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第19話 ガールズ・トーク? バトルの間違いじゃね?


「……こうして、ここで会えたのも何かの縁だ。座ったらどうだ?」

「ううん、そんな。デートの邪魔しちゃ悪いし」

「いやっ、姉ちゃんッ、座ってってよ! コイツもそう言ってるしさッ!!」



 頼むから一人にしないでッ!!

 ていうか、一人にするくらいなら、最初から来ないでッ!!



「……じゃあ、ちょっとだけね?」



 姉ちゃんが、しょうがないなぁって笑って、俺の隣の椅子に座る。

 魔王が、姉ちゃんをジロリと睨む。



「しかし……こんな所で、会うとはな」

「ごめんなさい、邪魔しちゃったのなら。でも、偶然だから」


 不機嫌そうな魔王に、姉ちゃんがちょっと、恐縮したみたいに言う。

 てか、魔王、もっと空気読めよッ!?

 何で、店主にしたみたいに愛想よくできないのッ!?

 俺の姉ちゃんだよッ、姉ちゃんッ!?



「それで? お前は、ここで何をしているんだ?」

「買い物帰りに、ちょっとお茶に寄っただけだよ? あなた達は?」

「……少し早めの昼食だ」



 何なんだ、この殺伐とした空気はッ!?

 魔王は何か、不本意そうな空気を隠しもしないしッ!

 年上相手に、口調も全然魔王だしッ!

 姉ちゃんは姉ちゃんで、そんな魔王ににこにこしてるけど、やっぱりその笑顔が怖いしッ!?



「あ、あの……姉、ちゃん」

「なぁに?」

「ッ……な、何でも、ありま、せん……ッ」



 超怖いッ!?

 にこって笑われたのに、命の危険を感じたよッ!?

 魔王は魔王で、とても声をかけられる雰囲気じゃないしッ!

 ここはもう、身を低くして嵐が通り過ぎるのを待つしか……ッ!!



「そっかぁ……。でも悟くん、今日は用事があるって早く出て行ったけど、ふ~ん?」

「ぇ、ぃゃ、あの……ッ……」

「悟のデート相手が私だと、何か不服でもあるのか?」

「あ、ううん。そんなんじゃないよ?」



 ムッとしたように、姉ちゃんを睨む魔王。

 姉ちゃんは、いつもの笑顔でそれをかわす。


 けどッ!!


 火花散ってるしッ!!

 メッチャ火花散ってますよッ、お二人さんッ!!??

 何でいきなり、そんな喧嘩腰なの、キミたちッ!!??

 姉ちゃんに座ってもらったのを、超後悔してるよッ!!

 姉ちゃんも魔王も、もっと大人になろうよッ!!??



「悟くん、そう言えば、おでこ、どうしたの?」

「えッ? あ、いや、ちょっとぶつけて……ッ」

「もう、しょうがないなぁ」

「ッ!?」


 姉ちゃんは、そんなに笑って、俺のデコに手を当てて……ッ。

 何かそれだけで、ゾクゾクって……ッ!?



「……おい、何をしている?」

「お呪いだよ、お呪い。いたいのいたいのとんでけーってね?」

「ちょっ、姉ちゃんッ?」



 姉ちゃんがむにむにと、その手のひらで俺のデコを揉む。

 微妙な痛さとくすぐったさと、恥ずかしさがブレンドされて、すっごくムズムズするッ……ッ!!


 ていうか、うん、ごめんっ。

 家ではいまだに、こんなにされることがあるんだけど……ッ。

 それを外で、魔王の前でやられると、超死にたくなるッ!

 だって、魔王がメッチャ俺を睨んでるしッッッ!!!

 この視線は、物理的に死ねるッ!!!



「はい、おしま~い。どうかな?」

「あ、いや、うん……。もう、あんま、痛くないよ……?」

「えへへ~♪」



 姉ちゃんは、嬉しそうに笑う。

 いや、まあ普通に、痛みなんてほとんどなかったわけ、だけど……。



「……悟とは、ずいぶんと親しいようだな?」

「そりゃあ、悟くんが生まれた時から知ってるもの」

「ッ……」



 姉ちゃんが、何か勝ち誇ってるのは気のせいッ!!??

 そして魔王ッ! お前、歯ぎしりの音が聞こえたしッ!!



「だが、貴様は学校での悟の姿を知るまい……ッ」

「それを言ったら、でも貴女だって、お家での悟くんを知らないでしょ?」

「ッッッ……!!」

「お風呂あがりの、ほへ~ってしてる悟くんって、可愛いんだよ?」

「ッッッッッ!!!!!」



 魔王ッ! ちょっと魔王ッ!

 何を姉ちゃんに張り合ってんのさッ!?

 そして姉ちゃんッ!

 何をそんな、魔王を煽ってんのよッ!?

 怖ーよっ、二人ともッ!!!

 あと、姉ちゃんッ!

 俺のプライベートをそんな、サラッと晒さない!

 恥ずかしいからッ!



「……ふん。付き合いの長さも、プライベートでの知識も貴様が上であることは認めよう。だが、貴様は所詮、従姉止まり。身内はどう足掻いても、身内止まりだ」

「え? でも従姉でも結婚はできるんだよ?」

「ぶふおっ!?」



 パキャンッ……ッ!!



 俺がコップの水を吹き出すのと同時に、魔王の目の前のコップが、触れてもいないのに砕け散った……ッ!

 漏れてるッ、漏れてるよッ、魔王ッ!!??

 魔王オーラが渦巻いてるしッ!!


 そして姉ちゃんッ!

 何でそんな、魔王オーラを浴びてんのににこにこできてんのっ!?

 超人ッ!?

 超人ですかッ、姉ちゃんッ!!??

 何をそんな、「ヒビでも入ってたのかな?」って普通にテーブルを拭いてるの?

 ちょっといろいろ、大丈夫ッ!?

 ひょっとして、魔王オーラの通じない特異体質ッ!!??

 何それッ!? 超羨ましいッ!!!

 ていうか、今、姉ちゃんにツッコミ入れたいセリフもあったんだけどッ!?

 そこはスルー推奨ですかッ!?



「それで? 貴女は今、この町に住んでるのよね?」

「うむ」

「これからも?」

「無論だ」

「そっかぁ……」



 姉ちゃんが、何か考え事するみたいに、人差し指をアゴにやって、ちょっと目線を上に向ける。

 それだけなのに、その姉ちゃんの手が、姉ちゃんの胸をむにってしてたりする。

 こんな状況でも、おっぱいが気になるなんて、やっぱりおっぱいは偉大だなッ!!



 とか、思っていたら……ッ!!



「ッ……!」

「ッッ、なッ、なな、なッ、何、か……ッ?」

「ふんっ、何でもない……ッ」



 いやいやいやッ、確っっ実に何でもあるだろうッ!?

 メッチャ怒ってますやんッ!!??

 何でッ!?

 何で僕が姉ちゃんの胸みたら、キミが怒りますのんッ!?



「あはははは、おっぱいなんて大きくっても、重いだけだよ? 無駄に人の視線も集めちゃうし」

「ッッッ……ッ!!!」



 見てたのバレてるしッ!!

 ていうかッ、それは、持てる者の傲慢か、あるいは……ッ!?

 こんな悔しそうな魔王は、初めて見たぜ……ッ!!



「ああ、でも、悟くんをキュってする時には、大きい方がいいよね?」

「ッッッッッ!!!???」

「ッッッッッ!!!???」



 何故ッ!?

 何故ッ、今、俺の腕を胸に抱きしめるッ!?

 姉ちゃんッ、姉ちゃんッ、姉ちゃんッ!!

 ホンット、ごめんなさいッッッ!!

 俺に悪いところがあったんなら、超謝りますッ!

 全部直しますからッ!

 だからこれ以上、無駄に魔王を挑発しないでぇぇえええええッッッ!!!!



「ッ……悟、は……」

「ッ、お、おう……ッ?」



 魔王がッ……魔王がちょっと、涙目ッ!?

 あっ、クソッ!! 可愛いって思っちまったッ!!?

 何かドキッてしてるしッ、俺ッッ!!??



 って、だから何で今度は姉ちゃんが不機嫌にッ!!??

 ギュッて、ギュッてされたら腕がおっぱいに……ッ!!



 ホラッ、そうしたらまたッ、魔王が泣きそうな顔で睨んでくるぅうううっ!!!



「悟はやはり、胸は……大きい方が好み、なのか……ッ?」

「ッッッッッ!!!???」



 ここでッ……!

 ここでその質問を投げてくるかよッ!!??

 超地雷じゃん、それッ!! 丸見えの地雷ってヤツだよッ!!!

 YESなら魔王でアウトだし、NOなら姉ちゃんでアウトじゃんっ!

 お前、最低だな、魔王ッ! 何ちゅう質問をッ!

 伊達に魔王じゃねぇってかッ!? チクショウッ!!



「悟くんはもちろん、大きい方が好きだよね~?」

「ッッッッッ!!!???」



 はいッ、ソコっ、無駄に煽んないッ!!

 いやッ、おっぱいに腕を包まれてるみたいで、気持ち良いけどさッ!!??

 ほらっ、テーブルが誰も触ってないのに、ミシミシ言ってるよッ!!! ミシミシッ!!??

 次はこのテーブルが弾け飛ぶよッ!?



「……私は、悟に、聞いて、いるのだ……ッ」



 魔王が、低く唸るような声で……ッ!

 いや、だから涙目で睨まれたら、怖いのにキュンキュン来るってばッ!!

 変態かッ!? 俺は変態だったのかッ!!??



「悟……?」

「悟くん?」

「え、いやッ、あの……ッ」



 誤解のないように言っておこう!

 魔王の胸だって、平均より絶対、大きいと思う!

 Eは確実にあるんじゃないかとッ!

 ヘタしたら、Fくらいはある、はずッ!


 ただッ!

 ただ姉ちゃんが、HかIってだけでッ!!

 ならばッ……ならば答えは一つッ!!



「お、お前の胸だって……十分、大きいと思う……よ?」

「ッッッ……!!」

「♪」



 何故ッ!?

 超無難な回答をしたつもりなのにッ、何故ッ、反応が二分ッ!?

 魔王はいっそう悔しげで、姉ちゃんが勝ち誇ってるッ!?

 何でッ!?



「それは、つまり……大きな胸が、好き……と……ッ」

「えぇええっ!? いッ、いやッ、どっちかって言うと、そうッ、だけど……ッッッ!?」



 しまったぁあああっ!!

 それはつまり、だから結果的に、姉ちゃんのおっぱいが好きってことになってんのかッ!!??

 何というトラッーーーープッッッ!!??



「いやッ、確かに姉ちゃんのおっぱいは大好きだけどッ! 俺はお前のおっぱいだって……ッ!!??」

「うん?」

「んん?」

「ッッッ!!??」



 二人の視線を同時に集めて、俺はハッと口を手で隠す。

 やっちゃったッ!?

 心の声を、口に出してたッ!!??


 でもッ、でもッ、えッ!? 何でッ!?


 それで何でッ、何かッ、何か二人とも、ニヤニヤしてるのッ!?

 何でッ!? 何でッ!?

 いやッ、さっきの殺伐とした空気より、全然いいけどさッ!!



「あ~、まったく……。しょうがないなぁ、悟くんは」

「コイツは、昔からこうだったのか?」

「まあ、基本、女の子はみんな好き、だったかなぁ。でも、それの許されるキャラだしねぇ」

「ふむ……」



 あ、あれ……?

 何か、休戦条約が締結された……みたいな?

 何かよく分かんないけど、俺……助かった……?



「さて、と。そろそろ、そっちのお料理も出てきそうな感じだし。私はこれで、お暇するね?」

「せっかくなんだ。一緒に食べて行ったらどうだ?」

「あはは、ありがと。それはまあ、次の機会にね?」



 姉ちゃんは、そう言って、席を立って……。

 いろんな意味で解放されて、俺は椅子にグテってなって……。

 そんな俺を、姉ちゃんがニコって笑って、見下ろして……。



「悟くん?」

「う、うん?」

「今日、帰ってきたら、お話があるからね?」

「ぇっ……ッ!?」

「安心しろ、悟。今夜はうちに泊めてやろう」

「はあッ!!??」



 全ッッッ然!!

 全然ッ、休戦してないしッ!!

 二人の火花で、こんがりローストされちゃうよッ!!!


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