超越者との対話
私はその声に向かって質問した。
私は死んだのか?
『そうだ。そして元の世界には戻れない。
全く異なる別世界で新しく生を受けることになる。
但しその際問題になることがある』
それはなんですか?
『元の世界ではお前は平和で安全な世界で生きていた。
だからこれから行く別世界では十分に生きて行く逞しさが足りない。
魂の野生的な力が不足しているのだ』
それは確かに問題かもしれない。
どうしたら良いだろう。
『これは反則だが、若干のアドバンテージを与えようと思う。
生まれる際に先天的な才能をつけてやろうと思う。
どんな能力が良い?』
どんなものがありますか?
『亜空間収納や鑑定能力、千里眼や順風耳、高い運動能力、危険予知とかいろいろあるが、残念ながら与える能力は一つだけだ』
それならタイムストップが良いです。
『タイムストップ? なんだそれは』
自分の周囲の時間を止めて自分だけが、止まった時間の中で動くことができる能力です。
『そんな出鱈目な能力はない。
強いていえば、人間が元々持っている能力にそれに似た能力がある。
その能力ちからは死に直面したときに現れる。
どんな人間にも一生に一度現れるか現れないかという稀有なものだが、すべての人間に潜在的に与えられた能力ちからだ』
それはどういう能力ちからですか?
『周囲の時間がゆっくり流れる能力だ。
けれどもそう感じるのは意識だけで、体がそれについて行くとは限らない。
高速の意識に耐えうるからだになる為には、高速の運動に耐える身体に改造する必要がある。
そのことが進めばやがては時間が止まったと変わらぬ超高速の意識と運動能力を得ることができるだろう』
そうか、ではその能力が欲しい。
それがあれば命の危険に曝されたとき生き延びるチャンスができるかもしれない。
今の私はもう一度人生を生きることが許されるなら多くは望まない。
ただ危険から身を守って生き延びることができればそれで良いと思う。
『そうか。この能力が覚醒する為にはそれなりの危険に曝される必要がある。
そのときに命を落とさぬよう祈ってる。
またこの能力は何度も経験を重ねることにより、通常の状態でも発揮することができるようになる。
それでは幸運を祈る』
続きます。