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魔王ノ聖剣ーRebirth'sー  作者: 東雲一
エピソード0
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08_エルピスの箱

 俺は何をしているんだ。


 鉤づめから抜けられず、このまま死に行く時を待つのか。


 そんなの嫌だ。


 俺は、いつからかゼノアのことを亡き息子と重ねていたのかもしれない。


 ゼノアを救いだして、俺たちの生まれ育った街に帰るんだ。

 

 クリアは、ゼノアが言っていた石像を注意深く観察します。鉤づめにとらえられたままだと見える石像は3つ。ポーズを取る剣士の石像と文字を目で確認して、聖剣の使い方を理解していきます。


 ですが、その最中、ドラゴンは、遠慮なく口の中で、生成された炎を、クリアに向かって放出します。


 放たれた炎がクリアに直撃し、激しく燃え上がります。なんと言う破壊力でしょう。これほどの攻撃を受ければ、無事で済むはずがありません。


 と、ふりをいれてみましたが、クリアの様子を見てみると、なんと、無傷です。ドラゴンの攻撃を直に受けて、傷ひとつおっていません。

 

 聖剣がまばゆく輝き、剣の持つ魔力がまるで鎧のようにクリアの身体を覆っています。


【ボルグの守りー土】ボルグの鎧を纏いて、三度、攻撃を防がむ。


 炎が直撃する前に、クリアは、石像と同じ構えを即座にして、聖剣の力を引き出すことに成功していました。硬質な魔力は、あらゆる攻撃を無効化し、クリアを守ります。


 ドラゴンの緩んだ鉤づめから、クリアは、抜け出し、すかさず、聖剣を構え、新たな力を発揮します。


【草薙の息吹きー水】剣から放出されし無数の泡。弾けて、強烈な衝撃をもたらす。


 二つ目の石像にある通り、聖剣の刃の部分から無数の泡が溢れ出てきます。剣をドラゴンの方に向かって泡を飛ばします。


 無数の泡は、ドラゴンの体に触れると、凄まじい衝撃とともに弾けます。あまりの衝撃に、ドラゴンは、なすすべもなく、悲痛の叫び声を轟かせながら倒れ込み、地面の塵を巻き上げます。


 ですが、【草薙の息吹き】を受けてもなお、ドラゴンの強靭な身体には、傷をつけることはできていません。金剛石のように頑丈な鱗が、邪魔をして、攻撃が通じません。


 聖剣の力を使っても、駄目なのか。


 クリアは、水で満たされた立方体の中で気を失っているゼノアを見ます。


 時間がない。


 これ以上、時間がかかれば、ゼノアは命を失うことになる。

 

 焦らず、こういう時こそ、冷静に物事を見るんだ。


 ふと、クリアの頭の中に、奇妙な声の主が言っていたことを思い出します。


《白き竜の逆鱗を切り裂け》


 そうだ。竜の逆鱗と言っていた。謎の声に従うならば、どこかに逆さに生えた鱗があるはずだ。


 声の主の言葉を思い出し、ドラゴンが纏う鱗を注意深く観察します。


 あった。あれだ!ドラゴンの後ろの首筋に、微妙に色が違った上下逆さの鱗が生えている。


 あれを切り裂きさえすれば......。


 クリアは、見事にドラゴンの首筋に逆さの鱗を見つけ出します。あの鱗さえ切り裂けば、ドラゴンを倒すことができます。試練攻略は、すぐそこまで来ていますが。


 ドラゴンも、おとなしくはしていません。地面に倒れ込んでいたドラゴンはすぐさま立ちあがり、大きな口を開けて、鋭利な歯でクリアの身体を噛み砕こうと首を伸ばしてきます。


 早い!!!逃げる場所がない。


 クリアは、思わず、体が硬直します。逃げられるような距離ではありません。先ほど使った【ボルグの守り】で身を守ったとしても、ドラゴンに丸飲みされ、胃の中の蛙になってしまいます。


 怖い。


 逃げ出したい。


 でも、到底、逃げられない。


 ''私はあなたのことを信じています''


 危機的な状況下で、ゼノアの残した言葉が、彼に力を与えます。


 ゼノアが俺を信じてくれてるんだ。


 俺が自分を信じなくてどうする。


 立ち向かうんだ!!!こんな逆境など越えてやる!!!


 クリアは、聖剣を構え、ドラゴンの逆鱗を直視すると、力強い輝きを放った聖剣を逆さの鱗に向かって投げます。


【ヴァテインの怒りー炎】剣先から放たれた炎が、投げし聖剣を回さむ。疾風のごとく空を裂き、敵を裂く。


 石像の言葉の通り、炎を纏った聖剣は、ブーメランのように、回転して、弧を描くようにドラゴンの後ろ首筋に、向かって飛んでいきます。


「うぉおおおおお!!!いけぇええええ!!!」


 クリアは叫び声を上げて、聖剣がドラゴンの逆鱗を切り裂くことを願います。


 ドラゴンの口が、徐々にクリアに接近しています。聖剣が、首筋の逆鱗を切り裂くの先か、それとも、ドラゴンがクリアを噛み砕くのが先か。


 ぐちゃ。


 嫌な音が響き渡ります。


 結果は、なんと......。




 




 ドラゴンの勝利です。


 クリアは、ドラゴンの口の中に入ってしまいました。クリア、塔の試練クリアならずです。ここまで、多くの困難に挑んで来ましたが、まさかこんな結果になるなんて予想外です。塔の試練を攻略することは、クリアでさえも不可能なのでしょうか。


 勝利したドラゴンは、喜んでいるに違いません。ふと、確認してみますが、白目を向いています。なにやら様子がおかしいです。


 すると、ドラゴンの口元が動き、中から、クリアが出てきます。


「くせぇえええええええええ!!!」


 クリアが、鼻をつまみながら、勝利の雄叫びを上げます。雄叫びとともに、ドラゴンは、光の粒子となって消え、ゼノアを閉じ込めていた立方体も、同時に消えます。


 地面に落ちたゼノアは、目を覚まします。クリアは、それを見て心配して、ゼノアに近づきます。


「大丈夫か!!!ゼノア」


 ゼノアは、クリアが放つ異臭に顔を歪め言います。


「クリアさん、匂います。こっちに来ないでください!!!」


「悪い。つい心配で......」


 と、クリアが落ち込んでいると、ゼノアが優しく彼を抱きしめます。


「ありがとうございます。あなたのお陰で、助かりました。俺たちの街に戻ったら、お酒一杯おごってください」

 

「ああ......」

 

 クリアは、そう一言返します。


《塔の試練を乗り越えし者よ。聖剣を元の場所に刺せ。さすれば、エルピスの箱が現れむ》


 また、謎の声が二人の頭に響き渡ります。


「なんでしょう。エルピスの箱って?」


 ゼノアが、クリアに問いかけますが、当然、彼も、箱が何であるか知りません。


「さあな。これほどの試練をクリアしたんだ。すごいものであってほしいが、これも罠の可能性だってありうる」


「まだ続くんですか。もう、あんな目にはあいたくないですが。といっても、塔の扉は、閉じたままです」


「そうだな。聖剣を刺してみるか」

 

「はい」


 二人は、塔の真ん中まで行くと、聖剣を二人で、地面に突き刺します。


 ガラガラガラ。


 突き刺した直後、塔全体が音をたてながら揺れて、地面から、台のようなものが突然、出てきます。その台の上には、両手で持てるくらい小さな箱が置かれています。


 あれが、エルピスの箱なのか......。


 台に、置かれた箱は、塔の光に照らされて、怪しく輝きます。

 

次回は、エピソード0最終回です!

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