誓いの果て -白い華-
私は、今でもまだ待っている。
いつかきっと、彼女が私の隣を笑って歩いてくれる事を。
そんな事、叶わないのに--
寒い部屋の中、私と双子の妹の美陽は見つめ合う。
「利麻、私、利麻といたいよ」
涙を流しながら美陽は私の手を握る。
彼女の手は冷たくなっていた。
私の両親が他界して、私達は施設でお世話になっていた。
そして、妹である美陽が先に里親が見つかり、養子に出ることになった。
施設の方は、頑張って私達2人を一緒にしようとしてくれたが無理だった。
私よりも綺麗で可愛い美陽が選ばれるのは当たり前で当然だ。
だから、私は美陽を笑顔で送り出すと決めたのだ。
「大丈夫だよ--いつかまた、笑って逢えるから」
手を強く握り、そう言って笑う。
「--うん! いつか、絶対に迎えに行くから!」
「あはは、美陽が迎えに来るんだ?」
「そうだよ! 約束!」
2人で笑う。
離れ離れは寂しくて、今まで当たり前のように隣にいた人物が居なくなるのは苦しいけど「約束」という言葉を聞いて笑顔になれた。
しばらく2人で手を握りあっていると、施設の人が来て美陽は施設を旅立って行った。
それから少しして、私も養子に出ることになった。
「利麻ちゃん、ここが利麻ちゃんの新しい家だよ」
優しいお義母さんとお義父さんが、大きな家の前で私を笑顔で迎える。
お義母さんとお義父さんは私を大切にしてくれた。
ダメなことはダメだというが、よく出来た時は私を褒めてくれた。
私が無理をすれば誰よりも先に気づいて、私を気遣ってくれた。
普通の人達からすれば、普通の家庭なのだろう。だが、私からすればこんなに幸せな事なんてないのにという思いだった。
そして、夜になれば思い出す。
美陽の笑顔を。
君はどこで笑えているのかな?
あの約束、いつまでも信じて、いいんだよね--
(かっこいいなぁ・・・)
大学の授業中、ノートも取らずに右斜め前に座る男子生徒の後ろ姿を見つめる。
これが、私の初恋だった。
家に帰り、お義母さんに「ただいま」と声をかける。すると、「お帰り」と優しい笑顔と声でお義母さんは私を迎えた。
「あら、利麻ちゃん、なんかいい事あった?」
私の表情の変化を、お義母さんは目敏く言い当てる。本当に、彼女には叶わないと思う。
「うん、ちょっと、うん」
「もしかして、恋?」
「っー!」
誤魔化そうとして、口を開くとお義母さんに言い当てられる。
顔に熱が集まって、きっと今、私は真っ赤な顔をしているだろう。
「うふふ、可愛い」
「もー、お義母さん!」
口に手を当て、楽しそうに笑うお義母さんを真っ赤な顔で批難する。
「あ、そうだ。美陽ちゃんの居場所、分かったよ。ここにいるらしいの」
そう言って、お義母さんは私の手に紙切れを乗せた。
そこには、お店が建ち並ぶ賑やかな街の住所が書かれてあった。
やっと、美陽と会える。
そう思った私は、お義母さんに「ありがとう」と言い、二階にある自室へと走った。
(また、また逢えるんだ! 約束は美陽からだったけど、でも、私は逢えるだけで嬉しい! 声をかけなかったら、会ったことにはならないよね!)
募る気持ちを押さえるようにベッドへ横たわり、明日に期待を馳せて目を閉じた。
私の初恋が音を立てて崩れるのは、その日だった。
「え--」
噴水広場の前、綺麗な黒髪をした少女--美陽と私の思い人は笑いあっていた。
彼が美陽を見つめる瞳は愛おしそうで、辛くて、私はその場に泣き崩れた。
私の心を壊すように笑い合うふたり。
手が届く距離で笑う2人
声が届く距離で見つめ合う2人
美陽と私には大きな境界線が引かれていた。
なぜ、私は--
その場から、2人が見えなくなるのを勝手に流れてくる涙で地面を濡らしながらただただ見つめた。
これが、私の最初の恋で美陽を見た最後の日だった。
幼い頃の約束は果たされること無く、消え去る。
いつまで待てばいいの?
私はここにいるよ
ねえ、お願い--
私の前で、彼と笑わないで
どんどん、貴方が恨めしくなる
お願い--
貴方の中で私は優しいお姉ちゃんでいたいの--
このお話は、シリーズものとして書いたものです。
今回は白い華と言う事で、利麻目線から書きました。
内容が薄いって?よくわからないなwww
そのうち、他の目線のものも書きますので、お楽しみにー