03_跳躍
「うぉ、いけぇええええ!!!」
「間に合ぇええええええ!!!」
二人は、叫びながら、転倒しないギリギリのところで、精一杯、重心を左に寄せていきます。木の板は、斜面の雪を削り、いびつな音を立てて今にも壊れてしまいそうです。
二人の重心移動で、木の板は、ドローンの銃撃を回避しながら、左に急カーブします。目の前にあった岩も、すぐそこまで迫っていましたが、辛うじて直撃せずに済みました。ギリギリの回避です。急カーブの反動で木の板が激しく揺れ、二人はバランスを失いそうになりますが、なんとか持ちこたえます。
銃を連射していたドローンはと言うと、二人がうまく回避した岩に、直撃し、派手に大破します。
「よし、ドローンは片付いた。あと問題は......」
ドローンは、大破しましたが、まだ雪崩は、二人を飲み込もうと、凄まじい速度で迫ってきます。斜面の雪を巻き込んで、次第に雪崩の規模が大きくなり、迫り来る速度も、徐々に早くなっていきます。二人が乗る木の板の滑る速度よりも、雪崩の速度の方が圧倒的に早いので、間違いなく、このままだと、追い付かれて、飲み込まれてしまいます。
「クリアさん、すぐそこまで、雪崩が迫ってきてます」
ゼノアは、迫り来る雪崩を見て、動揺しながら言います。
「ああ、雪崩の音が、聞こえてる。あと、もうひとつまずい知らせがある」
前方を見ていたクリアが、落ち着いた口調で言います。
「何ですか、これ以上にまずい状況があれば、教えてください!!!」
「数メートル先が崖なんだよ、落ちれば、間違いなくお陀仏だ」
二人が進む数メートル先には、崖があり、もはや、逃げ道がありません。ここまで、幾度もの困難を乗り越えて来ましたが、二人の人生も、さっそく終わりを迎えてしまうのでしょうか。
「そんな......どうすれば」
「まだ、希望はある。向こう側にもうひとつ崖がある。そこまで、木の板を飛ばせれば、もしくは」
「無理です!!!そんなのできる訳がない!!!」
「なら、ここで二人仲良く死ぬのか!!!俺は嫌だ。俺も、お前も、大切な家族がいる。会って、また、楽しい日々を過ごしたい、そうだろ、ゼノア!!!」
クリアの一言に、ゼノアの迷いが消えます。彼も覚悟を決めます。
「分かりました。こうなったら、どうにでもなれだ」
「その意気だ。空気抵抗を少しでも減らすため、板に、上半身を張り付けよう」
二人とも、上半身を木の板に、張り付けて、向こう側の崖の上に着地する準備を整えます。
そして、それぞれ心のなかで、カウントをとりはじめます。
あと、崖まで30メートル、20メートル、10メートル......。
雪崩との距離、10メートル、5メートル、3メートル。
ゼノアは、雪崩が、衝突するかしないかの距離まで接近し、叫びます。
「クリアさん、雪崩に巻き込まれる!!!」
ゼノアが叫んだ直後、クリアの叫び声が響きます。
「崖だ。向こう側まで飛ぶぞ!!!」
その瞬間、津波のように、すべてを無慈悲に飲み込み粉砕する、雪崩の轟音が響き渡ります。二人は、斜面を滑った推進力で、勢いよく、向こう側の崖の上に向かって飛びます。あと、少し飛ぶタイミングが遅れていれば、雪崩に巻き込まれていたことでしょう。
「いけぇええええ!!!届いてくれぇえええ!!!」
「頼む!!!頼む!!!」
二人の乗る板は、宙に投げ出された後、最初は、まっすぐ直進していましたが、徐々に放物線を描くように、落下していきます。
「まずい、崖に届かない.......」




