肉体の変化
這うようにしてベッドから出ると、おらは朝飯を普段の何倍も食べて家族を驚かせた。
「おい、ミッキー。お前は畑もようせんのに、ごく潰しかよっ。
どれだけ食えば気が済むんだ?」
「ロイ、やめろ。森の狩りは体力を使うんだ。
昨日はいつもより動き回ったんだろう」
「だって、昨夜は干し肉だけだったぞ。一匹も獲れなかったんじゃないか」
「やめろ、ロイ。育ち盛りなんだ。食べさせろ」
「ちぇっ、サムはミッキーにいつも甘い」
だがロイに何と言われようとおらは眠くて仕方なかった。
だから狩りに行く振りをして納屋の天井裏にこっそり隠れてそのまま眠った。
どのくらい寝てたか分からなかったが起きると体がとても軽かった。
それで何を間違えたのか、おらは屋根裏から直接下に飛び降りた。
飛んで無事着地した後で気が付いた。
おらは何やってんだ?
こんなことしたら足の骨折って大けがするだろうにっ。
だけど怪我をしなかった。
着地も軽やかだったし、全然平気だった。
おらはジャンプしてみた。
するとどうだ。
軽く一メートルは高く跳び上がった。
えっ? な……なんだ、これは?
おらはシャツを脱いで自分の裸の体を見た。
するとおらの体はきゅっと締まって、筋肉が増えているような感じだった。
手首や肘やウエストは細く締まっているし首の筋が深く、鎖骨の窪みがくっきりしている反面、腕や胸や腹の筋肉が浮き上がってメリハリのある体になっていた。
上半身は逆三角形になっていた。
そしてズボンを脱いで下半身も見ると変化はよりはっきりしていた。
太ももの筋肉が力を入れると三つに割れた。膝や足首がギュッと締まって脹脛ふくらはぎが丸く膨れ上がっているっ。
お尻を手で触ると弾力のある筋肉が弾き返す。
な……なんだ。これは?
おらの体はどうなったんだ?
まるで鍛え上げた大人の男の体みたいに筋骨逞しくなっている。
おらは慌ててシャツを着た。
この体は誰にも見せられない。
子供の体じゃないっ。
おらはお下がりの服の中で大きめの服にこっそり着替えて、体の線を隠すようにした。
続きます。