小さい頃①
「あ、あ、あの…あ、あ、あ兄上…。」
「何だ?用事があるならさっさと話せ。」
三頭身の幼児が自分の2倍以上の大きさの少年に声をかけていた。
幼児は黒眼黒髪で歩くのもヨタヨタと幼さがハッキリ見える。
対する少年は赤い髪と眼で冷たい雰囲気を隠そうともしていない。
「あ、あ、あの…あ…」
「時間ないんだけど。早く用件を言え。ジョージ。」
ジョージが一生懸命話しているのを遮り、拒絶の意思を全面に出して少年が話す。
少年と一緒にいた取り巻き達からジョージを馬鹿にしたような失笑が漏れた。
「あ、あ、あの。エ、エ、エ、エリック兄様、気、気、気を付けて。」
「何だ…また訳の分からない事を。時間の無駄だったな。行くぞ!」
「あ、あ、あの…水に、水に気を付けて…。」
ジョージが話し終えた時にはエリックの赤い髪は見えなくなっていた。
取り巻きの一人、緑の髪のレイが心配そうな眼差しで振り返りながらエリックの後を追って行った。
一人ポツンと残されたジョージはトボトボと中庭の東屋へ歩き出した。
アルフェンス王国は精霊の国である。
火の性質が強いと赤色の髪と眼を持ち、火の精霊に好かれやすい。
水の性質が強いと青色の髪と眼を持ち、水の精霊に好かれやすい。
緑の性質が強いと緑色の髪と眼を持ち、緑の精霊に好かれやすい。
そんな風にアルフェンス王国の国民は何かしら精霊の祝福を受けて産まれてくる。
そしてその性質は髪と眼に色として表れている。
基本は1種類単色のことがほとんどだが、稀に複数の精霊から祝福を受けて産まれる場合がある。
メッシュのように出るときと全体の色が混ざるときと様々であるが、本当に稀の為迫害の対象になってしまう時も多い。
複数の性質を持つ場合、全ての性質が強く使える者もいれば打ち消しあって全く使えない者もいるからだ。
ちなみにジョージの黒色は王国でも忘れ去られていた全属性プラス闇の属性の特徴であった。
通常、全属性の祝福を受けると白色の髪と眼を持つ。
闇属性を持つ者が実は約500年前アルフェンス王国の建国に尽力していたが、建国後、田舎でのんびりと暮らしたいと引退してしまい、闇属性は忌み嫌われるイメージもあり人々の記憶から消されてしまっていた。
とは言っても、産まれた時点で何かしらの精霊に必ず祝福されているはずである。
ジョージはまだ幼く精霊術(魔法)は使えない為属性は分からないが、両親や周りの者達は安心していた。