08_死の匂い
レイブは、自分の持てる全力をカラドにぶつけましたが、それすらも、通じない。レイブは、自らの敗北を予感しました。
カラドは、レイブの目の前まで来ると、大剣の先を、彼の喉元まで近づけます。
「あなたの敗けだ。これで、俺は、最強の称号を得られる。ずっと、この瞬間を夢見ていた。辛かったよ。あなたの弟子になり、師匠に従順な弟子を演じる時間は。だが、もうこれで終わりだ。さよなら、師匠。あなたとの日々は、最悪な思い出でした」
カラドは、大剣を強く握り、躊躇なく、レイブに向けて、振り下ろします。
「やめて!!」
大剣が振り下ろされる直前。
地面に倒れていたナズナが、レイブを救おうと、カラドの身体にしがみつき、止めに入ります。
「なんだ!やめろ!そんなに死にてーのか!」
カラドは、苛立ちの孕んだ声で、叫ぶと、しがみつくナズナを、振り払いました。再び、地面に倒れ込むナズナの様子を見て、ついにレイブの怒りは頂点に達します。愛する妻を、目の前で、傷つけられて、怒りの気持ちが出ないわけがありません。
大剣の一撃で意識を保つこともやっとな状態のレイブですが、地面についた膝を持ち上げ、立ち上がると、剣を構えます。ものすごい精神力です。
「カラド、今までのお前は、すべて演技じゃったのかのう。ワシには、そうは思えぬ。カラド、お前が真面目で、陰で努力をしていたことを覚えている。困っている人がいたら、自ら手をさしのべ、助けていたのも見てきた。一体、何がお前を変えたんじゃ、カラド」
レイブの問いかけに、カラドは、声を上げ、笑い始めます。
「俺は、強くなりたかっただけだ。そのためには、表面上は、よく見せて、レイブ、お前の剣術を習得する必要があったんだよ。結局は努力したって、報われない。人に救いを助けても、報われなんてしないんだ。その事を、この世界の現実が教えてくれた」
「カラド、お前からは、死の匂いがする。異国の魔法使いとの戦いで、お前は、命を失ったと思っていたが、それは正しかったようじゃな」
レイブは、乱れる息をなんとか整えて、まっすぐカラドの方を見ながら、言います。
「なるほど、あなたは、気づいていたか。確かに俺はすでに、死んでいる。数年前に、クアルスター帝国の戦いに巻き込まれ、命を落とした。だが、あの人に、この聖剣ボルグを授けられ、こうして、生き返ることができた」
「あの人って、誰のこと?」
カラドに、振り払われたナズナが、いつの間にか立ちあがり問いかけます。
「ナズナさん、あなたが、知らなくてもいいことだ」
「カラドよ、クアルスターの戦いで、何があった?やはり、キリナが関係しているのかのう?」
カラドは、キリナという言葉を聞いて、一瞬だけですが、明らかに動揺を見せます。
「キリナか、彼女は、戦いの最中、俺の目の前で、死んだよ。俺は、何もできなかった。クアルスターの魔法使いに、何もなすこともなく、彼女の命を奪われた。その瞬間、分かったんだ。弱いことは、それだけで罪深いことなのだと。強さこそすべてなのだと」
「あなたの過去に、つらい出来事があったのかもしれない。でも、だからって、大切な人を傷つけないで。私なら、人を傷つけるための強さなんていらない。誰かを守るために強くありたい」
すると、あっという間に、カラドは、クスカの目の前に、移動すると、大剣を振り下ろします。クスカは、突然のカラドの攻撃に体が動きません。このままでは、カラドの剣撃をもろに食らってしまいます。
レイブは、カラドの動きを見切っていましたが、大剣による攻撃を受け、深手を負っているため、助けに行こうとするも、間に合いません。
ヤバい、私、ここで死ぬの.....。
クスカの中で、死が頭に過ります。
次話は、6月20日に、投稿予定です!




