新しい依頼
「それで、今日はどんな内容?」
愛らしい顔をした女は、やすりで爪を研いでいる。
「それ、止めてちょうだい。私、その匂い嫌いなの。」
「わかったわよ、デルフィニウム。」
爪やすりをテーブルに投げ捨てた。
「ここではデルフィニウムって呼ばない約束でしょう、ビバーナム。」
「そうだったわね、『ボス』。」
わざとらしく「ボス」という言葉を大きめに言ったのは、ビバーナムと呼ばれた少女。
「で、今日はどんな内容?」
「これよ。」
テーブルに投げ出された赤色のファイル。
「担当No.1」という文字がやけに目立つ。
ファイルを開き、何ページかめくる。
「ふ~ん。今回はボディーガード役?」
「違うわ。歌姫のバックダンサーよ。」
ボスと呼ばれたその女は、自分が座っていた席から立ち上がり、ビバーナムの隣に腰かけた。
「彼女、性質の悪いファンから狙われているの。だから、今回は貴方が陰ながら彼女を守るのよ。バックダンサーなら、彼女と一緒にいてもファンはおかしく思わないし、狙われたその場にいれる可能性がとても高いの。ね、やってくれるでしょう?」
ファイルを見ていた彼女の目は、ボスへと視線を移した。
「当たり前でしょう。こんなスリリングなこと、やらなきゃ損だわ!」
そう言ってのけた彼女の目は、純粋に「楽しさ」を追いかける無垢な少女のようだった。
「ちょうどよかったわ、ビバーナム、貴女幼い頃からダンスを習っていて。貴女が一番適任だわ。」