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魔王ノ聖剣ーRebirth'sー  作者: 東雲一
エピソード0
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05_塔の試練

「どうか、どうか、助けてくれ!!お願いだ。息子の命を助けてくれ!!頼む、頼む!!!」


 薄暗い手術室の前で、クリアは、白衣を着た医者に寄りかかり懇願します。必死に懇願するも、医者は顔色ひとつ変えず、言います。


「すまないが、君の息子は先ほど息を引き取ったよ。手は、尽くしたが、打ち所が悪かった」


「医者だろ!!!救いだしてくれよ!!!今日の朝まで、ごく普通に息子と二人で、遊んでいたんだ。そんな息子が、息を引き取るなんてあってたまるか!!!」


 感情をぶつけるクリアに医者は淡々と答えます。


「無理だ。何度、頼まれようが、無理なものは無理だ。君の息子さんが、不幸な事故にあってしまったことには同情するよ」


「不幸な事故だと。いや、違うな。あれは事故なんかじゃないか。俺は確かに見たんだよ。息子を轢いた運転者は、笑ってた。息子は、俺の目の前で殺されたんだ!!!」


 クリアは、医者に訴えかけるように叫ぶと、力が抜けて、床に崩れ落ちます。


 世界は理不尽だ。簡単に、自分の大切なものを奪い去っていく。


 ◇◇◇


「クリアさん......どうしたんですか。そんな悲しそうな顔をして」


 昔のことを思い出していたクリアは、ゼノアの声で、現実に引き戻されます。


「すまない。ちょっと、昔のことを思い出していた」


「どうしますか、この塔に入ってみますか?ここにいても、寒さで体力が削られますし」


 ゼノアは、目の前で、開いている扉を見ながら言います。


「ああ......そうだな」


 扉の先からは、危険な臭いがする。


 だが、なぜだろう。


 この塔には、心を引き付ける魅力を感じる。


 クリアは、塔の中にはいることに、少し戸惑いがありましたが、塔の放つ独特な魔力に魅了され、ゼノアとともに、塔に入ることにしました。


 突然、地面から生えてきた塔。まさに未知の場所です。これから、二人にどんな出来事が起こるのか全く予想できません。無事に、塔から二人が、出られるように祈っておきます。二人とも、死亡という最悪の事態にならなければいいのですが。


「中は、真っ暗だ」


「本当ですね。全く、中の様子が見えません」


 二人が入ると、塔の中は、真っ暗で、広大な空間が広がっていました。暗闇を照らすのは、入ってきた扉から差し込む光のみです。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ。


 二人の後ろから、何かを引きずるような音がしました。


 この音は......。


 クリアが、その音を聞いて、即座に事態を把握して、ゼノアに叫びます。


「まずい、ゼノア!!!今すぐ、ここから出るんだ。これは罠だ!!!」


「扉が、勝手に閉まろうとしてる。このままじゃ、二人とも閉じ込められる」


 先ほどの音は、塔の扉が閉まる音でした。一旦、この巨大な扉が閉じれば、開けることはできないでしょう。


「ゼノア、扉が、閉まる前に、外に脱出するぞ!!!光に向かって駆け抜けるんだ」


「はい」


 扉までは、間に合うか間に合わないかの微妙な距離です。二人とも、光に向かって駆け出しますが、疲労の蓄積した身体では思うように動けません。本来なら、歩くのもつらい状況ですが、興奮状態にあるため、身体を騙し騙し動かしています。


 やばい。


 身体が重い。


 一歩を踏み出すのは、こんなにも痛みを伴うものなのか。


 クリアは、全身の苦痛に耐えながら、走りますが、扉との距離がなかなか縮まりません。その間にも、扉は、閉まっていき、差し込む光がほんのわずかになっていきます。


 やばい。これは、間に合わない。


 扉との距離から、クリアは、自分が間に合わないことを悟りました。一方、疲労が少なかったゼノアは、扉の手前まで、到達し、抜け出そうと思えば抜け出せる状態です。ですが、ゼノアは、扉の前に立ち止まり、出ようとしません。それを見て、クリアは叫びます。


「何をしてるんだ、早く脱出しろ!!!」


 ゼノアは、首を横に振ります。


「あなたを置いて一人だけ脱出なんてできない」


「俺のことはいい!!!お前だけでも、逃げろ!!!」


「そんなの狡いですよ。僕にもかっこつけさせてください。崖で俺を助けてくれた、あなたのように......」


 ガタン。


 ゼノアが、そう言った直後、巨大な塔の扉は、音を立てて完全に閉まってしまいます。外部からの光がたたれたことで、何も見えない暗闇に包まれます。


 扉を閉じられてしまった。


 暗闇のなかに閉じ込められ、佇んでいると、塔の周囲の壁に、刻まれた幾何学的な紋様が出し、仄かに中を照らします。すると、また、あの声が頭に響きます。


《塔に挑みし者よ。聖剣を抜き、七つの石像の導きに従いて、白き竜の逆鱗を切り裂け。さすれば、汝、エルピスの力を得よう》


 頭に響く声が、聞こえなくなると、ゼノアの驚いた声が響きます。


「ク、クリアさん、回りに壁ができて......」


「ゼノア、どうした?」


 クリアは、半透明な立方体のなかに閉じ込められています。なにやら、不思議な力が彼に働き、自由に動くことをよしとしていないようです。


 クリアを閉じ込めた半透明な立方体は、宙高くに浮き上がると、静止し、立方体の底から、徐々に、水が湧き出てきます。


「あ、あああああ!!!水が、水が上がってくる!!!クリアさん!!!クリアさん!!!」


 クリアは、握りしめた手を何度も、立方体に叩きつけます。頑丈な立方体は、クリアの力では抜け出すことができません。だからといって、抜け出せなければ、立方体の中は、水で満たされ、クリアは窒息してしまいます。


「ゼノア、待ってろ、助けに行く!!!」


 すると、巨大な何かが蠢くのを感じ、すかさず、クリアは、振り返ります。


 俺は、夢でも見ているのか。


 なんと、クリアの視線の先には、金剛のような強靭な鱗を纏い、背中に立派な両翼を生やしたドラゴンが、眠っています。そのまま、眠っていてくれればよかったのですが、ドラゴンは、クリアの存在に気付き、鋭い目つきで睨み付けると、立ち上り、塔全体を揺るがすほどの凄まじい咆哮を轟かせます。


 あれと戦えというのか。今から。


 戦わなければ、ゼノアが水に溺れて死ぬ。


 戦うにしても、身体はすでにぼろぼろ、攻略法も分からない。


 ひとつだけ確かなのは.......。


 二人とも助かる道は、この試練をクリアすること他ないってことだ。

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