秘薬の伝授
「今日は痺れ薬の秘法を教える。
実は一日や二日では作れないんだ」
ゴデバさんは、まず二種類の草を教えてくれた。
「この草を採集しているところを見られてはいけない。
だから人前では無関係な草も一緒に採って誤魔化すことだな。
毒草を特定されては秘法が漏れる恐れがあるからだ。
まあ、人前では採集しない方が良い。
毒草には名前はない。
仮にこれをA草とする。
微毒があるが、痺れる効果が最強だ。
そしてこっちのがB草だ。
単独では毒にも薬にもならない雑草だが、発酵するとA草の微毒を分解する作用がある。
これを重さで一対二の割合で混ぜる。
そして磨り潰した後同体積の湧き水と混ぜて壺に入れ密閉する。
毎日それを一回はかき混ぜて中のガスを抜く。
三十日もすると発酵が収まり、微毒が消える筈だ。
それを今度は布で絞って液を煮詰める。
トロトロになったらほぼ完成だ。
だがそれをそのまま使えば、痺れ薬はいつまでも消えない。
そこでC草の登場だ。
使いたい日の前の晩にC草を絞って煮詰めたトロトロの液を一対一の割合で混ぜておく。
そして翌日使えば、朝の早いうちほど痺れ効果が長く続く。
夕方になれば痺れ効果は三十分くらいで切れる。
その翌日になれば、もう痺れ薬としては使い物にならない。
C草の液は痺れ効果を消す働きがあるんだ。
さあ、今言ったことはメモしてはいけない。
頭に叩き込んで決して口に出さないことだ。
後は自分で作ってみな」
秘法の伝授はそれで終わった。
後は自分で苦労してつくらなければならない。
一か月後おらはなんとか教えられた通りの痺れ薬を作った。
残り半年でおらはゴデバさんの教えをすべて修得したことになる。
そして一人前の狩人としておらは単独で狩りをするようになった。
一人立ちの為に必要なことだと言うことだ。
続きます。