柑橘系天使
生物学の実験で好みのタイプの女子とペアになった。酵素によって形の崩れた細胞を観察したのだがペアの女の子が「えぇ〜分かんないよぉ(><)」と言ってきた。くそ、可愛い。俺も観察してみたが、なんだ普通に分かるじゃないか。「見えるよ!この...」言い淀んだ。なぜなら、その細胞を形容しようとすると、「この精子みたいなやつだよ!」。言えるわけがない。こんな純粋そうな女の子だぞ、何か別の言い方は無いのか。そんなこんなで苦悩していると、「もう一回見せて」と。なんだ、何か無いのか精子以外の形容...。その直後、「あっ!このグレープフルーツのつぶつぶみたいなやつ?」。なんて可愛い表現だろう。小さい頃はおばあちゃんにグレープフルーツを切ってもらっていたっけ。その瞬間、柑橘系の甘酸っぱい薫りが鼻腔を吹き抜けて行った気がした。俺の心はいつからか汚れちまっていたんだなぁ...。
帰りに他愛もない話をして、「私次の講義があるから、またね!」と。またね、その何気ない言葉がとても嬉しかった。忘れてしまっていた青春の1ページを確かに今日刻んだのだ。「グレープフルーツ、買って帰るか」。その夜、俺は甘酸っぱくほろ苦い至高のグレープフルーツを味わった。