2-4 一撃離脱
ガラガラガラガラ
「ジャック少し速度を落とそう。」
「はい、ハジメさん。」
わたくしテロリスト一一は仲間のジャック・帰満・二世・新万と共に棺桶を乗せたリヤカーを引いていた。前はわたくし後ろはジャックが担当する。棺桶の中には死者ではなく死者を量産する狙撃手リンリン・李院・凛鈴・リンリリンリ・李院・輪鱗(リンリン・リイン・リンリン・リンリリンリ・リイン・リンリン)が死に装束を着て入っている。今回の作戦は真日本自由国軍が軍事パレードをする際に偽装棺桶でターゲット山田コンヤガ将軍に李院の射程距離まで近づく、それから煙をたくなどしてばれないようにターゲットを狙撃後離脱。
てな作戦まであと約十分。にしてもこの見事なパレードにはいくらの金がかかっているんだ?戦車や兵隊が湯水のように(日本特有の表現だねこれ、中東人は思いつかないぞ、きっと)出てくる。戦車の維持費はいくらかかるんだ?人件費もすごそうだな。その一方路上にはホームレスがあふれ高校より上に行くのは金持ちの家だけか・・・
「そろそろですかね。」
「ああ、あと一分ほどでショータイムか。」
わたくしは仲間の一人山恵ナナが屋上に潜むビルを見る。ターゲットが近くに来たら彼女が風船をいくらか上げて合図をすることになっている。おっと話し忘れとった。今わたくしと仲間のジャックは真自の軍事パレードの中を葬儀屋のふりをして李院の入った棺桶を押して歩いているのである。周りには金持ち貧乏人を問わずに観衆が集まり目の前を通る近代兵器や軍人に見入っている。金持ちがこのパレードを見てワイワイするのはまだ分かる。しかし、貧乏人やホームレスは何やっとんじゃ?こんなことに金をかけるからテメーらは苦しい思いをしているのに。
オヤッ風船が上がった。もう少しでスタートね。よし、棺桶の中の李院にも合図するか。わたくしは棺桶をたたいてモールス信号(二つの表現方法で文字や数字を表現する電子信号、通信技術が発達する前はこれが活躍した)のように合図を伝える。
サンプンイナイニジッコウ・・・コココン(了解)
そしてい、ついにターゲットが見えた。軍服に身を包んだ山田将軍はオープンカーに乗り隣にはきれいな奥さんが座っていた。わたくしが聞いた話によると山田将軍は旧和国内では空襲の指揮を取る冷酷な人と認知されている一方で真日本自由国ないでは愛妻家の英雄として認知されていた。やはり世の中には純粋に残酷な人間、純粋に優しい人間は存在しないよいうわけか。まあ、わたくしにとってはどうでもいいことか。わたくしには彼を評価できても裁くことはできないから。
わたくしは予定通りに棺桶の方向をジャックと共に李院の足がターゲットに向くように動かす。次の瞬間ばね仕掛けの装置で棺桶のふたが開くと同時に中に用意されていたスモーク弾がばらまかれる。さらに後ろからも閃光弾が投げられる。これはおそらくショダイの援護だろう。こうしてわたくしの周辺の視界は完全に煙と光に覆われて何も見えなくなる。
そこで死に装束に身を包んだ李院が立ち上がりライフルを構える。(この様子は主役からは見えていない、まあイメージってことで)彼女は約800mほど先にいる山田とその奥さんの心臓を鼓動を確認すると引き金を引く。ほとんど目が見えない彼女にとってスモークや閃光は無である。針孔に糸を通すかのように弾は次々とターゲットとその周辺にいた人々に致命傷を与えていく。(この所の視力は右が0左もそれに近いためターゲットが識別できずにこうなる)
ところが、彼女は大きなミスを犯していた。銃を撃つたびに空薬莢が棺桶の外に出ていたのだ。それに気づいたわたくしは慌ててそれらを拾い集める。この作業は一種の苦行であった。なぜなら空薬莢の役目の一つには銃内に熱をこもらせないようにすることが含まれているからだ。(その他湿気を防ぐ等もある、ついでに空薬莢の出ないケースレスといわれる銃も存在するが熱や湿気に弱く流行らなかったらしい、けど、某紫色巨大ロボットアニメの劇場版内ではちょっぴり活躍?)よって銃から出た空薬莢はめちゃくちゃ熱い。
わたくしはすばやく空薬莢をポケットに詰める。手には水ぶくれができ太ももがジンジンと痛む。さらには思わずいやらしい喘ぎ声を上げてしまいこれが地獄を招いた。煙が晴れると同時に周りにいた人々がわたくしを注目してくる。それどころか棺桶の中にいた李院がわたくしの喘ぎ声を聞いてつい笑ってしまったのだ。おかげで余計に目立つ。
わたくしは騒ぎが大きくなる前に棺桶と共にこの場を去ろうとして立ち上がる。その時、ポケットに入れていた空薬莢が一個零れ落ちてしまう。それを見た周りにいた人々は慌てて一目散に後ろに駆け出す。いかん、正体がばれた。逃げる人々に中にはスマートフォンを耳に押し付けている人もいる。通報されたなこれ。
「ハジメさん、走りましょう。」
「あっ分かった。とりあえず周りの連中を蹴散らしながら行くぞ!ジャック今すぐだ。」
わたくしとジャックは棺桶を転がしながらその場から逃げ出す。幸い周りにいた人々はわたくしたちを恐れて道を開けてくれたため速やかにに逃げることができた。とりあえず監視カメラの少なさそうな場所を目指す。逃げてから一分ほどしたころか。案の定ジープが後ろから追いかけてくる。
すると李院は棺桶のふたを開けてライフルを構えると五発連続で撃つ。次の瞬間ジープは電柱に突っ込んで止まる。(本当はタイヤを狙ってジープを横転させるだけでも良かったのだが例によって李院は目が見えないうえ人の心臓の鼓動を的にしているためこうなる)
この隙に近くに止まっていた車の窓を割って鍵を開けて盗む。運転役はなぜかわたくしであった。水ぶくれができジンジンする手でハンドルをつかんでからレバーをドライブにセットするとアクセルを全開!!だが車は動かない。故障か!?わたくしはついに錯乱状態に陥った。まだ死にたくない!まだ死にたくない!まだ死にたくない!
「動け、動け!動け!!動け!!!・・・」
「プロデューサーさん、さっきから何やってんの?」
「動かないんだよ!動かないんだよ!動かないんだよ!」
「バカヤロー!アクセル踏め!!貴様がさっきから踏んでるのはブレーキだっ!!!」
「動く、動く!動く!!こいつ動くぞ!!」
「プロデューサーさん、あきれたわ。涙流してまで感動することかしら、これ。」
それにしても今日はひどい目にあった。手のひらに水ぶくれができるわ。車の中で恐怖のどん底に落ちるわ。その元凶はと言うと。わたくしは運転をしつつ助手席に座る李院をにらむ。こいつが空薬きょうの処理をしっかりしていてくれさえすれば・・・
「何?私に不満でも?」
「大ありですよ。空薬きょうぐらい何とかしてくださいよ~。それに作戦中に笑うとかありえませんよ~」
「人のせいにしないで欲しいわ。見苦しいわよプロデューサーさん。アクセルの踏み方も知らなかったくせに。」
「ちょっ!自分のミスは棚上げですか!?」
「あんだ!?文句あんのか!?トイレ中に襲って手足もいでその辺転がしてやってもいいんだぞあっ?!」
「あの~二人ともいちゃつくのはその辺で~」
「誰がこの下僕相手に!」
「そんなに動揺するってどうよ?」
「・・・さぶいわそれ、とりあえず次を右に回って人気のないところにいったら止まって。マンホールから脱出するわよ。」
「下水のニオイどうしますか?」
「背は腹には代えられないからなジャック。」
「そこで止まって。」
わたくしたちは車から降りるとマンホールを開けて下水道に入る。道しるべらしいものはなかったが幸いここから海までは割と近い。下流を目指していくことにした。途中李院はわたくしに要求を出す。
「プロデューサーさん、私をおぶって。」
言われてみれば彼女は和服一着に裸足であった。とりあえずわたくしは彼女をおぶる。こりゃ体力の消費パナイかも。三日以内に合流地点につけますように。てかショダイもナナも生きてんのかな?