07_そんなの嫌だ
攻撃が通らない。まずい、やられる......。
ドラゴンは、鉤づめを使って、クリアを地面に押し付けると、口の中で、灼熱の炎が生成し、再び、彼に向かって火の玉を放とうとしています。
死を予感した心臓が踊り狂ったように鼓動しはじめて、クリアの頭に、奥底にしまっていた記憶が蘇ってきます。
「どうして、あなたがいながら、あの子を救えなかったの?」
お酒の瓶が床に散乱し、椅子は倒され、花瓶が粉々になった乱雑なリビングに、心を突き刺すような辛辣な言葉がクリアの耳を貫きます。
涙目になりながら、クリアに彼の妻は言葉を浴びせ続けます。
「ねぇ、教えて、教えててば、ねぇ!!!」
クリアは、何か言い返すことも、言い訳することもしませんでした。妻の言葉を聞くことで、少しでもどうしようもなく沸き上がる悲しみと怒りをやわらげて楽にしてあげられたなら、それだけで良かったのです。
クリアは、妻を優しく抱き締めます。彼の胸の中で、せき止めていた彼女の涙が一気に流れ出て、静かなリビングに泣き声が響きます。
壊してしまいたい悲しい記憶だ。
こんなに悲しみの満ちた世界なら、いっそのこと、死んでしまったほうが楽か。
「クリアさん!!!石像です。周りに七つ石像がある」
宙に浮く立方体に閉じ込められたゼノアが、クリアに向かって叫びます。立方体の中身は、半分以上、水が上がっています。あと少しで、水が満たされてしまいます。
「石像......」
クリアは、ドラゴンに押さえつけられながら、周りを見てみると、確かに聖剣を持った七つの石像が並んでいます。それぞれ石像は、剣の構え方が異なり、石像の下には、台があります。台には、なにやら、文字が書かれているようです。
「声は言っていました。七つの石像の導きに従いてと。石像にこの状況を打破する方法があるはずです」
ゼノアは、口元まで、水が上がってきて、息苦しくなりながらも、クリアに言葉をかけます。
「だから、だから、諦めないでください。俺は、あなたのことを信じています......」
ゼノアはそう言った直後、頭部まで水が満たされていきます。
「ゼノア!!!」
ゼノアが水に飲み込まれて、苦しんでいる様子を見て、クリアは叫びました。
俺は何をしているんだ。
鉤づめから抜けられず、このまま死に行く時を待つのか。
そんなの嫌だ。
俺は、いつからかゼノアのことを亡き息子と重ねていたのかもしれない。
ゼノアを救いだして、俺たちの生まれ育った街に帰るんだ。




