
「お父さん、大丈夫」
ナズナは、心配そうにレイブに言います。
「ああ、心配は無用じゃ。ナズナ」
レイブは、平然としていますが、剣を持つ手は強烈な攻撃を防いだ反動で、手が震えています。その様子を見て、フンヌは蔑んだ目で言います。
「やはり、老いたな。レイブ。以前のお前なら、手の震えもなく、もっと、余裕があった。だが、今のお前は、ただ強がっているようにしか見えぬ。つまらぬ。もっと、楽しめると思ったのに、お前には失望した」
「魔物の力に頼り、人間であることを捨てたお前などに負けやせんわ。まだまだ、やれる。わしは」
「老人の戯言だ。今の私は、人間だった頃に比べて、力を増している。それに対してお前は、老いて、力が弱まっている。醜いな、レイブ。そうやって、朽ち果てて行くのだ。お前に勝てる道理などありはしない」
「まだ、お前ごときなら、勝てるのう」
レイブの言葉にフンヌは苛立ちを感じ、地面を踏み込むと、急速に、レイブの目の前まで接近すると、剣を振ります。すかさず、レイブは、剣で受け止めますが、若干、後退りしてしまいます。
「まだ、そんな強がりを吐くか。なら、教えてやる。俺とお前の絶望的な力の差というやつを」
フンヌは、剣に力を込めて、レイブの剣を押していきます。ものすごい力です。力だけでみれば、フンヌの方が、上でした。ですが、レイブは、剣を受け流し、フンヌの体勢を崩します。
「わしの大切なものを守らなければならない。フンヌ、かつての同胞だろうと、お前さんを許す訳にはいかんの」
レイブは、体勢が崩れたフンヌに、すかさず剣を振ります。フンヌは、即座に体勢を立て直し、レイブの一撃を剣で受け止めて、防ぎます。
「レイブ、お前はいつだって、俺の先にいた。私が、どんなに努力しても、常にお前は俺の前に立っていて、追い付くことはかなわなかった。私は、剣神には、なれず、お前は剣神になった」
「フンヌ、わしは、一生懸命努力し、お前さんが誰よりも、剣術の鍛練に励んでいたことを知っている。いつか、わしは、フンヌ、お前に抜かれるのではないかと恐怖すら感じていた」
レイブは、フンヌの過去を思い出しながら、言います。ですが、フンヌは、レイブのその言葉に苛立ちを感じ、剣を強く握ります。
「嘘をつけ!!!俺は、レイブ、お前に追い越すことなどできなかった。差は縮まるどころか、大きくなるばかり!!!失望した。己自身に!!!俺は、レイブ、お前には一生勝てない......。その残酷な事実だけが俺の心に残った。気が狂いそうな日々だった」
「だから、お前は魔族になってわしを殺しにきたのか」
「ああ、そうだ。だが、それだけではない。そんなことは、些末なことだ。お前は、大切なものを守り通すといっていたな。お前は、コトハは、守れなかったではないか。いや、それどころか、お前がコトハを殺したんだよ、レイブ」
レイブは、過去の残像が頭を過り、剣を握る力が、一瞬、緩みます。過去のトラウマを、フンヌに、抉られて、心の隙ができてしまいました。その一瞬の隙を逃すことなく、フンヌは、剣で、レイブの剣を弾き返し、攻撃を加えます。
この回でいったん、休載させていただきます。色々、事情があり、現在ペースで執筆が難しくなりました。楽しみに読んでいただいていた方には、大変申し訳ございませんが、しばらく、投稿出来ない日が続きます。いつか、また、投稿できそうになったら、投稿していけたらと思います。




