第三章 謎だらけ
結局、僕についてエメリアから得られた情報は名前ぐらいのものだった。エメリアも拾った時から親などを探したり色々調べたりしくれたらしいがわかったことは何もなかったのだとか。
森のはずれで拾われた灰色の男の子、僕のことでわかるのはそれだけらしい。
ただ、この世界の事については色々話が聞けた。
この世界の名前はアランディアと呼ばれていて、人々が魔法によって魔物などから身を守って発展をしてきた世界とのことだ。魔法の力は時には生活の助けとなったりもするし、武力として戦争に使われたりしているらしい。
魔法と言う点を除けば僕が知る世界という情報と大して違いはなかった。記憶はないのに人間が争いあう種族であることや世界の在り方についての知識があるのはやはり不可解だが、わかってしまうのだから自分にはどうしようもない。
まあ、今のところ副作用もないし便利なので構わないだろう。
それと、このバーナード院があるのはファラシオン王国と呼ばれる国の王都で、魔法についての研究が盛んな場所だとか。バーナード院もその内の一つで身寄りのない子供を引き取ったりしながら研究をしているらしい。
身寄りのない子供を引き取る。一見、慈善事業に見える行動だがもちろん善意だけの行動ではない。僕がそうであったように基本的に特別な魔法やそれに類する力を持っている子供を重点的に集めているのだ。
この世界では魔法を生み出す方法は二つあって一つは才能ある人物などが閃きなどによって作り出すこと。
もう一つは極稀に現れる、生まれた時から先天的に魔法を覚えている人物を研究してどうにか再現すること。ここまで言えばわかるだろうがこのバーナード院は後者による魔法の開発を目指している研究機関なのだとか。
悪く言えば僕達は実験用のモルモットなのだが、ここでの扱いを見ている限りそこまで悲観した物でもない。しっかりとした教育を施しているし最低限の生活を保障しつつエメリアなど幾人かの研究員は先生兼親代わりとして子供達に愛情を持って接している。
これらを見る限りではどうやら非人道的な事を行わなさそうなので一安心と言ったところだろうか。
それらの話を聞いたところで僕も自分がどんな魔法を有しているのか検査することになったのだが、残念なことに成果はなかった。
何分、先天性の魔法は特殊なことが多いそうなので、そう簡単に魔法の原理が明らかになることはないのだとか。その上、わかっても時にはその当人しか使えない魔法という事も結構な確率であるらしい。
ただ、それでもこうして研究機関があるところを見ると余程、先天性の魔法とやらが希少なのか、それとも魔法の開発がそれだけ魅力的な事業か研究なのだろうと云う事くらいは予想がつく。
結局、僕自身のことはわからなかったが何らかの魔法を持っていることは間違いないとのことなので僕は今後もここで検査されながら教育を受けていくことになったのだった。