05_女性剣士
「すまない。冗談だ。この竹刀からは、何も声が聞こえない」
「ソラさん、ほんとあんたが冗談が冗談に聞こえないからやめてくれ!それじゃあ、さっきの剣の声が聞こえるというのは嘘なのか」
カラドは、床から上半身を起こし、悠然と佇むソラに向かって叫びました。すると、ソラは相変わらず落ち着いた口調で言います。
「いや、剣術を極めれば、剣の声を聞くことができるのは確かだな。ただ、すべての剣から声が聞こえる訳ではないんだ。魂のこもった剣の声だけ聞くことができる」
「魂のこもった剣ね。本当にそんなものがあるかは疑問だが、剣術を極めたソラさんが言うなら、本当だろうな。俺も、剣の声が聞こえるまで剣術を極めてみたいもんだぜ」
「カラドにとって、守るべきもの、大切なものができて、剣術に励めば、剣の声が聞こえるかもしれないな。必ずしも、その域に達するという訳ではないが、カラドなら、やってくれると思っている」
「守るべきものか......」
カラドは、ソラの言葉で、自分にとっての守るべきものはなんなのかについて考えるようになりました。そんなことを考え始めた頃、カラドの所属していた騎士団に、一人の女性が他の騎士団から入ってきました。
ちょうど、カラドと同じくらいの年齢で、美しく艶やかな長髪が特徴的な細身な女性です。そんな彼女の笑顔に、カラドは心が暖かい気持ちになりました。
「おい、彼女の名前は何て言うんだ?」
カラドは、騎士団の一人に、彼女のことを聞き出そうとします。
「キリナだってよ。なんだ、お前、彼女のことが好きなのか。きれいな人だもんな」
「ああ、彼女はとても笑顔がきれいな人だ」
騎士団の8割ほどが男性で、女性が入ってくることは、珍しいことでした。騎士団の男性陣からはキリナは、密かに注目の的になっていました。
次回は7月26日22時に投稿予定です!




