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早くなんとかしないと



……こそり。


い、いや、これではダメだわ。

コソコソしていてはリエラフィース家の令嬢らしくないわよね。

って言うかヘンリエッタらしくないわよ。

せっかくクロエたちを説き伏せて一人で来たんだもの、堂々と正面突破!


「おや、ヘンリエッタ様?」

「ーーーー‼︎」


ひ、悲鳴をあげなかったわたしを誰か褒めるべきだわ。

そりゃ教室の入り口でコソコソしていたのはわたしだけどね?


「ヴィ、ヴィンセント…」

「本日はどの様なご用件ですか?」


にっこりと微笑まれる。

うっ! うわあああああぁぁぁ! イケメン! 好き!

じゃなくて!


「あ、あの、ローナ様はいらして?」

「お嬢様に?」


え? あれ?

ヴィンセントに変な顔された。

と、いうか…。

胸が、凄い速さでドキドキしてる…。

っ…、…うん、そうだよね…ヴィンセントは、貴女の初恋だもんね…。


ヘンリ…。



「…一応、ご用件をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「…ええ。実は今度お茶会の主催に挑戦してみるつもりですの。ローナ様には先日、授業のノートをお借りしたでしょう? お礼も兼ねて、ご招待しようかと思いましたのよ」

「………そうですか、それは…お嬢様もお喜びになると思います。では、すぐにお呼びいたしますのでお待ち頂けますか?」

「ええ」


……。

なんか、すんごい不審がられたな…なんで?

やっぱり別なクラスなのにお茶会に招待するって変かしら?

けどなー。


「…………」


いや、この際だから少しこのクラスを確認してやれ!

…うわ、窓際の席ヤッバ…。

レオ様とエディンが隣同士…え?

ちょい待て初っ端からなにあの二人、隣同士でイチャイチャお話してるの?

は? わたしがエディレオ派だと知っての狼藉か…?

あ、あいつら…そんな、きゅ、急に燃料投下されても…は? はあ?


はああああー?

と、隣同士だとおおおおぉ?

なんじゃあのレオ様の可愛い笑顔はあぁ!

エディンの奴よく理性保ってるわね⁉︎


「ヘンリエッタ様、お待たせ致しました」

「っ! …ご機嫌よう、ローナ様。突然お呼び立てして申し訳ありません」

「いいえ、むしろご足労頂きまして…。それで…お茶会を主催なされるとか…」


……この気持ちはあとでクロエたちにぶちまけましょう。

今はローナと、その後ろに控えるヴィンセントよ。

…は、はぁぁ…ヴィンセント今日もかっこいい…。


「ええ。わたくしはまだ主催を行ったことがないので…至らぬ事もあると思うのですが…。来て頂けますか?」

「ええ、喜んでお伺いしますわ」

「では、招待状が出来次第届けさせますわね」

「ありがとうございます。楽しみにしておりますわ」


スカートの裾を摘み、お辞儀をしてお別れする。

緊張しまくったけどこれで第一段階は完了ね。

普通は招待状が先かもしれないけど、主催が初めてなので事前にハードル下げておきたいのよ。


「…………」


と、とは言えこの後何したらいいのかしら?

そ、そうだ、誰かに聞いてみよう!

主催者経験のありそうな子に…。


「おや? そこの貴女、もう予鈴が鳴りましたよ。教室に戻らないと次の授業が始まってしまうんじゃないかな?」

「え、あ…今戻るところですわ」


ひえ…。

ひ、ひええええ!

長い亜麻色の髪、緑色の瞳。

か、隠れキャラのミケーレ・キャクストン!

きゃあああああ! ゲーム内以上の大人の色気えええぇ!

ほ、本当に本物…っ、ほ、本当に本物おぉ⁉︎


「そう? 次からは余裕を持ってね」

「気を付けますわ…」


わ、わあぁ!

そ、そっかぁ、ノーマークだったけどミケーレもこの学園の教師だったんだもんね!

まさかご本人にお会い出来るなんて…!



……ミケーレ・キャクストン…。

『フィリシティ・カラー』の隠れキャラの一人。

ゲームを3周クリアしないとルートが現れない。

しかし、隠れキャラのミケーレのルートはもう一つ出現条件を満たさねばプレイは出来ないのよね。

その条件とは『戦闘難易度・鬼』で『戦争』を一度でも戦い勝つ事。

これが、きついのよね。

いや、まあオズワルド様ほどじゃあないけどさ。

特に『無印』はクレイがいないから無茶苦茶厳しい。

だって敵の魔法…特に全体攻撃型の魔法を食らうとレオ様以外瀕死になる事もザラなんだもん。

だから『無印』でミケーレをクリアした戦巫女プレイヤーは恐らく運任せでなんとか勝った人だけだろう。

もしくは勝つまでロードしまくったか…。

因みにわたしは後者である。

ロードしまくったわ。

そんな『無印』時代のオズワルド様並みの難易度出現率を誇るミケーレは、あれだけ苦労したのになんと『従者』にはならない!

…知った時はビビった。

まじか…と絶望感すら感じたわ。

でも、ストーリーは意外と切ないもので…。


「って、回想してる場合じゃない」


本鈴が鳴る前に教室に戻る!

優雅にギリ歩いて見える速度で早歩き。

焦った姿なんて晒したらアサシンメイドに吊るされる!


「ふう」


教室に入り、席に着いた瞬間先生が教室へと入ってきた。

あっぶなー…。


「…………」


なんというか、この生活にも慣れてきちゃったなぁ。

考える余裕が今までなかったけど、アミューリアの話を聞いたら自分の世界が気になってきた。

わたしの体はまだ生きている。

あれかな、病院で機械に繋がれているとかかな?

という事は…詠兎(弟)、まだわたしの18禁同人誌捨ててないかな?

捨ててくれと頼んだのはわたしだが、戻ってから本当に捨てられてたらどうしよう…⁉︎

初めて行った祭典で、オタ友も居なく、孤独に彷徨いそれでもなんとか手に入れた思い出のお宝…!

そう、全部……レオハール様受のBL18禁同人誌…‼︎

本物見たら思ってたより可愛くてヤバかった。

身長177センチってプロフにあったけどそれよりちっさく見える…!

何あの人可愛い。

多分どちらかと言えば美人系のキャラデザなんだと思うけど、あの人懐こそうな笑顔は可愛い以外の表現が見当たらない!

はぁ、でもヴィンセント×レオハールも良いわね〜…ヴィニマシャと同じ近親相姦モノになっちゃうけど、それを知らない二人は惹かれ合って…フフフフフフフ…。

あーあ、お肌曲がり角さん(※サークル名)のヴィンセントとエディンとでレオ様を奪い合う三つ巴18禁同人誌欲しかったなぁ…‼︎

と◯のあなでの通販始まってるよね…?

くうぅ…予約は当日発送じゃなくて後日発送するから間違えて2冊買っちゃった事があるのよ!

だから通販開始当日に即購入してまとめて発送してもらうんだけど……こんな事なら予約しておけば良かったよ〜ぅ!

わたしが無事戻った後、アニ◯イトでまだ売ってるかな〜?


……いや、待て…それよりもまず、クロエとティナは誰派?


やばい、全然そこ確認してなかった。

まずいわね、もし推しが被っていたとしても攻受が逆だと揉めかねない。

せっかくこの世界で得た初のオタ友だと言うのに…。

わたしの世界では『フィリシティ・カラー』BLの王道と言えばスティーブン受、アルト受。

レオ様は公式推し故に攻受が激しく分かれる。

ナンパ男のエディンも同様。

ヴィンセントは受が多いが、相手役としてはほとんどケリー。

まあ、あそこ主従だし納得のケリヴィニ。

でもわたしはケリルク。

分かってる、ルークたそ攻多いの分かってる。

でもルクケリよりケリルクがいい。

だってルークたそ可愛い。

そしてケリーに会ってからこの考えは間違っていなかったと確信した。


ケリー、奴は腹黒ドS攻めだ…!

間違いない!


だが、それを確信した今もう一つわたしには悩ましい事がある。

ケリマシャだ。

ノーマルカプならレオメグ、オズメグ、ケリマシャ、ハミュ巫女推しなんだけど…ケリーがあんなにドSでマーシャは大丈夫なの…⁉︎

あれじゃ虐められすぎて泣いちゃうんじゃ…。

だってわたしなんか腰抜けたからね⁉︎

ドSキャラと言えば天然ドSのレオ様か、公式ドSのエディン。

ケリーはやんちゃキャラと言われているが、同人界ではエディン以上にヤバいドSキャラとして描かれることが多い。

まるでそれが影響しているかのように、この世界のケリーは怖かった!

わたしそれなりにMっ気ある方だけどあれは無理、怖い!


はっ!


…………そういえば…この間バスケをしていた攻略キャラたちを見ていて思ったけど…。

もしかしてこの世界、ゲーム以外…例えば戦巫女プレイヤーたちの願望にも影響を受けているんじゃないの?

だってそうじゃなきゃケリーがあんなにドSなはずはない!

ア、アミューリアに聞いてみよう!



「ヘンリエッタ嬢、聞いていますか?」

「⁉︎」


しまった!

今授業中だ!


「は、はい」

「もう一度聞きますよ。現在この大陸を支配している種は?」

「エルフです」

「そうですね、エルフ族の特徴は?」


………つーかこれなんの授業だっけ?

一般常識って授業でやるっけ?


「エルフ族は…わたくしたち人間族に近い容姿ですが、人に比べて耳が長く寿命が大変に長寿。平均で2000歳前後。魔力を持ち、魔法を扱えます。理性的で他の種族に興味がありません」

「……ほう…。では獣人、妖精、人魚についても答えられますか?」

「? …まず獣人は人間族と同じ武神族が地に根付いたもの。獣の姿を持ち、我々と同じように服を着て二足歩行も行える。しかし獣の本能も強く持っており、支配欲求と闘争欲求に素直。血を好み、戦争では対戦した相手を必ず殺す事が相手への敬意と考えている」

「続けてください」

「妖精は人の手ほどの大きさ。虫の羽を持ち、悪戯好きで他の種族が困るところを楽しむ習性がある。しかし争いは好まず、血の匂いがすると姿を隠します。魔力を持ち、魔法を扱えます。また、満月の夜は人と同じ大きさになることが出来ます。……そして人魚族。人魚族は強い女尊男卑の文化を持ち、人魚の女性はエルフや妖精同様魔力を持ち魔法を扱うことが出来ます。男性の人魚は筋力は優れるものの女性のように魔法を使うことが出来ず女性の人魚から奴隷のように扱われている。しかしどちらも海の中で生き、泳ぐ能力は魚のそれであり水の中で人魚族に敵う種族は存在しない」

「完璧です! 素晴らしい、ヘンリエッタ嬢! こんなにしっかりと他種族についての知識を持っているのは、とても素晴らしいです!」

「は、はい。ありがとうございます」

「皆様! ヘンリエッタ嬢へ拍手を!」

「⁉︎」


そそ、そんなに⁉︎

いや待って、コレゲーム内では当たり前に言われてたことよ?

攻略本はもっと詳しく書いてあったし…。

コレ一般常識じゃ…?

大袈裟に褒めすぎじゃない?


「すごいな、ヘンリエッタ嬢」

「さすがだわ」

「他の種のことなんて、恐ろしくてとても本を開く勇気すらないわ」

「…………っ」


……なんて上っ面だけの賞賛…。

みんな学ぶ気なんてないんだわ…他の種のことなんて。

ど、どうして…どうして分からないの…?


「当たり前ですわ!」

「⁉︎」

「へ、ヘンリエッタ様?」

「もうすぐ、もう、あと2年もすれば『大陸支配権争奪代理戦争』が起きますのよ⁉︎ 他人事ではないのです! 自分たちの命運が懸かっていますの! 敵を知る事は己が生き延びる事にも繋がるはず!」


この間だって言ったのに!

ローナの悪口なんて言ってる場合じゃないのよ!

それでなくとも“優勝したところで武神に狙われる”…!


「自分たちが戦いに赴かなければ関係ないとお思い⁉︎ 優勝種が人魚族や獣人族ならば、人間族はまた隷属になるかもしれませんのよ! 他人事などではない…すぐ目の前に、可能性は迫っているのです!」


もし武神たちがあの残念すぎる理由で人間を根絶やしにしようと襲ってきたら、獣人や人魚どころじゃない。

『覚醒楽園エルドラ』みたいに人間同士で戦ってる場合でもない。


「しっかり先の事を見据え、今学べる事を学ぶ。わたくしたちは貴族ですのよ! 皆さんも、もっと真剣に戦争や戦後の事をお考えになって! 死にますわよ⁉︎」


自覚が足りない!

そりゃ、わたしはこの世界の人じゃないけど…この世界の人間がこの程度の自覚しかないのはヤバすぎるでしょ!

しっかりしなさいってのよ!

バッドエンディングの場合、支配種はランダム!

つまり4分の2の確率で獣人か人魚になるの!

そうなったら『ウェンディール王国は支配され、人間族は滅びの道を辿るのであった。……完』的な終わり方なんだから!

数行の語り口調で人間族絶滅が告げられるのよ⁉︎

ほ、ほんっとーにマジで考えなさいよー!


「…………」

「…………」


顔を見合わせるクラスメイトたち。

その表情はどこかニヤついていて「何言ってるんだ」と、いった様子だ。

……だ、だめだ、通じてない。

伝わってない…!


「さすがヘンリエッタ様は仰る事が違いますわ」

「ご立派ですわ、ヘンリエッタ様」


……また上辺だけの賞賛。

だ、だめだコレ…。

でもなんとかしないと。

…これは早くなんとかしないと…!




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