1-5暗殺か虐殺か
わたくしととある眼帯狙撃手のパートナー一一は敵国の真日本自由国の官僚腰梨バザムを暗殺するためにツバメビルに侵入。その方法は実に荒っぽかった。ビルのトイレを借りて中で待ち伏せ。トイレに社員の一人が入ってきたら麻酔液を染み込ませた布で寝かせてから電子社員証とスーツを奪い身につける。
「ごめんな。こいつは命令だ。」
李院に命令されたように眠る彼の脊髄に毒物を注射する。その後死体を天井にしまいこむ。外に出るとわたくしと同じくスーツ姿の精密狙撃用ライフルが隠されたバッグを持った李院が待っていた。彼女はあごでわたくしに先に行くように合図をする。ああ、わたくしは毒見役なのか。レディーファースト(実はこの行為はもともと女性のための行為ではなかったのだ、男の貴族が女性を先に自分が行く予定の場所におくという毒見役のような行為だったのだ)と行きたいところだったが。
社員証をカードリーダーに通すとすんなり中に入ることができた。わたくしはとりあえず計画通りにエレベーターで三十階に行き、3003号室を探す。部屋が見つかるとわたくしはドアノブを回す。だが開かない。まあ、こんなところでこそこそしていたら周りから怪しまれる。そこでわたくしは近くに人がいないことを確認するとサイレンサー付の銃(ツバメビルには金属探知機がない設定、あったらハジメはプラスチック製の銃を支給されていた)を鍵を破壊してA4サイズの紙に「使用禁止」と書いてこれをドアに貼る。そして、中に入り部屋の中を調べる。よし異常なし。しかし、本当にこの距離で弾は当たるのか?わたくしは窓から外を眺めた。
数分後、李院が3003号室に入ってくる。わたくしは誤って銃口を向けたが一応許された。(ハジメは後から入ってきた李院を敵と勘違いした、まあ密室内ではよくあること)彼女はさっそくバッグを床に置くと中から分解された精密狙撃用ライフルを取り出し組み立て中の先っぽにサイレンサーをつける。途中好奇心の強い社員がドアを開けて中を見てきたが私に部屋の中に引っ張り込まれて零距離ヘッドショットで黙らされる。
「ごめんな、こいつは仕事だ。」
「坊主、一人一人慈しんでると後になって後悔するわよ。」
「一人奈さんは逆のこと言ってましたが。」
「あなたは私の部下のなのよ。私に合わせてもらうわ。じゃあ、敵の確認頼むわ。」
彼女はわたくしに双眼鏡を渡すと十三分以内に遠くに見える大鷹ビルの十七階からターゲット腰梨バザムを探すように命じた。わたくしは急いでやつを探す。確か報告書とおりなら会議室を探せか。制限時間以内に見つけないと李院に殺されそうだな。
「会議室はここから三部屋確認できます。うち中に人がいるのは二部屋。」
「三分ちょっとか。上出来だぞ坊主。現れたらすぐに伝えろ。」
そういうと李院はわたくしの前で立てひざになり銃を構える。あれっ?彼女の銃にはスコープがついてない?しかも眼帯をいつもの病人用から海賊風の黒い眼帯に変わってる。勝負パンツならぬ勝負眼帯か?
「坊主、私はこれから前方に全神経を集中させる。後ろはあなたに任せる。ただし後ろは向くな。」
「りょっ了解(これは正しい言葉遣いではない、正しい敬語は「かしこまりました」ETC)。ところでやつが現れました。」
「よし、右から何番目?それとも左から何番目?」
「右から五番目です。」
「坊主、望遠鏡を目から離すな。それと少し倍率を下げろ(このことによって広い範囲を観察できる)。よし、三秒後に撃つ。」
そういうと李院は銃のサイトを引いて引き金を引く。サイレンサーのおかげで音は響かない。空薬莢が落ちる音、それと銃弾で穴を開けられた窓から風が通る音が聞こえた。李院は続けざまに二発打つ。だが、バザムは倒れない。
「坊主、どこに当たった?」
「えっ?」
「確かに人の心臓に当てたはずだ。」
そういえば李院はほとんど目が見えない。よって敵の心臓の鼓動で相手の位置を把握している。よって照準を定めることができてもそれが誰であるかを識別することができない。とするとまさか。私はターゲットのいる部屋の周辺の部屋の中を望遠鏡で調べる。
「坊主、まだかしら?」
「あと二分ください。」
「二十秒で探せ!万年童貞!」
「ルッセー!あっいた!二階上、右に2フロアだ。」
それを聞いた李院は静かになる。
ボッカランカランボッカランカランボッカランカラン・・・
望遠鏡でターゲットのいる部屋の中をのぞくとそこには恐ろしい風景があった。李院が引き金を引くたびに部屋の中にいる誰か一人が倒れる。彼女は約三十秒間に九人を殺害。いやっ試し撃ちを含めると十二人か。
「坊主やったか?」
「バザムだけではなく部屋の中にいた全員が・・・」
「とにかくターゲットはやったのね?」
「・・・ええ・・・」
「初めからハイと言え。逃げるぞ、一秒でも早く。」
わたくしは李院に言われるがままに周りを片付けると二人で何食わぬ顔でビルの中を歩き二階から外に飛び降りて行きに使ったマンホールから下水に入りこの町から脱出しようとする。
下水にて。わたくしと李院は再びウエットスーツとガスマスクを装着して地図を頼りにアジとに向かうのであった。
「どうした?私のやり方が気に入らないのかしら?」
「関係のない人を巻き込むことは正直に言って気に入りません。」
「私は優しいわよ。真自(新日本自由国の略称)よりも。あいつらは空爆で無差別に人を殺す。中には半殺しで苦しみ続けるやつもいる。私も無差別に人を殺すが確実に息の根を止める。」
「最初に殺された三人のうち二人は女でしたよ。」
「だから何?私にしても敵にしても残酷なことには変わりない。父ちゃんもそういっていたわ。」
「だからといっていつまでも同じ土台にいるのはちょっとと。」
何を言っているわたくし。仮にもわたくしはテロリストだ。生き残るためには仕方なかったんだ。だが、いまさら前言は撤回できない。
「これは戦の名人の父ちゃんの言ったことだ。それ以上でも以下でもない。」