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第08話 「汝を、下僕一号に任じよう」? いや、全力でお断りします!


「おいっ、水島ッ! どういうことだッ!?」

「おっ、おうッ!?」



 二時間目の休み時間。

 俺はクラスの半分近い男子たちから、怒涛の勢いで廊下に連れ出され、詰め寄られていた。



「ちょっ、ちょっと待てッ! どういうことって、どういうことだよッ!?」

「すっとぼけんなッ! 高城さんのことだよッ、高城さんのッ!」

「そうだッ! 何でお前、美人の転校生と、あんないきなり親しくなってんだよッ!?」

「お前ッ、実は昔、隣に住んでた幼なじみとか言ったら、ブッ飛ばすぞッ!?」

「理不尽すぎんだろッ!?」



 あまりの言い草に悲鳴を上げたら、火に油。



「お前ッ、まさかマジで生き別れの幼なじみかよッ!?」

「違うわッ、アホッ!! だいたいッ、何だその“生き別れの幼なじみ”ってアホな設定はッ!!」

「うっせぇッ! じゃあ、何で一時間目の休み時間、一緒に教室に戻ってきたんだよッ!? 二人で何してたッ、ええッ!?」

「べッ、別に何もしてないわッ! たまたまッ、たまたま戻るのが一緒になっただけだってぇのッ!」

「……ドモったな? ギルティッ!!!」

「ちょちょちょちょちょッ!? マジ苦しいってばッ!!」


 その場のノリの暴走か、それとも本気でマジなのかッ?

 けっこう本気で胸ぐらを掴むみたいにされて、喉が絞まるッ……!?

 俺はその手をタップしたんだけど、相手はやっぱりノリに流されてるのか、すぐに放してくれなくて……ッ。

 その時……ッ!



「止めぬか」

「ッッッッッッッッ!!!!!?????」



 決して、大きな声じゃあなかった、のに。

 その場にいた、俺も含めた全員が、ビクンッ! と電気に打たれたみたいに、なって……ッ。

 そう、して……俺を取り囲んでいた人垣が、ザッと一瞬で、割れて……。

 もちろん、俺を掴んでいた相手も、速攻でその割れた人垣の中に逃げ込んで……。



「ッ……」



 俺たちが息を詰める中、現れたのは言うまでもなく……。



「ッ……魔、……ッッッ!?」

「……」



 つい“魔王”って言いかけて、「お前はアホか?」という目で、他ならぬ魔王から見られてしまうッ!

 クソッ! 何か屈辱的だッ!



「ッ、あ、え、え~っと……ッ」

「悟」

「お、おうッ!?」

「用意し忘れたものがあるので、購買部へ行きたい。案内してくれ」

「ぅえッ!?」



 何という火に油ッ!?

 っと、思った、けれども……?

 魔王が「ん? 何か文句でもあるのか?」と軽く一瞥するだけで、慌てて下を向いてしまっていたりする。

 その瞬間、俺は気付いたッ!



(コイツら、俺を生贄にするつもりかッ!?)



 何という理不尽ッ!

 俺たちの間には、友情もなにもないのかッ!?


 と、嘆きかけた、けど……。


 そのクラスメートたちは、俺を羨ましそうな、悔しそうな目を見ていたりも、して……。



(やっぱり、火に油なんじゃねーかよッ!?)



 俺は、心の中で悲鳴を上げる。

 そう。

 魔王は、どっからどう見ても美少女なんだよッ!

 その美少女に、しかも転校してきたばかりの相手に、名指しで、それも下の名前を呼ばれて、購買部までへの案内を請われる。

 普通に考えたら、そりゃあやっぱり羨ましいだろうよッ。

 立場が逆なら、俺だって羨んでたに違いないッ。



(でもなぁッ!? でも、コイツは“魔王”なんだぞッ!?)



 言いたいッ!

 声を大にして叫びたいッ!

「コイツ、こんな可愛い顔して、実は魔王なんですぜ」って、メガホンを片手に校内を練り歩きたいッ!!

 けどッ!!




「何をしている、悟。早くしろ」

「ッッッ!! おっ、おおぉおっ、おうッ!!」



 少し先にいた魔王が、振り返って俺を急かす。

 俺はまた、ビクンッて身体を震わせてから、慌てて魔王の後を追いかけた。

 その、時……ッ!



(ああっ!? ちくしょうッ、まさかっ、まさかコイツらッ!?)



 駈け出した俺を見つめる、クラスメートたちの視線。

 嫉妬と、羨望と……そして、微妙な生温かさッ!!

 その、さっきの視線との微妙な変化に、俺は今度こそ間違いなくピンときたッ!



(間違いないッ! コイツら、俺を魔王の下僕だと思ってやがるッ!!)



 否定しないとッ!

 そこだけは、シッカリ否定しないとッ!

 俺は曲がりなりにも、魔王と対決した勇者であって、魔王の下僕なんかとは、正反対な存在なんだとッ!!!



「悟。とりあえず、下に降りればいいのか?」

「お、おうッ、食堂と同じ建物にあるからなッ。とりあえず降りるので、正解だッ」



 違うんだからッ、ホントに!!!


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