09_新たな名前
前世の記憶が、この世界で時間を過ごせば過ごすほど、失われている。そんな残酷な事実に、東風谷は、急に取り乱しています。神様は、新しい世界を、生きるには、前の世界の記憶は、不要と判断したのでしょうか。
「お前さん、さては転生者じゃろ。前世の記憶を思い出せなくなって当惑しているといったところかのう」
《そうなんだよ。俺は、ここではないところから転生したんだけど。前世の記憶が、穴が空いたみたいに、空白ができて、思い出せないんだ。転生者は、俺の他にもいるのか?》
「時々、お前さんのような転生者を目にすることがある。皆、口を揃えて言うのが、前世の記憶を思い出せないだったのう。それに、わしも、転生者じゃからの。お前さんの気持ちは分かる」
なんと、東風谷のほかにも、転生者がいるようです。しかも、レイブも転生者だったとは、予想外の巡り合わせです。
《じいさんも、転生者なのか!?それじゃあ、俺みたく、前世の記憶を失っていたりするのか?》
「そうじゃのう。もう、前世のことは、今となっては、なにも思い出せないのう。覚えているのは、自分は転生してこの世界に来たという事実だけよ。とはいっても、思い出せないからといって、何か差し障りがある訳ではないから、思っているほど心配しなくても大丈夫じゃないかのう」
《そういうものなのか。前世の記憶を失われてしまうのは、残念だけど、受け入れて前に進むしかないんだな》
東風谷は、前世の記憶が失われることに悲しみを抱きつつ、気持ちを切り替えていくことにしました。
「お前さんには、前世には名前があったのだと思うが、この世界での名前が必要じゃのう。名前がないと、何かと不便でしかたがない。ワシが、お前さんに名前をつけてやろう」
《本当か!!それは、嬉しいな。俺も、自分の名前がない状態なのは嫌だと思ってたんだよ》
東風谷は、名前をつけてもらえると聞いて、刀ですが飛びあがりそうな勢いで喜びを露にします。名前が、早速、東風谷から変わるとなると、どんな名前がつくのか気になるところです。
「それでは、お前さんの名前を名付けよう......」
《おっ!?なんか、ドキドキするな》
東風谷は、新しい名前が今まさに発表されると思うと、緊張してきました。これから先、この世界で、ずっと背負っていく名前ですからね。
「お前さんの名前は、カゼキリというのはどうかのう」
《カゼキリか!!かっこよくていいよ!!さっきの、斬風から来てるのかな》
かっこいい名前をつけられて、東風谷、いや、カゼキリは、テンションが上がっています。刀ですが、内心は、うきうきワクワクが止まりません。
「そうじゃな。お前さんからは、風の力を感じる。ワシたち一人一人、備わっている魔力の性質が違って使える剣技も違うのじゃ」
この世界の設定を、レイブは話し始めます。考えてみれば、 東風......えっー、カゼキリがいる世界が、どういった世界なのか、よく分かっていません。カゼキリが元いた世界とは、かなり常識が違うようです。
《俺には、風の力があるのか。少し中二臭い感じもするけど、いいな。刀なのに、魔力がある感じなんだ》




