表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/74

第35話 お姉ちゃんには敵わない!


「……ちなみにさぁ……ッッ!?」

「なぁに?」



 何か俺は、いろいろ疲れてちゃぶ台に突っ伏したまま、首を曲げて姉ちゃんの方を見る。

 姉ちゃんは……。


 姉ちゃんは、「よいしょ」ってな感じに、ちゃぶ台に乳を乗せて、それでもって両肘をついて、そこにアゴを乗せるみたいにしていた。

 いや、いいんだけど……いいんだけどさッ!

 それだとだから、余計におっぱいがねッ!?

 アンタ、絶対わざとやってるでしょッ、それッ!?



「ん?」

「えッ、あ~ッ、いやッ、アレだよッ……! 姉ちゃんはいつ、その、前世のことを思い出したの?」

「悟くんに会った時だよ」

「え?」

「悟くんが生まれた時、私も病院に会いに行ってたんだよね。その時にね、いっぺんに全部、思い出した感じかな?」

「ッ……そう、だったんだ……」



 身体を起こした俺は、姉ちゃんの顔をジッと見つめていた。

 姉ちゃんは、いつものようにニコニコしている。



「どうかしたの?」

「……いや、うん……」



 ということは、姉ちゃんは、俺が生まれてこなければ、前世の記憶を思い出さなかったのかな……とか。

 前世の記憶を思い出すことって、いいことだったのかな……とか。

 そんなことをつい、考えてしまう。



「さと~るくん?」

「……ん?」

「えへへ~♪」

「ふぐッ!? 何するんだよッ?」

「いやいや、暗い顔してるからさ」



 姉ちゃんに、いきなり“ふにっ”と頬を軽くつねられて。

 俺はその頬を手で押さえて怒るけれども、姉ちゃんはケラケラと笑っていたりする。



「いや、俺だっていろいろ、考えたりはするんだよ」

「例えば、どんな?」

「それは、その……ッ」

「お姉ちゃんのおっぱいは、大きいなぁ、とか?」

「いやッ、それも考えてるけどさぁッ!!」

「あははははっ♪」



 やっぱり姉ちゃんは屈託ないって感じで笑って。

 俺はもう、怒りたいのに、顔が熱くなっちゃってて。

 それで、「ぅ~っ」て唸るみたいにしながら、姉ちゃんを上目遣いに睨んだ。



「あはは、ごめんごめん。ホントは、何だったの?」

「………………いや、うん……」



 それは、聞いてもいいことなのかが……分からない。

 姉ちゃんは、俺のことを可愛がってくれる。

 今もこうして、気にかけてくれている。

 それは、でも……。



(俺が、勇者アシュタルの生まれ変わり……だから?)



 それは正直、聞いていいかとかじゃなくて……聞くのが、怖い。

 そうだよとか、普通に笑顔で言われたら……。

 それは……それは、何て言うか、その……。



「ねぇ、悟くん」

「………………うん?」

「私はね? ロゼッタの記憶も能力も受け継いでるよ? だから、生まれ変わりって言ってもいいと思うんだ」

「………………うん」

「でもね? それでもやっぱり、私はロゼッタじゃないって、そう思うんだ」

「………………え……?」



 ちゃぶ台を見つめていた視線を……姉ちゃんに、向け直す。

 姉ちゃんは、いつもみたいに、にこにこ、笑ってて……。

 それは、でも……。

 それこそ、“聖女”っていうような、優しい……ッ。



「私はね、悟くん。私は、水嶋奏だよ? 悟くんの、お姉ちゃんの」

「ッッッ……!!」



 息を、飲む……ッ。

 頭が、ジーンッ……て、芯から痺れて、きて……ッ。

 目を、パチパチさせて、姉ちゃんを、見て……。

 姉ちゃんは、やっぱり優しく笑った、まま……ッ。



「私が悟くんを好きなのは、悟くんが、悟くんだからだよ?」

「ぅぐッッッ……ッ!!」



 つい、我慢できず、声っていうか、息が……ッ。

 目が何か、ホントに熱く、なってきてて……ッ。

 込み上げてくるモノを押さえようと、頬の内側を、噛んで……ッ。



「ふふふ……いい子いい子」

「ッ、ちょっ……だから、そういうのは止めてくれって、言ってるだろ……ッ」



 手を伸ばしてきた、姉ちゃんが……俺の頭を、撫でる。

 俺は、そんな風に言いながらも、姉ちゃんの、されるままになっていて……。

 何か、すごくホントに、頭が痺れてる、みたいで……。

 そうし、たら……。



「頭を撫でられるの、イヤ? じゃあ、おっぱいでしてあげようか?」

「台無しだよッ!?」

「あはははは♪」



 思わず、ガバッと勢い良く顔を上げて。

 姉ちゃんは、それこそ、おっぱいを揺らして笑ってて……ッ。

 何て言うか……何て言うか、もう……。

 姉ちゃんには敵わないなぁって……言うしか、なかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ