04_魔法使い
文中の【】は、魔術名や、剣術名を記載する際に使用し、後ろのー以下は力の性質を表しています。今後、この記載方法で、執筆していく予定です。
ドラゴンは、辺りの荷物を、押し倒しながら、ものすごい勢いで、ティル目掛けて、突っ込んでいきます。間違いなくティルはドラゴンの標的にされています。このままでは、ドラゴンの巨大で強靭な肉体に蹂躙され、ひとたまりもありません。ですが、ティルは、慌てる様子はなく、冷静に杖を取り出し、なにやら呪文を唱えます。
【レマト】ー無
すると、彼のちょうど一歩手前で、急にドラゴンが、立ち止まり、まるで凍りついたように動かなくなります。ドラゴンは、体を、必死に、動かそうとしますが、一歩も、動きません。ドラゴン自身も何が起こったのか分からず、当惑しています。
《いきなりドラゴンの動きがとまったぞ! 魔法を使って、ドラゴンの動きを止めたのか。すごいな》
ティルとドラゴンの様子を見ていた東風谷は、 魔法に興味津々です。前の世界では、魔法は、想像上の産物。実際に、見ることはないので、心踊るのは、必然かもしれません。
「そうあがくな。すぐに楽にしてやるから」
【ケイデント】ー風
再び、ティルが杖を振り、呪文を唱えると、動けなくなっていたドラゴンが、今度は後ろの方に、勢いよく風を切り、飛んでいき、レンガ作りの建物に、衝突します。建物の壁は、音を立てて、崩壊し、砂塵が舞っています。建物の中の人が心配です。
《すげええ!!俺も、あんな感じに魔法使いたい。俺、刀だけども》
これで、一件落着かと思いきや、ドラゴンは、飛ばされて壁にぶつかっただけでは終わりませんでした。大気が揺れる程のけたたましい雄叫びを響かせます。
そして、口が紅く光り、ドラゴンは、激しく燃え盛る炎をティルに向かって、放出します。一度、炎に触れれば、塵に変わってしまうほどの灼熱。にもかかわらず、ティルは、微動だにせず、相変わらず余裕の表情を浮かべています。
【レオコ】ー氷
ティルは、また、呪文を唱えると、一瞬で、灼熱の炎が、凍りつき、ついでにドラゴンまで、氷に包まれ、動かなくなっています。
【ロレワコ】ー無
間髪いれず、呪文を連発し、凍りついたドラゴンに罅が入ると、粉々に砕け散ります。風が吹いて、ドラゴンがいた痕跡すら、残りません。ただ、建物の壁も、ドラゴンが粉々になったいるのを見ている間に、ティルが魔法で修復完了しています。何事もなかったかのようです。
《やったのか。魔法使いって、あんなに強いのか......。魔法使いに転生したかったな》