07_奇妙な噂
「おい、カラド、そんなところで何してんだよ!一緒に飲んで話そうぜ。せっかくの機会だ。そういう気分じゃないなら別にいいけどよ」
顔を赤らめた騎士団の仲間が、酔っ払った様子で、お酒を片手に、カラドに話しかけます。机には、からっぽになったお酒のボトルが大量に置かれて、だいぶ、お酒に飲まれているようです。
「ああ、せっかくだから、俺も、飲むぜ。今は、そういう気分だ」
「行ってらっしゃい、飲み過ぎには注意してね」
「ありがとよ。俺に言葉をかけてくれて、おかげで大切なことに気づけたような気がする。俺は、こいつらを守るために、剣を振るっていこうと思う」
カラドは、まっすぐ、キリナを見つめ、感謝の気持ちを伝えました。すると、キリナは、顔を少し赤らめて呟いた。彼女はお酒を飲んでいないので、顔を赤くなったのには、他に理由がありそうです。
「私のことも守ってね......」
彼女の呟きに、カラドは、間髪いれずに答えました。
「ああ、キリナは、俺が守ってやるよ。俺に任せろ」
「そう......嬉しい」
そう言うキリナを浮かべる笑顔を見て、カラドは、とても幸せな気分になりました。
守るべきものがある。それだけで、こうも空白があった心を満たしてくれるものだとは、思いもしなかったぜ。
カラドの中で守るべきものが明確になってきた頃でした。カラドたちの住むナハト帝国の中で、不穏な噂が、流れていました。お隣のクアルスター帝国が、ナハト帝国を支配しようと攻め込もうとししているという噂です。それだけではなく、魔法という力を行使し、人知を越えた力を扱うことができるようになったという奇妙な噂もセットでついてきます。
この頃は、魔法が普及しておらず、ナハト帝国内では、魔法の存在を知るものはほとんどいませんでした。
「カラド、俺は、クアルスター帝国の調査に出かけてくる。最近、奇妙な動きがあるようだからな。しばらく、戻ってはこれないだろうから、カラドの剣術は、レイブさんにみてもらってくれ」
そうカラドに言い残すと、ソラは、調査のため、隣国のクアルスターに行ってしまいました。
ソラさん、どうか無事に帰ってきてください......。
魔法という奇妙な力の噂を聞いていたカラドは、彼のことが心配になっていました。去り際の言葉が、カラドの聞くソラの最期の言葉になるのではないかとなんとなくですが、予感していました。
悪い予感は、当たってしまうもので、ソラは、クアルスター帝国から帰ってはきませんでした。彼が生きているのかどうかについては、全く情報がなく、もう亡くなっているかもしれません。
どうして、あのソラさんが、クアルスター帝国の誰かにやられた。そんなはずがない。あるはずがない。
カラドは、強く拳を握ると、ソラがいつか、帰っていることを切に願います。
次回は、8月1日に投稿予定です!




