狙われた銅貨
小屋からの帰り道貰った銅貨を隠したいと思った。
肉は狩りがなかったので、ゴドバさんから保存用の干し肉を少し貰った。
ゴデバさんの干し肉は塩辛くなくとてもうまい。
おらは足取り軽く家に戻り始めたんだ。
けれどもどうも誰かに見張られている気がする。
おらは一番新しい隠し場所である木の所に来た。
幹に鳥が掘った穴があり、そこの内側に釘を打って繋いだ銅貨の紐を引っかけておいたのだ。
銅貨は五十枚あった。
それのうち五枚だけを残して後はポケットに入れた。
遠くから見れば新しく銅貨を隠したように見えるだろう。
おらはそこから離れて村に帰る振りをしてそっと戻って様子を見た。
するとロイが隠し場所に手を突っ込んで銅貨が五枚繋がった紐を取り出した。
「けっ、たった五枚か。五十モルグなら干し肉がひと塊買えるかな。
なんだあいつ勿体ぶってる割には少ししか溜めてないじゃねえか。
それともこっそり買い物をして使ってたのか。
しみったれの馬鹿ミッキーめ」
木の幹を蹴飛ばしながら独り言でおらのことを罵ると村の方に戻って行った。
村でたった一軒ある売店に何か買いに行くのだろう。
泥棒め。
けれども何故か追いかけて銅貨を取り戻す元気がない。
残った銅貨四十五枚と今日貰った十枚を合わせて五十五枚の銅貨を繋いで、別の場所に隠したまでがやっとだった。
そして翌朝おらは体を起こせなかった。
心当たりは前日の火事場の馬鹿スピードだ。
全身の筋肉が悲鳴を上げていて、力が全然入らない。
そして前の晩夕食をたっぷりとったのに、お腹がグーグーなって口の中に涎が溢れ零れている。
続きます。