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ローナのお茶会【1】



ヴィンセントに振られてから一ヶ月が経つ頃、ローナからお茶会の招待状が届いた。

わたし……というかヘンリとローナの実家は馬車で片道四時間かかる為、お誕生日などの大きなイベントでない限り互いの家のお茶会や舞踏会に行く事はあまりない。

馬車で休みなく四時間とかお尻が死ぬわ。

いや、道は舗装されてるけどね。

馬車のソファーだってふかふかだけど。

それでも車や新幹線のような快適さとは程遠い。

あ、いやいや、馬車はどうでもいいのよ。

今回は学園の中でローナがお茶会を主催するんだから!

何が言いたいかと言うと、先月アリエナとローナはエディンとマーシャのデートをキッカケにレオ様の婚約者候補としての立場を明確にし、どちらが婚約者として相応しいか、の争いを表面化させた。

学園のほぼ六割の女生徒はローナの側に付いている。

そりゃそうだ、悪口の出所はアリエナ本人だし、それを知らなくとも家柄、血筋、成績、品位品格諸々込み込みで比較したとしてもローナに付いた方がお得!

三年、四年はもちろん、一年生の女生徒たちも一ヶ月前の一件をその場にいたメイドたちに聞いて「他所の家のメイドに権力を振りかざして手をあげる令嬢」よりも「権力を振りかざして手をあげる令嬢から使用人を守る令嬢」の方に味方した方がいいと思うわよ。

だって暴力を振るう王妃様に仕える未来なんて、誰だってごめんだもの!

いずれ自分が頭を下げる相手だ、そこんとこは慎重に判断するわよね。


というわけで、本日はまだローナ側に付くかアリエナ側に付くか表明していない層の取り込みや、すでに表明している令息令嬢の懇親会も兼ねたローナ主催のお茶会!

ふふふ、わたし、リエラフィース家のヘンリエッタももちろんローナの応援の為に馳せ参じるわ!

なにしろアリエナが先月、手をあげて引っ叩いてくれやがったのはうちのアンジュなんだから!

あの日の夜のヘンリはもう大変だったのよ!

振られた事はやはり悲しそうだったけど、その悲しみはアリエナがアンジュへ手をあげた事への怒りにすり替わり、怪獣のような悪態と暴言の応酬と化した!

とても良家のお嬢様とは思えない姿は、彼女の名誉の為にお見せできません。

ま、それだけヘンリにとってもアンジュは大切な存在って事。

そのアンジュを叩かれたんだから、振られた悲しみをごまかす意味も手伝ってあんな事になるのは仕方がないと思うのよ、うん。



「ヘンリエッタ様」

「こ、こんにちは……!」

「クロエ! ティナ! ごきげんよう!」


ああ、そして……わたしの大事なメイドが叩かれたのを話したらクロエとティナもローナ側に付いてくれる事になったわ!

当然と言えば当然。

あの日の食堂にはティナのメイドも混ざっていたの。

現場を見たティナのメイドは、主人であるティナにそれはもう事細かに事態の報告をした。

引っ込み思案で、優しいティナは「アリエナ様ありえない」とギャグにも聞こえる判断をくだし、わたしと共にローナ推しになってくれたのだ。

わたしとティナがローナ側につけば、クロエも当然のように「それは確かにローナ様が正しい!」と一緒について来てくれたわ。

まあ、元々クロエは家の当主になる予定だから、政治的な面にも理解が深く、次期王妃への関心も高かった。

クロエ的には「ヘンリエッタ様も候補でしたのに……」と、どうやら『ヘンリエッタ推し』のようだったけれど……。

ヘンリが「アンジュを殴るような◯◯◯に王妃など務まるわけがございませんわ!」(◯◯◯の部分は彼女の名誉の為にお見せできません)と息巻いていたので、そんな部分含め向いてない。

あの子自身もローナと比べられるとやはり劣るし。

なにより、ヘンリは一切レオ様の婚約者という立場、王妃という地位に興味を示さなかった。

わたしだって聞いたのよ?


「ヘンリはレオ様と結婚したいと思わないの?」


って。

ゲームの中では当て馬の出落ち令嬢。

『星降りの夜』に、ヘンリはレオ様ルートでも「わたくしと踊ってくださいな!」と声をかけてくるもの……レオ様になんの感情もないとは思えないから。

けれど……。


「まあ、友人の恋を応援しない理由がありまして? わたくしよりも余程レオハール様をお慕いしているローナ様と、あんな◯◯◯◯(ヘンリの名誉の為に伏せさせて頂きまーす)ではお話にならないでしょう⁉︎ なんならわたくしがぶっ潰(以下略)」


………………。

どこで覚えてくるんだ良家のお嬢様があんな言葉を。

そりゃアンジュの口も悪くなるわ!


「こんにちは、ヘンリエッタ様!」

「まあ、ごきげんよう」

「こんにちは、ヘンリエッタ様。わたくしたちもご一緒してよろしいですか?」

「ええもちろん」


わたしのクラスの令嬢たちだわ。

なんだか一気に大所帯になったわね……。

いや、まあ、女子は群れるものだから仕方ない、かな?

行く場所は同じだし、別にいいか。

それにしては、みんななんかものすごくキラキラしていて楽しそう……。

ローナの好感度、いつの間にこんなに駄々上がりしたのかしら?


「ローナ様のお茶会、楽しみですわねー!」

「ええ」

「レオハール様やエディン様たちも来られるのでしょうか?」

「ライナス様や、他の公爵家の皆様も……」

「ええ! それにヴィンセント様やルーク様からのご奉仕がもしかしたら受けられるかもしれないんですわよね!」

「きゃああああぁっ!」

「当っ然! ケリー様もいらっしゃいますわよね〜⁉︎」

「ですわよねですわよね!」

「いやぁ! お声がけ頂いたらどうしましょおおおおっ!」

「「きゃああああぁっ!」」

「……………………」


そ、そういう事かぁー……!


「ほら、ティナエール」

「あ、あの、ヘンリエッタ様……」

「……!」


クロエに肩を叩かれて、一歩前に出るティナ。

察した。

この話題が出た時点で察したわよ。

そうか!

うちのクラスの女子含め、学園の令嬢たち約半数以上ローナに付いたのは『イケメン目当て』かー!

中にはティナのように婚約者が決まっていない令嬢もいる!

そう! 彼女らの目的は!


「ロ、ローナ様へ、殿方のお取り次ぎなど、お願いして頂いても……あの、その……」

「っ……!」


勇気を出して言ったのね、ティナ!

引っ込み思案の貴女にしてはとてもよく頑張った!

正直貴女は『フィリシティ・カラー』では姿も映らないモブ!

とはいえわたし(とヘンリ)の友人なのは変えようもない事実!

攻略対象の面々はわたし以上に不可能だと思うけど!

ケリーやハミュたん辺りは顔も広いはず。

その二人のルートで婚約者のいない、ティナの身分に釣り合う令息を探して紹介してもらう事はギリ出来る、かな?

まあ、それもローナの采配次第。


「そ、そうね、話してみましょう」

「! あ、ありがとうございます!」



…………大丈夫かな?




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