02_壁の崩壊
「今こそ変革の時だ」
カオスが、笑みを浮かべ、言うと、街を囲んでいた魔法壁が、粉々にくだけ散るような音がします。本来、頑丈なはずですが、まるで、ガラスをぶち壊したように崩れていきます。
「いくぞ。魔法壁がなくなった今、お前たちを邪魔するものはなくなった。好き勝手、暴れるがいい。すべてを破壊しろ」
冷酷な目を輝かせるカオスの後ろには、数えきれないほどの魔物たちの群れがいました。とてつもない量です。これが、街を襲えば、人々はとんでもない被害を受けることは言うまでもありません。
魔法壁が崩壊する音を聞いた人々は、その異変に気付き、騒然となります。
「お、おかしい......街の周囲を囲む魔法壁が、崩壊していく」
「そんなあり得ない。魔法壁が壊れるなんて」
街を、魔物や魔族たちの侵入から守ってきた魔法壁が、なくなっていることに。その恐ろしい事実に、悲鳴を上げます。
「魔物たちが、襲いかかってくるぞ!!!」
「何でこんなことに......」
「魔法使いが私たちを守ってくれる、そうだろ」
街の人々は、魔法壁が壊れ、いつでも魔物たちが侵入できる状況に、気が動転しています。人々は、心のどこかでは、魔法使いが、助けてくれるという希望を抱いていますが、そのわずかな希望を打ち砕くかのように、建物が崩れ去る音が響きます。
「あ、あれは、巨獣。逃げろ、はやく逃げろ!!」
「だけど、どこに。結界を失った今、安全な場所があるというのか」
建物をダイナミックに、崩壊させ、無表情に現れたのは、巨獣と呼ばれる魔物です。建物と同等もしくは、それ以上の身長があります。しかも、巨大な武器を持っており、攻め込む気満々です。
巨獣が、逃げ遅れた子供を一人、大きな手で身体を掴み、持ち上げると、鋭利な歯が生えた口を大きく開けます。子供は、逃げ出そうとしますが、当然、巨獣の凄まじい握力には、敵う訳がありません。ぴくりとも、巨獣の手は動きませんでした。
「た、助けてぇえ!!!」
巨獣に握られ、あとは死を待つしかない子供
は、泣きながら、誰かに助けを呼びます。
ぐしゃっという嫌な音が響きます。
目を背けたくなるような光景が、広がっていると思うので、見たくはありませんが、見なければなりません。
恐る恐る見てみると、意外なことに、子供を握っていた巨獣の片手がなくなっていました。まさか、自分の手ごと、子供を食べたのでしょうか。だとしたら、天然というレベルを遥かに越しています。
ですが、巨獣も、先ほどまで、無表情でしたが、何が起こったんだと言わんばかりの表情を
浮かべ困惑しています。
そっと、視線を下に落とすと、なんと、ティルが、子供を両手で抱えて、悠然と立っています。ティルと言えば、幻獣園から逃げ出したドラゴンを圧倒的な魔法で倒したあの人です。
ロエモー【炎】
ティルは、すかさず杖を振り魔法を発動させます。生成さらた巨大な火の弾が勢いよく飛んでいくと、巨獣の顔面に直撃し、激しく燃え広がります。
「ティルが助けてくれた」
この魔物たちが侵入してきた危機的な状態に
現れたティルの存在は、人々に希望の光を灯します。
◇◇◇
次回は9月22日に投稿予定です!




